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仕事中にスマホゲームをする社員の対処法|事実確認・指導・懲戒処分の判断ポイント

動画解説

はじめに

 会社経営者や管理職の皆様にとって、社員が仕事時間中にどのような行動を取っているかというのは非常に重要な関心事です。業務に集中し、効率的に成果を上げてもらうことはもちろん、安全や品質の確保のためにも欠かせない要素となります。その中で、最近増えてきている問題のひとつが「仕事時間中にスマホゲームをする社員」です。

 スマートフォンの普及により、誰もが手軽にゲームやSNSにアクセスできる時代になりました。その利便性の裏側で、勤務中に私的利用をしてしまう社員が一定数存在するのも現実です。とくにゲームは短時間で楽しめるものも多いため、つい手が伸びてしまうケースも少なくありません。しかし、業務に集中しなければならない時間に私的なゲームに没頭してしまうことは、会社にとって見過ごせない問題です。

 仕事時間中のスマホゲームは、一見すると小さなサボりに見えるかもしれません。しかし実際には、集中力の低下や作業効率の悪化、さらには重大なミスや安全上のリスクにつながる可能性すらあります。その影響は当人だけでなく、職場全体の雰囲気や他の社員の士気にも及ぶのです。

 本記事では、仕事時間中にスマホゲームをする社員への適切な対処法について、会社経営者や管理職の立場から考えていきたいと思います。単なる注意で済ませるべきか、厳格な処分が必要なのか、あるいはマネジメントの工夫で改善できるのか。それぞれの場面に応じた判断材料を整理しながら、実務に役立つ視点をご紹介していきます。

仕事中にスマホゲームが問題となる理由

 まず第一に挙げられるのは 集中力の低下 です。スマホゲームは短時間でも強い刺激を与えるため、一度手を出すとその後の作業に意識を戻すのが難しくなります。その結果、業務の効率が落ちたり、確認不足やケアレスミスが増えたりするのです。特に品質管理や安全性が重視される職場では、小さな注意散漫が大きな事故につながるおそれがあります。

 次に問題となるのは 業務専念義務の違反 です。労働契約上、社員は勤務時間中に業務へ集中することが求められています。私的なスマホゲームを勤務中に行うことは、明確にその義務に反しており、就業規則上も違反行為として処分の対象となる可能性があります。

 また、仕事中にゲームをしている社員の姿を目撃すると、周囲の社員の 士気の低下 を招くこともあります。「自分だけ真面目に働くのが馬鹿らしい」と感じる社員が増えれば、組織全体の生産性に悪影響を及ぼすでしょう。職場の雰囲気が乱れることで、健全な組織運営そのものが難しくなる危険性もあります。

 さらに見逃せないのが、 顧客や取引先からの信頼低下 です。来客中や外部から見える場所でスマホをいじっている姿が確認されれば、会社全体の評価が下がり、信用を失う可能性があります。ビジネスの世界では一度失った信頼を取り戻すのは容易ではありません。

 このように、仕事中のスマホゲームは単なる「ちょっとしたサボり」ではなく、会社にとって重大なリスクをはらむ行為です。したがって経営者や管理職としては、見過ごすのではなく、適切な対応を取ることが不可欠となります。

事実確認の重要性

 仕事時間中にスマホゲームをしているという報告を受けたとき、まず最初にやるべきことは 迅速かつ冷静な事実確認 です。ここで感情的になって頭ごなしに叱責してしまうと、誤解であった場合に社員との信頼関係を損なう危険性があります。

 事実確認の基本は「いつ」「どこで」「誰が」「どのように」スマホを使用していたのかという具体的な情報を押さえることです。例えば、「昼休憩後の13時頃に、デスクでスマホの画面を操作していた」といった具体的な事実を積み重ねることで、状況を正しく把握できます。逆に「いつもスマホをいじっている気がする」といった曖昧な情報では、正しい判断ができません。

 また、報告者の話だけではなく、本人へのヒアリングも欠かせません。実際には業務連絡や取引先とのやり取りでスマホを使っていたという可能性もあります。特に現代の職場では、業務でスマホを使用する場面も少なくないため、「ゲーム」なのか「業務」なのかを区別する作業 が大切になります。

 本人に事情を確認する際には、「仕事中にスマホを操作していたと聞きましたが、どんな目的で使っていたのですか?」といった形で、事実ベースで質問を行うことが望ましいです。ここで「スマホゲームをしていたのか?」と直球で聞いてしまうと、防御的な反応を招き、正確な情報が得にくくなります。

 正確な事実確認を経て初めて、注意指導・教育的指導・場合によっては懲戒処分など、次のステップに進むことが可能になります。つまり、事実確認は単なる前段階ではなく、対応の方向性を決定づける極めて重要なプロセス なのです。

注意指導と改善への働きかけ

 事実確認の結果、仕事時間中にスマホゲームをしていたことが明らかになった場合、最初に行うべきは 注意指導 です。多くのケースでは「つい」「軽い気持ちで」という動機が中心であり、悪意を持って業務を妨害しようとしているわけではありません。ですから、最初の段階では教育的な意味合いを持たせて改善を促すことが重要です。

 具体的には、本人を呼んで静かな場で状況を説明し、「仕事時間中にスマホゲームをすることは職務専念義務違反にあたり、会社として認められない行為である」ことをはっきり伝えます。その上で「今後は必ず仕事に集中してもらいたい」「同じことが続くようであれば、より重い処分も検討せざるを得ない」といった形で、再発防止を強く求めるのが適切です。

 この際に大切なのは、ただ叱責するのではなく 改善への期待を示すこと です。「これからはしっかり集中して頑張ってほしい」「あなたならできるはずだ」という言葉を添えることで、社員本人が前向きに改善しようという気持ちを持ちやすくなります。

