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本当に体調不良で欠勤しているのか?社員の仮病を疑うときの正しい対応方法

動画解説

体調不良による欠勤・遅刻・早退と会社の悩み

 会社の経営者や人事担当者にとって、社員が「体調不良」を理由に欠勤・遅刻・早退を繰り返す状況は非常に頭を悩ませるものです。もちろん本当に体調が悪いケースも多くありますが、中には「もしかして仮病ではないか」と感じられることもあるでしょう。

 しかし、ここで安易に「仮病だ」と決めつけてしまうことは大きなリスクを伴います。十分な根拠がないまま疑いをかけることは、ハラスメントと評価される可能性もあり、労務トラブルに発展しかねません。とはいえ、ただ見過ごしてしまえば、組織の業務遂行に支障をきたしたり、他の社員の不満につながったりすることも避けられません。

 したがって、会社としては「疑わしい場合にどのように事実を確認し、どのようなステップで対応していくか」を冷静に考える必要があります。本コラムでは、まず仮病と決めつけない姿勢を前提にしながら、具体的にとるべき調査・確認の方法や、医師や産業医の関与を含めた実務対応の流れを整理していきます。

仮病と決めつける前に大切な視点

 社員の欠勤や遅刻・早退が続くと、「本当に体調不良なのか」「仮病ではないか」と疑いたくなることがあります。しかし、ここで一番大切なのは、安易に仮病と決めつけない姿勢です。根拠が乏しいまま「仮病」と評価してしまうと、誤った判断につながり、社員との信頼関係を大きく損なうおそれがあります。場合によっては、不当な扱いと受け止められ、ハラスメントや労務トラブルに発展する危険もあるのです。

 実際に「体調が悪い」という社員の言葉の真偽を即座に見抜くことは難しく、外見や一時的な態度だけで判断することは避けるべきです。大事なのは、事実に基づいて冷静に状況を把握することです。欠勤や遅刻・早退の具体的な回数や時期、業務への影響、勤務中の様子など、判断材料となる客観的な情報を収集していくことが欠かせません。

 「仮病かな」という印象だけで対応すると、会社としても正当性を欠くリスクが高まります。あくまで根拠を積み上げ、合理的に説明できる形で対応していくことが、経営者や管理者に求められる基本姿勢だといえるでしょう。

疑わしい事実関係をリストアップする

 仮病の可能性を検討する際に重要なのは、「印象」ではなく「事実」に基づいて判断することです。そのためには、まず 疑わしい事情を一つひとつリストアップする作業が効果的です。

 例えば、「今月だけで7日間欠勤している」「遅刻が3回、早退が2回ある」といった具体的な数値を整理してみましょう。こうして客観的に数字や事実を並べてみると、本人の言い分や体調不良の説明との整合性を検討しやすくなります。

 また、単に欠勤日数や遅刻回数といった形式的な事実だけでなく、出社した際の勤務態度も大切な情報です。職場で普通に会話をして元気そうに見えるのか、それとも明らかに疲労が見られるのか。業務をしっかりこなせているのか、それともパフォーマンスが大きく落ちているのか。こうした点を観察し、整理しておくことで、後に面談や医師の診断を求める際の判断材料となります。

 リストアップの利点は、曖昧な印象に左右されず、冷静に状況を把握できることにあります。「なんとなく仮病に見える」という思い込みは誤った対応につながりかねません。疑わしい事情を具体的に書き出していくことこそ、正しい判断の第一歩になるのです。

仕事のパフォーマンスを確認する重要性

 体調不良の真偽を見極める上で、最も分かりやすい判断材料の一つが「仕事のパフォーマンス」です。職場は仕事をする場所であり、社員が通常の業務を支障なくこなしているかどうかは、体調不良の実態を推測する大きな手掛かりとなります。

 たとえば、出社はしていても業務遂行能力が明らかに低下している場合、実際に体調面で不調を抱えている可能性があります。一方で、欠勤や遅刻・早退を繰り返しているにもかかわらず、勤務中は特に問題なく元気に働いているように見える場合、説明内容と現実との間に不一致が生じているかもしれません。

 もちろん「見た目が元気そうだから仮病」と決めつけるのは誤りですが、パフォーマンスの安定度や業務への影響を確認することは不可欠です。特に正社員であれば、一定の成果を出せることは会社と労働者との契約上の基本的な義務にあたります。許容範囲を超えてパフォーマンスが低下しているのであれば、体調不良が原因である可能性を前提に、会社として適切な対応(休養を促す、休職を検討するなど)を考える必要があるでしょう。

