問題社員への退職勧奨が紛争化する理由と正しい対応策

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動画解説
退職勧奨とは、企業が従業員に対して退職を促す行為です。問題社員(一般にモンスター社員とも言われている)への対応として、解雇が難しい場合に選択されることが多くあります。しかし、進め方を誤ると、かえって労働紛争に発展し、企業が大きな負担を抱えることになります。特に、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
退職勧奨を巡る典型的なトラブル事例
退職届や退職合意書を取り交わしていない
企業側が退職勧奨に応じたと認識していても、正式な退職届や退職合意書がなければ、後からトラブルに発展する可能性があります。例えば、従業員が出社しなくなったため「退職したのだろう」と企業が判断していたところ、後日、内容証明郵便で「不当解雇である」と主張され、未払い賃金を請求されるケースが実際にあります。
こうした事態を避けるためには、必ず退職届を提出してもらうか、退職合意書を取り交わす必要があります。書面での手続きが難しい場合でも、最低限、メールやLINEなどで「〇月〇日をもって退職する」という意思表示を記録に残すことが重要です。
また、口頭でのやり取りだけでは、後に「そんな合意はしていない」と主張される可能性があり、企業側が不利になることがあります。特に、退職を承諾した証拠が残っていない場合、退職勧奨が強要されたとみなされることもあります。
不適切な発言がトラブルを招く
退職勧奨の際に、企業側の発言が不適切であると、パワハラや不法行為として訴えられることがあります。近年では、スマートフォンで簡単に会話を録音できるため、企業側の発言が証拠として残りやすくなっています。
例えば、「もう来なくていい」といった発言は、解雇と評価される可能性があります。企業側としては単なる感情表現だったとしても、労働審判や裁判では「解雇」と認定され、解雇無効となれば未払い賃金を支払わなければならなくなることもあります。
さらに、「仕事ができないから辞めてほしい」といった発言も問題となる場合があります。能力不足を理由に退職を迫る場合、合理的な理由と適切な手続きを経ていないと、パワハラとして認定される可能性があるため、慎重な対応が求められます。
事前の注意指導や懲戒処分がないまま退職勧奨を行う
退職勧奨をスムーズに進めるためには、事前に適切な注意指導や懲戒処分を行い、それでも改善が見られないことを明確にしておくことが重要です。
例えば、問題社員が何度もルール違反を繰り返している場合、注意指導や懲戒処分を重ねた上で「改善の見込みがない」と判断されることで、退職勧奨の正当性が高まります。しかし、何の準備もなくいきなり退職勧奨を行うと、従業員は「なぜ自分だけ?」と反発し、退職を拒否する可能性が高くなります。
また、退職勧奨を断られた際に解雇ができない状況だと、問題社員を職場に残すしかなくなり、職場環境の悪化につながることもあります。このような事態を防ぐためにも、日頃から適切な記録を残し、段階的な対応を行うことが求められます。
退職勧奨を円滑に進めるために
退職勧奨を行う際には、以下のポイントを押さえることで、紛争リスクを軽減できます。
- 退職届や退職合意書の確保:口頭合意だけではなく、書面で正式な手続きを行う
- 慎重な発言:感情的な言葉ではなく、具体的な事実をもとに冷静に説明する
- 事前の準備:注意指導や懲戒処分を適切に行い、退職勧奨の正当性を高める
- 録音リスクを意識する:従業員が会話を録音している可能性を常に考え、法的に問題のない言葉を選ぶ
これらの対応を徹底することで、企業にとって不要なトラブルを回避し、円満な退職勧奨を実現しやすくなります。
企業が適切な対応をするために
四谷麹町法律事務所では、問題社員への対応に関して、個別の注意指導や、懲戒処分の進め方、退職勧奨の際の社員への対応方法について具体的なサポートを行っています。さらに、状況によっては企業側代理人として、問題社員や、相手の代理人弁護士との交渉も行っています。
訴訟や労働審判になる前の段階から適切な対応を行うことで、企業側の負担を軽減し、トラブルの早期解決が可能となります。問題社員の対応でお悩みの際は、会社側専門の経験豊富な四谷麹町法律事務所にぜひご相談ください。