 また、注意指導を行った場合は、必ず記録を残す ことが重要です。日時、場所、どのような注意を行ったのかをメモにしておくことで、後に同じ行為が繰り返された際に「以前も注意した」という証拠になります。この記録があるかどうかで、次のステップとして厳重注意や懲戒処分に移る際の適切さ・正当性が大きく変わります。

 注意指導は「叱ること」が目的ではなく、改善させること が最大の目的です。社員本人が自覚を持ち、再び同じ問題を起こさないように導くことこそが、経営者・管理職に求められる対応だと言えるでしょう。

懲戒処分の検討と実務対応

 注意指導を行っても改善が見られない場合や、スマホゲームによって業務に重大な支障が生じた場合には、懲戒処分を検討 する必要があります。会社として放置すれば、他の社員に不公平感が広がり、職場全体の規律が乱れる恐れがあるためです。

 懲戒処分を行うにあたっては、まず就業規則を確認し、どの規定に基づいて処分を行うのかを明確にする必要があります。多くの会社では「職務専念義務違反」や「業務命令違反」などが懲戒事由に当たり得ます。これに該当するかどうかを慎重に判断しなければなりません。

 処分の種類としては、まず 厳重注意書の交付 が考えられます。「何月何日の何時頃に、仕事時間中にスマホゲームをしていたことを確認した。これは就業規則第○条に違反するため、厳重に注意する」といった具体的な記載を行い、本人に渡します。これによって、口頭の注意に比べて本人へのインパクトが強まり、再発防止につながる効果があります。

 それでも改善が見られない場合や、行為の程度が著しく悪質である場合には、出勤停止や減給、最終的には解雇 といった重い処分も検討対象となります。ただし、懲戒解雇などの重い処分は裁判で無効とされるリスクも高いため、客観的な証拠やこれまでの注意・指導の経緯をしっかり残しておくことが不可欠です。

 また、懲戒処分の実務対応でよくある課題が「通知書の作成」です。多くの経営者や管理職にとって、懲戒処分通知書を適切な形式で作成するのは慣れていない作業です。そのため、不安がある場合には 弁護士に相談し、通知書自体を作成してもらう のが望ましいでしょう。そうすれば、不備のない適切な処分が可能となり、後にトラブルへ発展するリスクを大幅に減らすことができます。

 懲戒処分はあくまで「最後の手段」であり、社員を辞めさせることが目的ではありません。大切なのは、会社の秩序を守り、真面目に働く他の社員を守ることです。必要に応じて毅然と処分を行う姿勢こそ、経営者に求められる責任ある対応だと言えるでしょう。

マネジメントと再発防止策

 懲戒処分を行ったとしても、それだけで問題が完全に解決するとは限りません。重要なのは、同じようなトラブルが 再発しない職場環境をつくること です。そのためには、経営者や管理職による日常的なマネジメントが欠かせません。

 まず大切なのは、管理職自身が 「仕事時間中は仕事に専念する」という姿勢を示すこと です。上司や先輩社員が堂々とスマホを操作していれば、部下は「自分もやっていいのだ」と感じてしまいます。経営者や管理職が率先して模範を示すことが、最も効果的な予防策となります。

 また、ルールの明確化も必要です。就業規則や社内規程に「勤務時間中の私的スマホ利用は禁止する」と明記し、社員に周知徹底してください。曖昧な状態では「ちょっとぐらいならいいだろう」と考える人が出てきてしまいます。禁止事項を明確に示すことで、社員一人ひとりが自覚を持ちやすくなります。

 さらに、スマホゲームをしてしまう背景を理解することも大切です。単なる怠慢だけでなく、業務量が過剰で集中力が続かない、仕事へのモチベーションが低下しているなどの要因が隠れている場合もあります。そうした場合は、単に叱責するだけでなく、業務の見直しや適材適所の人員配置 を行うことが、根本的な解決につながります。

 再発防止策としては、定期的な面談やヒアリングも有効です。社員の様子をこまめに確認し、早い段階で兆候を察知して注意すれば、大きな問題に発展する前に食い止めることができます。

 結局のところ、スマホゲーム問題は「社員個人の規律の問題」であると同時に、「会社全体のマネジメントの問題」でもあります。注意指導や懲戒処分を行うだけでなく、経営者として職場環境を整え、社員が自然と仕事に集中できる体制を築くことが、最大の再発防止策になるのです。

まとめ

 本日は「仕事時間中にスマホゲームをする社員の対処法」について解説しました。

 仕事時間中は、社員が業務に集中することが当然求められます。にもかかわらずスマホゲームをしてしまえば、仕事の効率が落ちるだけでなく、安全面でのリスクや取引先との信頼関係の喪失にもつながりかねません。したがって、経営者としては「仕事時間中にスマホゲームをすることは許されない」という線を明確に示す必要があります。

 具体的な対応の流れとしては、まず 迅速な事実確認 を行い、軽微なものであれば口頭注意で済ませることも可能です。しかし、繰り返し行う社員や業務に深刻な支障を及ぼす場合には、 厳重注意書や懲戒処分 を検討しなければなりません。その際には、経緯や職務内容に応じて処分の重さを判断し、迷う場合は弁護士のコンサルティングを受けることをお勧めします。

 また、単なる処分にとどまらず、 日常的なマネジメントや再発防止策 を講じることが重要です。経営者や管理職自身が模範を示し、ルールを明確化し、必要に応じて業務内容の見直しや適正配置を行うことで、社員が自然と仕事に専念できる環境をつくることができます。

 最終的に大切なのは、問題社員一人を矯正することではなく、 会社全体の秩序と社員全員の働きやすい職場環境を守ること です。経営者として逃げずに対応し、毅然とした姿勢で会社を導いていきましょう。

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