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「電話対応が一般職ばかりで不公平?」社員の不満と企業の適切な対処法

動画解説

社員の「不公平だ」という主張、まず確認すべきはその“意味”

 「一般職にばかり電話を取らせるのは不公平だ」と社員から声が上がった場合、企業としてまず確認すべきは、その「不公平」という言葉が何を意味しているのかという点です。というのも、「不公平」という表現の背景には、実は異なる趣旨や目的が隠れていることが多く、それに応じた対応が求められるからです。

 例えば、多くの場合は「電話対応の負担が一般職に集中しており、総合職が関与してくれない」という状況に対し、「業務の負担を軽減してほしい」という意味で不満を述べているケースが見受けられます。このような場合には、制度の根本を見直すのではなく、あくまでも負担の過重化を防ぐための調整や配慮が求められるのです。

 一方で、「そもそも一般職と総合職で電話対応の役割を分けていること自体が不公平だ」といった主張もあります。これは単なる負担軽減の訴えではなく、職種間の制度そのものの見直しを求めるものであり、企業文化や業務設計全体に関わる重大な問題です。そのため、簡単に「では平等にしましょう」と制度を変更することはできず、慎重な判断が必要になります。

 このように、同じ「不公平」という言葉であっても、その意味合いは大きく異なります。社員からの声を受けた際には、まずはその主張の本質を丁寧に聞き取り、表面的な言葉だけで判断せずに、背景にある意図を正しく汲み取ることが、トラブルの予防と適切な対応の第一歩となります。

「負担軽減要求」の場合に企業がとるべきステップ

 社員が「一般職ばかりが電話対応しているのは不公平だ」と訴えている背景に、「業務負担が重くて大変だ」という意図がある場合、これは制度そのものへの批判ではなく、業務の過重さに対する改善要望と受け取ることができます。このようなケースでは、企業側として配慮を示す姿勢が重要です。

 まず行うべきは、現状の業務実態の把握です。電話対応が実際にどの程度の負担になっているのかを確認するために、一般職社員への丁寧なヒアリングを実施することが求められます。具体的には、「業務に支障が出ていないか」「昼休みなどの休憩時間が確保できているか」といった視点から、現場の声を丁寧に聞き取る必要があります。

 特に重要なのが、休憩時間の確保状況です。業務が忙しくとも、法定の休憩時間が取れていなければ労働基準法に違反するおそれがありますし、業務効率や集中力の面でも悪影響を及ぼします。したがって、まずは休憩時間がしっかり取れているかを確認し、確保できていないようであれば早急な改善が必要です。

 また、電話対応が業務全体の中で特に負担になっている場合には、人員補充を検討することも選択肢のひとつです。新たに一般職を採用するのが難しい場合には、総合職による一時的な応援や、外部委託の活用といった手段も視野に入れるべきでしょう。もちろん、総合職側にもコア業務との兼ね合いがありますから、支障の出ない範囲での対応が求められます。

 このように、負担軽減が主たる目的である場合には、制度の見直しではなく、業務配分や人員体制の調整といった柔軟な対応が基本となります。社員の声に耳を傾け、過度な負担がかかっていないかを見極めながら、現場の実態に即した施策を講じていくことが、企業としての信頼にもつながるのです。

電話対応業務の見直しには“休憩時間の確保”が重要な視点

 電話対応業務の負担について検討する際に、特に重視すべき視点のひとつが「休憩時間の確保」です。一般職社員から「電話対応が負担になっている」という声が上がっている場合、その根底には「業務時間中だけでなく、休憩時間すら電話対応に追われている」といった問題が潜んでいる可能性があります。

 労働基準法では、一定時間以上の労働に対して休憩時間を設けることが義務付けられており、この時間は原則として自由に使えるものでなければなりません。ところが、実態として電話対応のために昼休みが確保できていない、あるいは常に気を張って電話に出られるようにしているという状況であれば、法的にも問題が生じるおそれがあります。

 また、休憩時間をしっかり取れない状態が続けば、業務への集中力や生産性が低下するだけでなく、心身の不調にもつながりかねません。電話対応がどれほどの負担になっているのかを判断する上でも、「休憩時間がきちんと守られているかどうか」は極めて重要なチェックポイントです。

 仮に、休憩時間は確保されているが、業務時間中に電話対応が業務に支障を及ぼしているという場合には、他の業務とのバランスをどうとるかを再検討する必要があります。一般職社員の担当業務が電話対応によって圧迫されているようであれば、業務の優先順位を見直したり、時間帯ごとの役割分担を調整したりするなどの対応が求められるでしょう。

 業務の過重さを正しく判断するためにも、まずは「休憩が取れているか」という基本的な視点から見直すことが、企業にとっても現場にとっても有益な第一歩となります。

人手不足が明確な場合の現実的な対応策とは

 業務の実態を調査した結果、明らかに人手が足りていない、現有の一般職社員だけでは電話対応が十分に行えず、業務全体に支障が出ているという状況であれば、企業として具体的な対策が必要です。このような場合、最も現実的な対応策は、人員の補充か、業務体制の一時的な見直しです。

