横領・不正受給社員の退職勧奨|適切な手順と法的リスクの回避方法

目次
動画解説
企業経営において、社員による横領や不正受給は非常に深刻な問題です。こうした問題社員(一般にモンスター社員とも言われている。)をどのように扱うかは、企業の運営に大きな影響を及ぼします。社内秩序を保ち、他の社員の士気を維持するためにも、適切な対応が求められます。
本記事では、横領や不正受給を行った社員を退職勧奨する際に押さえておくべきポイントや、違法な対応を避けるための具体的な対策を詳しく解説します。
退職勧奨の前に確認すべきこと
退職勧奨を実施する前に、まず「解雇が可能な状況かどうか」を慎重に判断する必要があります。なぜなら、解雇が可能であれば退職勧奨に応じなくても懲戒解雇を行うことができますが、解雇が難しい場合は、本人の合意を得る形で退職に導かなければなりません。
解雇が可能なケース
横領や不正受給が発覚した際、次のような条件を満たしている場合は解雇が有効と判断される可能性が高まります。
- 横領額が高額で、企業に対する経済的損害が大きい場合
- 社員が悪質な隠ぺい工作を行い、企業への信頼を著しく損なった場合
- 事実関係が明白であり、証拠が揃っている場合
- 社員が不正行為を認めず、反省の態度が全く見られない場合
このようなケースでは、懲戒解雇も選択肢に入ります。しかし、裁判になった際に解雇の有効性を争われる可能性があるため、解雇通知の準備や社内規則との整合性を十分に確認する必要があります。
解雇が難しいケース
一方で、以下のような場合は解雇が難しく、退職勧奨を慎重に進める必要があります。
- 横領や不正受給の額が少額で、懲戒解雇に相当するか疑わしい場合
- 社員が行為を認め、深く反省している場合
- 事実関係に争いがあり、証拠が不十分な場合
- 過去に同様の事例で解雇が無効と判断された判例がある場合
このようなケースでは、強引に退職を迫ると後に訴訟リスクが高まるため、慎重な対応が求められます。
退職勧奨の進め方
退職勧奨を行う際には、適切なプロセスを踏むことが重要です。
不正行為の事実を明確に伝える
退職勧奨を行う際には、社員に対して具体的な事実を伝え、不正行為がどのように会社に影響を与えたかを説明する必要があります。
- いつ、どのような不正行為が行われたのか
- 会社にどれほどの経済的損害が生じたのか
- 社内秩序や他の社員への影響
これらを明確に説明することで、社員が退職に応じやすくなります。
退職に応じるメリットを提示する
退職を選択することで得られるメリットを伝えると、スムーズに話が進みやすくなります。
- 自主退職扱いにすることで、転職時の影響を最小限に抑えられる
- 退職金の支給や一定期間の給与保証を考慮する
- 退職後の経歴に傷がつかないよう配慮する
特に、懲戒解雇歴があると転職に大きな影響が出るため、自主退職を選ぶメリットを丁寧に説明することが重要です。
退職合意書の作成
退職勧奨に応じてもらう場合は、「退職合意書」を作成し、後のトラブルを防ぐことが必要です。
- 退職の意思が本人の自由な意思によるものであることを明記
- 退職金の有無や支払い条件を明確にする
- 退職後の秘密保持義務について取り決める
これにより、後に「強要された」などと主張されるリスクを軽減できます。
退職勧奨時の注意点
録音を想定した対応をする
近年、退職勧奨の場面を社員が録音し、後に訴訟の証拠として利用するケースが増えています。そのため、以下の点に注意しましょう。
- 法的に問題のある発言をしない
- 威圧的な態度を取らない
- 公平かつ冷静に対応する
不当な圧力をかけない
退職勧奨はあくまで「提案」であり、強制することは許されません。
- 退職しない場合の不利益を過度に強調しない
- 退職を強要するような表現を避ける
- 社員の意思を尊重し、慎重に対応する
万が一、退職勧奨に応じない場合は、無理に退職を迫るのではなく、配置転換や業務指導の強化など別の手段を検討する必要があります。
まとめ
横領や不正受給を行った問題社員の退職勧奨は、慎重な対応が求められます。解雇が有効と判断される可能性が高い場合は、退職勧奨を交渉の材料として利用できますが、解雇が有効と判断される可能性が低い場合は、適切な説明と退職のメリットを提示し、円満な退職を目指すことが重要です。
四谷麹町法律事務所では、横領や不正受給を行った問題社員への個別の注意指導や懲戒処分、退職勧奨等について、具体的なサポートを行っています。さらに、状況によっては企業側代理人として、問題社員や相手の代理人弁護士との交渉も行っています。訴訟や労働審判になる前の段階から適切な対応を行うことで、企業側の負担を軽減し、トラブルの早期解決が可能となります。横領や不正受給を行った問題社員の対応でお悩みの際は、会社側専門の経験豊富な四谷麹町法律事務所にぜひご相談ください。