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作業指示に従わない派遣社員への正しい対処法|派遣先が取るべき対応と注意点

動画解説

作業指示に従わない派遣社員への対応の必要性

 派遣社員が派遣先の社員からの作業指示に従わず、自分勝手なやり方で業務を進めるというのは、企業にとって看過できない問題です。派遣社員といえども、派遣先の指揮命令に従って労務を提供する義務があり、それを怠ることは労働者派遣契約の前提を崩す行為にあたります。

 もし派遣社員が指示どおりに仕事をしなければ、業務の流れが乱れ、品質や安全に関わるリスクさえ生じます。特に製造業やサービス業の現場では、一人の行動が全体の工程に大きな影響を与えるため、派遣社員の対応を軽視することはできません。

 また、このような状況を放置してしまうと、他の社員の不満や士気の低下を招き、職場全体の生産性が落ちてしまう恐れもあります。派遣社員だからといって「多少のことは仕方ない」と見過ごすのではなく、派遣先企業として適切な対応を取ることが必要不可欠です。

指示が伝わっていない可能性を検討する

 派遣社員が作業指示に従わないとき、まず考えるべきは「指示の内容が正しく伝わっていないのではないか」という点です。指示を無視しているのではなく、単に理解できていない、あるいは誤解している可能性があります。

 実際、抽象的な表現や曖昧な言い回しで指示をすると、受け手にとって内容が十分に伝わらず、自分なりの判断で作業を進めてしまうケースが多くあります。例えば「もっと丁寧にやって」や「状況を見て判断して」という指示では、具体的にどのように行動すればよいかを正しく理解できない場合があります。

 そのため、派遣社員に対しては「何を、どのように、どの順番で行うのか」を具体的に伝えることが重要です。また、指示を出した後には「理解できているか」「実際にそのとおりに作業できているか」を確認するプロセスも欠かせません。単に一度伝えるだけではなく、繰り返し確認し、疑問点があればその都度解消することが必要です。

 このように、指示が伝わっていない可能性を丁寧に検討することで、単なるコミュニケーション不足が原因だった場合には比較的早い段階で改善につながるケースも少なくありません。

具体的かつ丁寧な作業指示と確認作業

 派遣社員に指示を出す際には、抽象的な表現ではなく、できるだけ具体的な作業内容を伝えることが重要です。例えば「この部品をこの向きでセットしてください」「終了したら必ず担当者に報告してください」といった形で、誰が見ても同じ行動が取れるようなレベルまで落とし込むことが求められます。

 また、単に指示を出すだけではなく、実際にそのとおり作業できているかを確認することも不可欠です。口頭で指示をしただけで「もう伝えたはず」と考えてしまうと、誤解や思い込みによって作業が自己流になってしまう恐れがあります。特に最初のうちは、指示内容が正しく実行されているか、毎日でも確認を行うことが望ましいでしょう。

 改善が見られない場合には、「どこでつまずいているのか」「どの部分を修正すればよいのか」を明確に伝えることが必要です。例えば「スピードは十分ですが、仕上げが粗いためもう一度チェックしてください」と具体的にフィードバックすることで、本人が理解しやすくなります。

 こうした地道な指示と確認を繰り返すことで、最初は指示に従えなかった派遣社員でも、徐々に改善していくケースは少なくありません。まずは「言いっぱなしにしない」「確認を徹底する」という姿勢が欠かせないポイントとなります。

それでも改善しない場合の派遣会社との協議

 具体的な作業指示を丁寧に出し、確認作業も繰り返して行ったにもかかわらず、派遣社員が一向に改善しないケースも存在します。その場合、派遣先だけの努力で解決しようとしても限界があります。そこで重要となるのが、派遣元である派遣会社との協議です。

 派遣社員の多くは「指示を守る意欲がない」のではなく、「指示を理解できない」「やろうとしてもできない」という能力不足によるケースが少なくありません。こうした場合、派遣先がいくら指導を続けても改善は難しく、派遣会社に状況を共有し、対応を協議することが必要です。

