問題社員

不満があると拗ねて帰る社員への対応策とは? 若手社員の感情的行動に悩む経営者が取るべき教育と指導の実務

動画解説

拗ねて帰宅してしまう若手社員への対処が求められる現代の職場

 現代の職場では、些細な不満があると突然業務を放棄して帰宅してしまう若手社員への対応に頭を悩ませている経営者や人事担当者も少なくありません。今回ご紹介する事例では、「気に入らないことがあると、仕事を中断してそのまま帰宅してしまう20代の社員がいる。どのように対応すればよいのか」というご相談が寄せられました。

 社会人としての自覚が未熟で、感情のままに行動してしまうこと自体、職場にとっては大きなリスクです。感情的な行動が常態化すれば、職場の秩序や業務遂行に重大な支障をきたす可能性もあります。まずはその背景を理解しつつ、適切な教育指導を通じて改善を促す姿勢が重要です。

労働契約上の「労働義務」としての問題の本質

 給与を受け取って働くという契約関係において、労働の提供は労働者の基本的な義務です。気に入らないことがあるからといって、業務中に勝手に退社するという行為は、労働契約の根本を揺るがす重大な逸脱行為であると言えます。程度や頻度にもよりますが、状況によっては懲戒処分、さらには解雇も視野に入る深刻な問題です。

 しかしながら、問題を単純な規律違反として即座に処分に結びつけるのではなく、背景事情や本人の未熟さを考慮した対応を進めることが、企業にとっても、また社員の成長にとっても建設的である場合が多いです。

問題行動の背景にある感情コントロールの未熟さを理解する

 こうした行動をとる若手社員の中には、自分の感情をうまく制御できずに行動してしまっているケースが見受けられます。「まさか」と思うかもしれませんが、本人にもどうにもならず、突発的に行動してしまうことが実際にあるのです。感情の制御は精神的な成熟度とも関係があり、20代という年齢であれば、まだ発展途上の段階ともいえます。

 だからこそ、こうした行動を見たときには「子供じみている」「甘えている」と一刀両断するのではなく、まずは教育や指導を通じて成長を促すという視点を持つことが大切です。

最初に必要なのは丁寧な教育指導と不満の聞き取り

 最初に行うべきは、丁寧で分かりやすい教育指導です。感情的になりやすい相手には、ちょっとした言い回しや語調でも誤解を招きかねません。そのため、業務の指示においても「なぜそれが必要なのか」「どのように取り組むべきか」といった背景まで含めて丁寧に説明することが効果的です。

 また、不満を感じている兆候が見えた場合には、立ち話ではなく、静かな場所でしっかり話を聞く場を設けましょう。不満を聞くことは、必ずしも相手の要求を受け入れるということではなく、相手の考えを整理させ、冷静に向き合わせる機会でもあります。丁寧な聞き取りを通じて、問題行動の予防にもつながります。

抽象論ではなく「具体的な事実」に基づいた注意指導を

 感情的な若手社員には、抽象的な叱責や指導は逆効果になりがちです。「あなたはいつも怒ってすぐ帰るよね」といった表現ではなく、「〇月〇日、〇時にこのようなやりとりがあり、その直後に退社した」というように、具体的な出来事をもとに説明することで、相手の理解度は格段に上がります。

 このような「事実ベースの指導」は、本人の反論の余地を減らし、建設的な話し合いに持ち込むための前提条件です。相手の主観的な感情に振り回されず、冷静に行動の問題点を認識させるには、具体的な事実をもとに対応を進めることが極めて重要です。

指導担当者の選定と人選の重要性

 教育指導を進めるにあたっては、誰が対応するかという「人選」も極めて重要です。感情の制御が未熟な社員には、冷静で、説明力のある上司や人事担当者が対応することが望まれます。特に、教えることが苦にならず、粘り強く対話できるタイプの人材が適任です。

 「上司だから対応すべき」という形式だけで任せてしまうと、本人も困惑し、対応する側もストレスを抱えたまま問題が長引く結果になりがちです。人選次第で対応の効果が大きく変わるため、社内で適任者がいない場合には、必要に応じて社長自身が対応に乗り出すことも検討すべきです。

勤務放棄への対応は厳格に、だが冷静に進める

 気に入らないことがあると職場を離れてしまうという行為は、明らかに勤務義務の放棄であり、通常は懲戒の対象となり得る行動です。しかし、感情的な爆発の結果である場合もあるため、頭ごなしに「違反だ」「ルールを守れ」と叱るだけでは逆効果になることもあります。

 大切なのは、「行動として何が問題で、なぜそれが職場で許されないのか」を、具体的かつ冷静に説明することです。話す内容だけでなく、語調や表現方法にも十分配慮し、指導の効果が最大化されるよう努めましょう。

厳重注意書を交付する意義とその効果的な使い方

 再発防止や本人への意識づけのためには、文書での「厳重注意書」を交付することも有効です。口頭で注意を受けるのと、書面で正式に指摘されるのとでは、相手の受け止め方に大きな差があります。「これは本当にまずい」と感じてもらうことができれば、改善のきっかけになることもあります。

 特に、感情のコントロールに課題がある社員には、書面で「どのような言動が問題だったのか」「なぜ問題なのか」「どうすべきだったのか」を丁寧に記載することで、教育的な効果を兼ねた注意文書として活用することができます。

改善が見られない場合は懲戒処分をためらわない

 十分な指導や注意を行っても行動が改善されない場合には、懲戒処分の実施を検討すべき段階です。「処分したら辞めてしまうのではないか」と懸念されることもありますが、だからといって問題行動を放置することは、企業秩序に対して悪影響を及ぼします。

 処分を下す際も、単なる罰としてではなく、再発防止と指導の一環として位置づけることで、本人にとっても意味のある対応とすることが可能です。教育指導的な側面を重視し、「なぜ処分に至ったのか」を文書に明記することが、本人の理解と改善を促します。

教育指導効果も含んだ懲戒処分通知の工夫

 懲戒処分通知の内容は、単に処分の種類や理由を記すだけではなく、教育的な観点からの工夫が求められます。たとえば、「今回の○○という行動が、なぜ問題だったのか」「どのように対応すればよかったのか」といった具体的な説明を含めることで、処分自体が本人にとっての学びとなります。

 このような通知文書は、一般的なテンプレートでは対応しきれないことも多いため、弁護士と相談しながら作成することをおすすめします。個別の事情に即した文面を作成することで、法的にも教育的にも有効な文書とすることができます。

今後の対応は弁護士と連携しながら冷静に判断を

 今回のように、本人に感情のコントロールが難しい傾向が見られる場合には、指導だけでなく懲戒処分においても慎重さと戦略性が求められます。処分の是非や適切な文面については、法的観点だけでなく、対応全体の流れやコミュニケーションの内容も含めて、弁護士と連携して進めることが安全かつ効果的です。


 四谷麹町法律事務所では、問題社員への対応に関して、教育指導の方法や懲戒処分の適切な進め方まで、実務に即した具体的なサポートを行っています。特に今回のように感情的な問題が関与するケースでは、初期対応の方向性次第でその後の展開が大きく変わります。事前にしっかりとした対応方針を決めることで、トラブルの拡大を防ぎ、円滑な職場運営が可能となります。

 社員の問題行動に対応する際は、会社側専門の経験豊富な四谷麹町法律事務所にぜひご相談ください。

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