 つまり、仕事のパフォーマンスを確認することは「仮病を暴く」ことが目的ではなく、社員の体調に応じた働き方を検討し、会社としての安全配慮義務を果たすために不可欠なステップなのです。

面談による状況確認の進め方

 欠勤や遅刻・早退が多い社員に対して、「本当に体調不良なのか」と疑問を持つだけでは、問題は前に進みません。大切なのは、本人と面談を行い、事情を直接確認することです。

 面談では、感情的に問い詰めたり、仮病を疑っていることを前面に出すのは避けましょう。あくまでも冷静かつ丁寧に、具体的な事実を踏まえて話をすることがポイントです。たとえば、次のような聞き方が有効です。

「今月はすでに7日間の欠勤があり、遅刻が3回、早退が2回ありました。体調不良とのことですが、どの程度の状態なのか教えていただけますか?」

 このように、客観的な事実を提示したうえで現状を確認すれば、本人も説明しやすくなります。会社としても「どの程度の体調不良なのか」「今後の勤務にどのような影響があるのか」を把握でき、必要な配慮を検討しやすくなります。

 また、面談の際は会社の安全配慮義務を念頭に置くことが重要です。体調が悪いにもかかわらず無理に働かせれば、症状が悪化し、会社の責任問題につながる可能性があります。そのため、本人から病状を丁寧に聞き取り、必要に応じて医師の診断書や受診状況の確認を依頼することが適切です。

 面談は「仮病を暴く場」ではなく、社員の健康状態を把握し、今後の勤務や就業環境をどう調整するかを話し合う場として位置づけるのが望ましいでしょう。

診断書の提出を求める際の注意点

 欠勤や遅刻、早退が繰り返される場合、会社としては社員の体調不良が実際にどの程度のものなのかを確認する必要があります。その際に有効なのが医師の診断書です。ただし、診断書を求める場合には、いきなり「出してください」と伝えるのではなく、理由を丁寧に説明することが大切です。例えば「今月はすでに七日間も欠勤があり、さらに遅刻や早退も複数回重なっているので、業務の調整や体調への配慮のために診断書をお願いしたい」という形で伝えることで、社員も納得しやすくなります。

 また、就業規則に一定日数以上の欠勤があった場合に診断書を提出させる旨の規定がある会社では、その規定に基づいて依頼することも可能です。規定がない場合でも、実際の欠勤や遅刻の頻度、業務に与える影響を具体的に示したうえで、診断書が必要であることを説明すれば、正当性のある対応として受け止めてもらえることが多いでしょう。

 診断書を求めることは、社員の体調を疑うためではなく、むしろ安全配慮義務を果たし、今後の勤務をどう調整するかを検討するためのものです。そのため「仮病を見抜くために出せ」という姿勢ではなく、「会社として体調を正しく理解し、適切な対応をとるために必要だ」というスタンスを忘れずに伝えることが大切です。

産業医面談を活用する方法

 体調不良を理由に欠勤や遅刻、早退が続く社員への対応では、産業医の意見を取り入れることも有効です。産業医は会社の業務内容や職場環境を理解しているため、主治医とは異なる視点から社員の健康状態と仕事の適合性を評価することができます。例えば、診断書には「体調不良のため一定期間の休養が望ましい」と書かれていても、業務の内容を知らない主治医の判断だけでは具体的な勤務継続の可否を判断するのが難しい場合があります。その点、産業医であれば日々の勤務状況や職場環境の情報を踏まえて意見を出すことができ、より実態に即した対応を検討することが可能になります。

 産業医面談を行う場合には、これまでの欠勤や遅刻、早退の記録、出社した際の勤務態度、仕事の遂行状況などを整理して伝えることが重要です。そのうえで、体調不良が本当に業務遂行に支障をきたしているのか、それとも通常勤務が可能な範囲なのかを確認してもらいます。産業医の判断によっては、一定期間の休養を勧めることもあれば、特段問題なく勤務できるとの意見が出ることもあります。

 このように、産業医面談は仮病を暴くための手段ではなく、社員の健康と会社の業務を両立させるための判断材料を得る手段です。主治医の診断と異なる結果が出ることもありますが、それを対立的に扱うのではなく、双方の意見の背景にある事実を検討し、より信頼性の高い判断を導くために活用していくことが求められます。