 派遣会社は派遣社員の勤務状況や適性について把握しているだけでなく、派遣法などの法規制にも精通しています。そのため、派遣先が独自に強硬な措置を取るよりも、派遣会社に正式に相談して対応を進める方が、法的リスクを回避しながら問題を解決しやすいのです。

 「どのような指示を出したのか」「どの程度繰り返し確認をしたのか」「それでもどの部分ができなかったのか」を具体的に記録し、派遣会社に説明することが大切です。内容が明確であれば、派遣会社側でも教育指導や注意喚起を行いやすくなり、場合によっては人材の交代を提案してくれることもあります。

 このように、派遣先だけで抱え込むのではなく、派遣会社と協力しながら改善を図ることが、最終的に業務を安定させるための鍵となります。

能力不足と意欲欠如のケースを見極める

 派遣社員が作業指示に従わない理由は、大きく分けて二つあります。ひとつは「指示を理解できず、努力してもできない」という能力不足のケース。もうひとつは「指示に従う気がなく、自己流でやろうとする」という意欲欠如のケースです。この二つは見極めを誤ると、適切な対応ができなくなります。

 能力不足の場合は、本人に悪意はなくても、どうしても業務をこなす力が足りないために問題が生じます。たとえば、作業手順を覚えられない、確認を怠ってしまう、複数の工程を並行できないなどです。この場合、丁寧な指導や研修によって改善できることもありますが、限界を超えている場合には派遣会社と協議して配置転換や人材交代を検討せざるを得ません。

 一方で、意欲欠如の場合は、本人が「指示に従う必要はない」「自分のやり方のほうが効率的だ」と考えてしまっているケースです。この場合、いくら指示や確認を重ねても改善が見込めず、職場の秩序を乱す要因にもなりかねません。こうした態度が続く場合には、派遣会社を通じて厳しい注意指導を依頼する必要があります。

 派遣先としては「なぜ指示に従えないのか」を冷静に見極めることが肝心です。単なる能力不足なのか、意欲的な問題なのかを判断したうえで、対応方針を決めていくことが、不要な摩擦を避けながら問題を解決する第一歩となります。

人材交代や契約終了という選択肢

 具体的な指示や確認を重ねても改善が見られず、派遣会社との協議でも解決が難しい場合、最終的な手段として「人材交代」や「契約終了」を検討せざるを得ないことがあります。

 派遣社員は、労働者派遣契約に基づいて派遣されているため、派遣先が直接的に懲戒処分を行うことはできません。しかし「業務に支障がある」「契約に定められた業務を遂行できない」という事実が明確であれば、派遣会社に対して人材の交代を求めることは正当な対応といえます。

 派遣会社によっては、教育指導を経ても改善が見込めない派遣社員について、「この業務は難しいようなので、別の人を派遣します」と交代を提案してくれる場合もあります。これにより、現場の混乱を最小限に抑えつつ、業務を安定的に進めることが可能となります。

 ただし、深刻な人手不足の状況では、派遣会社が十分な人材を確保できず、交代要員を用意できない場合もあります。その場合には「やむを得ず契約終了」という結論に至るケースもあります。派遣会社から「契約の履行が困難」と説明を受けた際には、無理に要求を続けても解決にはつながりません。別の派遣会社を検討する、あるいは自社での直接雇用を進めるなど、次の手を考える必要があるでしょう。

 派遣社員の交代や契約終了は、業務への影響が大きい決断ですが、状況を放置することで職場全体に悪影響が広がるリスクを考えれば、やむを得ない対応として前向きに検討すべき場合もあります。

派遣社員への懲戒処分に関する注意点

 派遣社員が作業指示に従わない場合、職場の秩序を乱す行為として「懲戒処分を検討したい」と考える経営者も少なくありません。自社の正社員であれば、厳重注意や戒告、場合によっては懲戒解雇といった対応が検討されるでしょう。ところが、派遣社員については注意が必要です。

