2025.08.19
同僚を誹謗中傷する社員への正しい対処法|経営者が取るべき対応と弁護士活用のポイント

目次
動画解説
はじめに
同僚を誹謗中傷する社員がいる、そんな情報が会社経営者や管理職の耳に入ると、職場全体の空気が悪化するのではないか、被害を受けた社員が働きづらくなるのではないかと大きな不安を抱くものです。誹謗中傷は、言われた本人にとって大きな精神的負担となるだけでなく、周囲の社員にも不信感や緊張を生じさせ、組織の生産性や人間関係に深刻な影響を与える可能性があります。
しかし一方で、「誹謗中傷している」と言われている社員の発言が本当に誹謗中傷にあたるのかどうかは、冷静に見極めなければなりません。単に問題行動を指摘したにすぎないのに、それを「誹謗中傷だ」と受け取るケースもあり得ます。ですから、感情的に「けしからん」と決めつけて動くのではなく、まずは事実を確認し、何が起きているのかを明らかにすることが最も大切です。
経営者や管理職に求められるのは、社員一人ひとりを守る姿勢です。誹謗中傷の実態を丁寧に確認し、必要に応じて注意指導や懲戒処分を行いながら、健全な職場環境を維持することこそが会社の責任です。本コラムでは、誹謗中傷が疑われる社員にどう対応していくべきか、その考え方と具体的な進め方について解説していきます。
「誹謗中傷」とは評価であり事実ではない
「同僚を誹謗中傷している社員がいる」と報告を受けると、多くの経営者や管理職は強い危機感を覚え、すぐにでも止めなければと考えるものです。しかし、ここで忘れてはならないのは、「誹謗中傷」という言葉そのものが評価にすぎず、具体的な事実を示しているわけではないという点です。
例えば「誹謗中傷された」と言われても、それが実際には単なる注意や指摘に過ぎない場合もありますし、逆に軽率な言葉が相手を深く傷つけている場合もあります。つまり、「誹謗中傷したかどうか」という抽象的な問いではなく、「いつ、どこで、誰が、誰に対して、どんな言葉を口にしたのか」という具体的事実を丁寧に確認することが必要なのです。
そのためには、情報提供者から詳細を聞き取ることが欠かせません。伝聞で聞いた話なのか、直接目撃したことなのかによっても重みは変わってきますし、他の社員が同じ場にいたのなら複数の証言を集めて裏付けを取ることも大切です。そして最終的には、疑われている本人にも「こういうことを言ったと聞いているが本当か」と事実を確認する場を設けなければなりません。
大事なのは、事実確認の対象は「誹謗中傷したかどうか」ではなく「具体的に何を言ったのか」という点にあるということです。その発言が誹謗中傷と評価されるかどうかは、その後に冷静に判断すれば十分です。まずは事実を正確に把握し、そこから適切な対応を選択していくことが、職場の健全性を守る第一歩となるのです。
初期段階での対応(注意・教育指導)
具体的な言動の確認ができたら、まずは初期段階での対応を行うことが重要です。誹謗中傷と評価される発言であっても、その多くは悪意を持って計画的に行われているわけではなく、軽率な一言や、深く考えずに口にしてしまったものが少なくありません。発言した本人にとっては「これくらい普通だろう」という感覚であっても、相手にとっては強い不快感や萎縮を招く場合があり、職場全体の雰囲気を悪化させる要因になってしまいます。
こうしたケースでは、口頭での注意や教育的な指導が有効です。「その発言は相手を傷つける可能性がある」「会社の中では適切ではない」とはっきり伝え、同じことを繰り返さないように促します。このとき重要なのは、単に非難するのではなく、なぜ問題なのかを具体的に示すことです。「今の時代では通用しない」「会社の風土に合わない」といった点をわかりやすく説明することで、本人も納得しやすくなります。
また、悪気がないから許されるというわけではありません。悪気がなくても相手を傷つける発言は発言であり、明確に「アウト」であることを示さなければなりません。ただし、悪気がないからこそ繰り返しがちという側面もあるため、教育的な指導を重ねることで改善が期待できることも多いのです。
このように、初期段階では厳しい処分よりも注意や教育指導を中心に据え、改善の余地があるかどうかを見極めることが大切です。そこで改善が見られれば大きな問題には発展しませんが、残念ながら改善が見られない場合や、発言の内容があまりにも悪質な場合には、次のステップとしてより重い対応を検討していく必要があります。
改善が見られない場合の対応
初期段階での注意や教育指導を行ったにもかかわらず、同じような発言や態度が繰り返される場合、より踏み込んだ対応が必要となります。なぜなら、誹謗中傷のような言動が繰り返されれば、被害を受けている社員の精神的負担はどんどん蓄積し、最悪の場合は退職につながってしまうからです。会社にとって失いたくない人材を守るためにも、問題行動を見過ごすことはできません。
