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異動を拒否する社員への対応|人事命令の有効性の判断ポイント

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 企業における転勤、部署の移動、担当業務の変更などの人事異動は、経営上不可欠な施策の一つです。特に、組織の活性化や業績向上を目的として、新しい環境での業務遂行を求めるケースは少なくありません。しかし、こうした人事異動に対して、社員が異議を唱えたり拒否したりするケースも珍しくなく、企業側としては慎重な対応が求められます。

 では、企業が人事異動を命じる際、どのような法的根拠に基づいて判断すべきなのか、また、社員が拒否した場合にどのような対応を取るべきなのかを詳しく解説していきます。

人事異動命令の権限を確認する

 まず最初に確認すべきは、企業側に人事異動の権限があるかどうかです。企業が従業員に対して異動を命じる権利を有するかどうかは、雇用契約や就業規則の内容によって決まります。

企業が異動命令を発令できる根拠とは?

 一般的に、日本の企業では正社員の雇用契約において、雇用の継続と引き換えに会社が広範な人事異動の権限を持つことが多いです。就業規則には「業務上の必要性に応じて配置転換、転勤、担当業務の変更を命じることができる」といった条項が盛り込まれていることが一般的であり、これが異動命令の根拠となります。

 そのため、基本的には企業側が異動を命じる権限を持っている場合が多いですが、例外も存在します。

権限が制限されるケースとは?

 企業が異動を命じる際には、以下のようなケースに注意が必要です。

  • 勤務地や業務内容を特定した契約が結ばれている場合
    • 例えば「勤務地は東京都内のみ」といった明確な契約がある場合、遠方への転勤命令は無効とされる可能性があります。
  • 個別の労働契約が就業規則より優先される場合
    • 労働契約法では、労働者に有利な個別合意がある場合、それが優先されると規定されています。そのため、「この勤務地のみで働く」との特約がある場合、その特約が尊重されることになります。
  • 転勤命令が合理的な範囲を超えている場合
    • 例えば、長年東京本社で勤務していた社員に対し、急に海外赴任を命じるようなケースでは、不当な転勤命令と判断される可能性があります。

 以上のように、企業に異動命令の権限があるとしても、それが常に有効であるとは限らず、具体的な状況に応じた慎重な判断が求められます。

人事異動の権限があっても無効となるケース

企業が異動命令を発令する権限を持っていたとしても、それが必ずしも有効とは限りません。労働者側が異動命令を拒否し、それが裁判に発展した場合、裁判所は以下の3つの要素を重視して判断を下します。

業務上の必要性がない場合

 企業が社員に異動を命じる場合、そこには業務上の合理的な必要性がなければなりません。たとえば、新規プロジェクトの立ち上げに伴い、特定のスキルを持つ社員を異動させる場合は、正当な業務上の必要性があると認められるでしょう。

 しかし、「特定の社員を辞めさせるために遠方へ転勤させる」といったケースでは、業務上の必要性が認められず、異動命令が無効とされる可能性が高くなります。

不当な動機・目的に基づく異動命令

 人事異動の決定が、労働者に対する懲罰的措置や嫌がらせの一環として行われた場合、それは「人事権の濫用」として無効と判断される可能性があります。

 例えば、

  • 退職勧奨を拒否した社員を遠隔地へ異動させ、退職に追い込む
  • 特定のキャリアを積みたいと考えていた社員を、全く異なる業務に配置換えする

このようなケースでは、裁判でも異動命令の無効が認められることが多いため、企業側は慎重な対応が必要です。

通常甘受すべき不利益を著しく超える場合

 転勤や業務変更には、一定の不利益が伴うのは当然ですが、その不利益が通常の範囲を超えている場合、異動命令が無効となる可能性があります。

 例えば、

  • 配偶者のキャリアに重大な影響を与える
  • 子供の教育環境が大きく変わり、生活に支障をきたす
  • 長時間の通勤を強いられ、健康に悪影響が出る

こうしたケースでは、異動命令が無効となる可能性が高くなります。

企業が取るべき対応策

 異動命令の正当性を確保し、トラブルを未然に防ぐためには、以下の対応策を講じることが重要です。

  1. 就業規則の整備
    • 人事異動のルールを明確にし、従業員に周知する
  2. 異動の必要性を明確化
    • 企業が異動を命じる理由をしっかり説明できるようにする
  3. 社員との事前協議
    • 事前に本人と協議を行い、できるだけ合意を得る
  4. 異動に伴うサポートを提供
    • 転勤手当、引越し支援、社宅提供などの負担軽減策を検討する

まとめ

 人事異動の命令を拒否する社員への対応は、企業にとって大きな課題です。適切な対応を行うことで、トラブルの回避が可能となります。

 四谷麹町法律事務所では、問題社員への対応に関して、個別の注意指導や懲戒処分、退職勧奨等について、具体的なサポートを行っています。訴訟や労働審判になる前の段階から適切な対応を行うことで、企業側の負担を軽減し、トラブルの早期解決が可能となります。問題社員の対応でお悩みの際は、会社側専門の経験豊富な四谷麹町法律事務所にぜひご相談ください。

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