医師の診断が出た場合の対応の原則

 社員から体調不良を裏付ける診断書が提出された場合、会社としてはまずその内容を尊重して対応することが基本になります。医師の診断は専門的知見に基づくものであり、会社が独自の判断で否定することは極めて困難です。したがって、診断書に「一定期間の休養が必要」と記載されていれば、その間は無理に出社させず休養を認める必要がありますし、長期に及ぶ場合には休職制度の利用を検討することも適切です。

 一方で、会社の側からすると診断書の内容が現実の勤務態度や様子とそぐわないように思えることもあります。出社時には元気そうに見えるのに「勤務困難」とされている場合などがその典型です。しかしながら、そうした疑問があったとしても、別の医師や産業医など専門家の意見が存在しない限り、会社が一方的に診断書を否定することはできません。まずは診断書の内容を前提としたうえで、必要な対応を進めていく姿勢が求められます。

 仮に診断内容に疑問が残る場合には、産業医面談の実施や主治医との連絡調整、さらには別の医師によるセカンドオピニオンを求めるといった方法が考えられます。こうして複数の専門家の見解を照らし合わせることで、判断の信頼性を高めることができます。

 会社にとって大切なのは、医師の診断を軽視せず、専門的な見解に基づいて社員の健康を守りながら、業務への影響を最小限に抑える対応をとることです。診断書を根拠に安全配慮義務を果たすと同時に、必要に応じて追加の確認手続きを行うことで、適正かつ公正な対応を実現していくことができます。

主治医と産業医の診断が食い違う場合の判断基準

 社員の体調不良に関する対応では、主治医と産業医の診断内容が異なるというケースも少なくありません。主治医は社員の申告に基づいて診断を行うため、生活全般や本人の体感を重視する傾向があります。一方で産業医は、職場での業務内容や勤務状況を踏まえて判断するため、実際に仕事を続けられるかどうかという観点を重視します。このような立場の違いがあるため、診断内容が食い違うことは決して珍しくありません。

 例えば、主治医が「体調不良のため欠勤が必要」と判断している一方で、産業医は「通常勤務に問題はない」と評価する場合があります。会社としてはどちらの意見を採用するか迷うところですが、重要なのは両者の診断の根拠を丁寧に検討することです。診察に要した時間や回数、本人からの聞き取り内容、仕事の具体的な負担状況への理解度など、診断の前提となる事実がどれほど把握されているかを比較し、どちらがより信用性の高い判断を下しているかを見極めていきます。

 もっとも、医学的な評価を会社だけで最終的に判断するのは難しいのが実情です。そのため、産業医や主治医双方の意見を踏まえながら、必要に応じて追加の医師の見解を求めたり、弁護士などの専門家と協議しつつ最終的な対応を決定することが現実的です。

 主治医と産業医の診断が異なると、会社にとっては判断に迷う状況が生まれますが、最も大切なのは社員の健康と会社の安全配慮義務を軽視しないことです。リスクを踏まえつつ、公平性のある判断をすることが、後のトラブルを防ぐ大切なポイントとなります。

仮病であることが判明した場合の取り扱い

 慎重に事実を確認した結果、もし仮病であったことが明らかになった場合、会社としてはその対応を誤らないことが重要です。理論的には懲戒処分や厳重注意といった措置を検討する余地がありますが、実務上はそこまで至らず、社員が自ら退職を選択するケースも少なくありません。嘘をつき続けることは精神的に大きな負担となるため、面談などで事実関係を丁寧に確認していくだけでも、本人が居づらくなり自然に離職へ向かうことが多いのです。

 もちろん、だからといって会社が強い口調で責め立てたり、威圧的に追い込むことは避けなければなりません。仮病であっても社員に対しては人事管理上の配慮を持ち、冷静に事実を確認する姿勢を崩さないことが肝心です。感情的に対応してしまうと、逆に不当な扱いを受けたと主張され、会社側がトラブルを抱えるリスクも生まれてしまいます。

 また、仮病が判明した場合であっても、まずは改善の余地を探ることが望ましいでしょう。例えば「これからは誠実に勤務する」と本人が反省し、実際に行動を改めるのであれば、処分に踏み切る必要は必ずしもありません。むしろ信頼関係を再構築することによって、職場全体の秩序を保つという観点からは有効な場合もあります。

 一方で、繰り返し仮病を使い、業務に重大な支障を及ぼしている場合には、懲戒処分を検討せざるを得ないこともあります。ただし、この場合も十分な証拠を確保したうえで手続きを踏む必要があり、軽率な判断は禁物です。