改善が見られない社員に対しては、まず厳重注意書を交付するなど、書面で明確に指導した事実を残すことが効果的です。口頭の注意だけでは本人が軽く受け止めてしまうことがありますが、書面で正式に伝えることで、自分の行為が会社として問題視されているのだと理解しやすくなります。特に、内容証明的な厳重注意書で「次に同じことを繰り返した場合は懲戒処分を検討する」という一文を明記すれば、抑止効果も大きいでしょう。
それでも改善が見られない場合や、発言・行動の内容があまりにも悪質な場合には、懲戒処分を検討せざるを得ません。懲戒処分には始末書の提出や減給などさまざまな段階がありますが、処分の重さは本人の過去の言動や問題の程度に応じて判断することが必要です。悪気があったかどうかではなく、実際に何を言ったのか、どんな被害が生じたのか、過去に注意を受けているにもかかわらず繰り返しているのかといった点を重視して決定すべきです。
この段階で会社が注意や処分をためらうと、周囲の社員は「問題行動をしても処分されない」と感じてしまい、職場全体の秩序が崩れます。社員を守るためにも、そして会社の組織を健全に保つためにも、適切な重さで処分を行うことは経営者の責任です。
被害を受けた社員への配慮とマネジメントの重要性
誹謗中傷の問題において、忘れてはならないのが被害を受けた社員への配慮です。加害的な言動をした社員への対応ばかりに意識が向いてしまうと、肝心の被害を受けた社員が孤立し、強いストレスを抱え込んでしまうことがあります。最悪の場合、心身に不調をきたしたり、会社を去ることを選んでしまうこともあるでしょう。会社にとって大切な人材を失わないためにも、経営者や管理職は被害を受けた社員を守る姿勢を明確に示さなければなりません。
そのためには、まず「あなたの声をしっかり受け止めています」というメッセージを本人に伝えることが重要です。被害を訴えることは、社員にとって大きな勇気を必要とする行為です。その訴えを軽視したり、曖昧に流したりすると、二重の被害を与えてしまいかねません。経営者がきちんと耳を傾け、状況を把握しようとしている姿勢を見せるだけでも、安心感を与えることができます。
また、場合によっては同じ部署やチームで働くことが難しくなることもあります。その際には配置転換や業務の一時的な見直しといった具体的な配慮を検討する必要があります。もちろん、被害者を守る目的のもとでの対応であり、不利益を与えるようなものにならないよう慎重に判断することが求められます。
さらに大切なのは、こうした問題を未然に防ぐための日常的なマネジメントです。誹謗中傷をする社員が現れる背景には、多くの場合、管理職が人間関係や職場の空気を十分に把握していないことがあります。上司が部下の発言や行動に敏感であれば、問題が小さいうちに対処することができます。つまり、マネジメント不足こそが誹謗中傷の温床となるのです。
社員を守ることは経営者や管理職の重要な役割です。問題が顕在化したときの対処だけでなく、日々のコミュニケーションや観察を通じて職場環境を健全に保つことこそ、長期的に見て最も効果的な対策であるといえるでしょう。
おわりに
誹謗中傷の問題は、経営者や管理職だけで完結できるケースもあれば、法的な観点から慎重な判断を要するケースも少なくありません。特に、懲戒処分を検討する場合や、被害者と加害者双方の主張が食い違って事実関係の認定が難しい場合には、専門家である弁護士の関与が非常に有効です。
弁護士に相談することで、事実確認の手順や聴き取りの方法、さらには処分の重さの判断についても具体的な助言を受けることができます。また、厳重注意書や懲戒処分通知書といった文書は、形式や表現を誤るとトラブルの原因となりかねませんが、弁護士に作成を依頼すれば安心です。経営者が自らの判断に迷いを感じる場面で、法的な裏付けを持った対応ができるのは大きなメリットといえるでしょう。
さらに、被害者への声のかけ方や配慮の仕方についても、弁護士の助言は役立ちます。被害者を守るつもりの言葉が、場合によっては二次被害を招くこともあります。そのため、適切な言葉選びを含め、実践的な指導を受けることで、会社としてより安心感を与える対応が可能となります。
当事務所でも、誹謗中傷を含む職場トラブルに関するご相談を多数お受けしています。問題の初期段階での注意指導の仕方から、懲戒処分の進め方、そして会社全体のマネジメント改善に至るまで、幅広くサポートが可能です。
「社員同士のトラブルにどう対応すればよいのか分からない」「処分をしたいが法的に問題がないか不安」と感じられた際には、ぜひ一度当事務所へご相談ください。経営者の皆様が安心して経営判断を下せるよう、専門家として全力でお手伝いさせていただきます。