 派遣社員は派遣先に直接雇用されているのではなく、あくまで派遣元である派遣会社に雇用されています。そのため、懲戒処分を行う権限は派遣元にあり、派遣先が独自に懲戒処分を下すことはできません。もし派遣先が一方的に懲戒処分を行えば、法的に無効となるだけでなく、派遣契約上のトラブルにも発展しかねません。

 派遣先ができるのは、あくまで「問題となっている事実を派遣会社に伝えること」です。例えば「何度も具体的な指示をしたが従わなかった」「業務に重大な支障をきたした」など、状況を客観的に説明することが大切です。そのうえで、派遣会社に教育指導や懲戒処分を検討してもらう流れになります。

 また、派遣社員の勤務態度があまりに問題で改善の見込みがない場合には、「契約を履行できる人材に交代してほしい」と依頼するのが現実的です。懲戒処分を求めること自体は可能ですが、最終的な判断と実施は派遣元の権限であることを踏まえ、派遣先としては冷静に対応する必要があります。

経営者に求められる適切な判断と対応

 派遣社員が作業指示に従わない問題は、一見すると現場レベルの課題のように思えますが、実際には経営者の判断が大きく影響します。なぜなら、派遣社員の問題行動を放置すれば、業務品質の低下や他の社員の不満、職場全体の士気低下につながり、企業の生産性そのものを損なう可能性があるからです。

 経営者に求められるのは、まず冷静に状況を整理することです。指示が正しく伝わっているのか、本人が能力的に対応できるのか、それとも意欲の問題なのかを見極めることが出発点となります。そのうえで、派遣会社との協議や人材交代の要請など、適切な対応策を選択していくことが必要です。

 また、派遣社員に対して過剰に期待しすぎない姿勢も大切です。派遣社員は即戦力として活用できる場合もありますが、必ずしも自社の社員と同じレベルで業務を遂行できるとは限りません。あくまで契約で定められた範囲の業務を遂行する役割であることを理解し、その前提で活用することが望ましいでしょう。

 短期的な解決にとどまらず、中長期的には「派遣に頼りすぎない人材戦略」を構築することも経営者の役割です。採用や教育の工夫、業務の仕組み改善、人材依存からの脱却など、多角的な視点で検討することが、最終的に組織全体の安定性を高めることにつながります。

法律相談を活用したトラブル防止策

 派遣社員が作業指示に従わない問題は、単に業務の効率を下げるだけでなく、派遣契約上のトラブルや法的リスクへと発展する可能性があります。特に派遣社員への対応を誤ると、「契約外の業務を強要した」と誤解される、あるいは「不当な扱いを受けた」と主張されるなど、思わぬ法的問題につながりかねません。

 そのため、派遣社員に関する問題が生じた際には、派遣会社と協議するだけでなく、労働法や派遣法に詳しい専門家に相談することが重要です。法律事務所に相談すれば、派遣契約の範囲を踏まえた適切な指示の仕方や、派遣会社への要請方法、トラブルが拡大した場合の対応策について具体的な助言を受けることができます。

 四谷麹町法律事務所では、派遣社員への対応に関するご相談を数多く受けており、派遣会社との交渉、派遣契約の見直し、懲戒処分が必要とされる場合の正しい進め方についてもサポートを行っています。さらに、状況によっては企業側の代理人として、派遣会社や問題社員(一般にモンスター社員とも言われている)との交渉に対応することも可能です。

 訴訟や労働審判といった大きな紛争に発展する前の段階から、専門家の助言を得て適切に対応することで、企業側の負担を大幅に軽減し、トラブルの早期解決が実現できます。派遣社員の対応でお悩みの際は、会社側専門の経験豊富な四谷麹町法律事務所にぜひご相談ください。

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