 仮病が判明した場合の対応は、単なる処分の問題ではなく、社員との信頼関係や組織の秩序をどう守るかという観点から冷静に判断していく必要があるのです。

退職や自然な離脱というケースもある

 体調不良を理由にした欠勤や遅刻・早退が続き、会社が面談や診断書の確認などを重ねていく中で、実際に仮病であった場合、社員が自ら退職を選ぶケースも少なくありません。嘘をつき続けることは精神的に大きな負担となり、会社から強く追及されなくても、自分から働きづらさを感じて出社しなくなったり、最終的に退職するという流れに至ることが多いのです。

 このように、会社が懲戒処分などの厳しい手段をとらなくても、自然に職場から離脱していくケースは現実には少なくありません。もちろんすべての事案でそうなるわけではありませんが、経験的には、仮病を続けることは長期的に維持しづらいため、結果的に本人が身を引くことになることが多いのです。

 そのため、会社としては無理に強硬な措置を取らなくても、冷静に事実を確認し、必要に応じて改善を促す対応をしていくだけで十分な場合があります。重要なのは、疑わしい社員に感情的に接するのではなく、あくまで客観的な事実と制度に基づいて対応することです。そうした姿勢を貫くことで、最終的に社員が自然と退職する流れになったとしても、会社として不当な扱いをしたと評価されるリスクを避けることができます。

ハラスメントリスクを避けるために心得ること

 体調不良を理由とした欠勤や遅刻、早退が続くと、会社としては業務への支障や周囲の不満を考慮せざるを得ません。しかし、その対応の仕方を誤ると、今度はハラスメントと受け止められてしまうリスクがあります。仮病の疑いがある社員に対して感情的に叱責したり、「どうせ嘘だろう」と決めつけた発言を繰り返すことは、たとえ事実に基づいた指摘であってもパワーハラスメントと評価される可能性があるのです。

 大切なのは、常に冷静に事実をもとに話を進めることです。欠勤や遅刻の回数などの客観的な数字を提示し、そのうえで健康状態や勤務可能性について丁寧に尋ねるようにすれば、本人に対しても不当な扱いをしたと受け止められるリスクを大きく減らすことができます。また、診断書の提出や産業医面談を求める場合にも、「体調を疑っているから」ではなく「業務への配慮を行うために必要だから」という説明を欠かさないことが重要です。

 さらに、対応の過程は記録を残すことが望ましいでしょう。面談の日時ややりとりの内容を記録しておくことで、後に「不当な扱いを受けた」と主張された際に、会社の対応が正当であったことを示す裏付けになります。

 つまり、仮病の疑いがある場面であっても、感情を抑え、事実に基づいた対応を心掛けることが、ハラスメントリスクを避ける最大のポイントです。疑うこと自体ではなく、疑いに対してどう向き合うかが会社に問われているのです。

まとめ

 社員が体調不良を理由に欠勤や遅刻・早退を繰り返す場合、会社としては業務の支障や周囲への影響を考慮せざるを得ず、「仮病ではないか」という疑念を抱くこともあります。しかし、最も重要なのは十分な根拠もなく仮病と決めつけないことです。感情や印象だけで対応すれば、誤った判断につながり、場合によってはハラスメントと評価され、会社側が大きなリスクを負うことになります。

 対応の基本は、まず疑わしい事情を冷静に整理し、勤務態度や仕事のパフォーマンスを観察することです。そのうえで面談を行い、本人から直接事情を丁寧に聞き取ることが欠かせません。必要に応じて診断書の提出を求めたり、産業医面談を実施することで、社員の健康状態を客観的に把握することができます。医師の診断が提出された場合には、その判断を尊重しつつ、もし主治医と産業医の診断が食い違うときには、根拠の妥当性を比較し、専門家や弁護士と協力しながら最適な対応を検討していくことが重要です。

 仮に仮病であることが判明した場合でも、会社が感情的に追及する必要はなく、冷静に事実を確認し続けるだけで本人が自然に退職や離脱に至るケースも少なくありません。むしろ大切なのは、疑わしい社員への対応を通じて会社が公正さを保ち、他の社員にも信頼される姿勢を示すことです。

 最終的に経営者や人事担当者が心がけるべきことは、常に事実に基づき、冷静に判断し、適切に記録を残しながら対応していくことです。それが、社員の健康を守り、会社の安全配慮義務を果たしつつ、不要なトラブルを回避する最善の方法といえるでしょう。

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