 人員補充については、新たに一般職を採用することが理想的ですが、採用のタイミングやコスト、人材確保の難しさといった現実的な問題もあります。そのような場合には、総合職の一時的な応援体制を整えることも一案です。ただし、総合職には本来の企画営業や中核的な業務があるため、その業務に支障が出ないよう、電話対応への関与はあくまで限定的・補助的な形で行うべきです。

 注意したいのは、総合職への業務追加がマルチタスク状態を生み出し、結果的に全体の業務効率を下げてしまうリスクです。特に、複数の業務を同時に処理しなければならない環境では、たとえ能力の高い社員であっても集中力が分散し、パフォーマンスが下がる傾向があります。電話対応がその一因になってしまっては、本末転倒です。

 他にも、電話対応の一部を外部委託に切り替えるという方法もあります。たとえば、一次受けの電話を外部のコールセンターに任せ、社内には重要な対応だけを引き継ぐという形を取ることで、社員の負担を大幅に軽減できる可能性があります。ただし、情報管理や顧客対応品質の観点から外注に適さないケースもあるため、業務の性質をよく見極めた上で導入を検討する必要があります。

 いずれにせよ、人手不足が明確な場合には、現場の声を無視せず、現実的な対応策をスピーディに講じることが求められます。電話対応を軽視せず、業務効率や社員の働きやすさを両立させる工夫が、職場全体の健全な運営につながるのです。

総合職にも電話対応を求めることの是非

 人手不足や業務の偏りを解消する手段として、「総合職にも電話対応を手伝ってもらうべきではないか」という声があがることがあります。特に、一般職の業務負担が大きく、電話対応に追われて他の業務に支障が出ているような場合、一時的にでも総合職がサポートに回ることは、現場にとって一定の効果をもたらす可能性があります。

 しかし、この対応には慎重な判断が求められます。総合職は多くの場合、企画や営業、プロジェクトマネジメントなど、中核的な業務を担当しており、それらの業務には集中力と継続的な作業時間が必要です。電話対応のような突発的な業務が入り込むと、集中が妨げられ、業務全体のパフォーマンスが下がってしまうことがあります。これはマルチタスクの効率の悪さに起因するもので、特に知的労働においては大きな障害となり得ます。

 そのため、総合職に電話対応を求める場合には、あくまでも臨時的な措置として実施することが原則です。また、業務の重要性や緊急性、そして各職種が担うべき本来の役割を整理したうえで、どのような範囲での応援が可能なのかを明確にしておく必要があります。

 さらに、職場内での不満や軋轢を防ぐためには、「なぜこのような対応を取るのか」を社員全体に丁寧に説明し、理解を得ることが欠かせません。単なる業務命令として押し付けるのではなく、状況に応じた柔軟な対応として位置づけることで、協力体制を構築しやすくなります。

 総合職への電話対応の一部委託は、企業にとって柔軟な業務運営の一環となることもありますが、それが常態化すると制度の根幹に影響を与えかねません。したがって、必要に応じた応援にとどめ、本来の業務を尊重するバランスの取れた運用が求められるのです。

「職種間の区分撤廃」を求める主張への慎重な姿勢

 「電話対応は全社員が平等に行うべきだ」「一般職と総合職の業務分担自体が不公平だ」といった声が出てきた場合、それは単なる業務負担への不満ではなく、制度そのものの見直しを求める意見と捉えるべきです。このような主張には、表面的な対応ではなく、制度全体をどう設計するかという経営レベルの判断が必要になります。

 職種間の役割分担は、企業の業務効率や社内制度の根幹に関わるものであり、簡単に「平等にしましょう」と変えられるものではありません。たとえば、総合職には本来、営業や企画など、戦略的で集中力を要する業務が課されており、そこに電話対応などのルーティン業務を恒常的に加えることは、全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があります。これは個人の能力の問題ではなく、業務設計上の合理性の問題です。

 仮に、すべての社員に電話対応を義務付けるという制度変更を実施する場合は、それが会社の方針や理念に適合するのか、現場の混乱を招かないか、他の社員の理解を得られるかといった多面的な視点から慎重に検討しなければなりません。社内制度は、そこに働く多くの社員の前提となっているため、思いつきで制度を変更することは、かえって組織全体の混乱を招くリスクがあります。

 したがって、こうした「平等に扱ってほしい」といった主張に対しては、その背後にある意図を丁寧に汲み取りつつ、現制度のメリットや背景を丁寧に説明し、拙速な対応を避ける必要があります。制度変更が妥当と判断された場合でも、その導入には時間をかけて周囲の理解と協力を得ながら慎重に進めることが、組織としての安定と成長につながります。

制度見直しによる混乱と経営判断の重要性

 職種間の業務分担や制度設計を見直すことは、企業の柔軟性や組織風土の改善につながる可能性を持つ一方で、大きな混乱を引き起こすリスクも抱えています。特に、一般職と総合職の役割分担を撤廃するような制度変更は、現場での混乱や社員間の不満につながりかねないため、経営者として極めて慎重な判断が求められます。

 制度というものは、それを前提として日々業務を行っている社員の働き方や意識に深く根ざしています。たとえば、総合職は電話対応を主業務とはしていないという前提のもとで入社し、キャリアを形成している場合が多く、そこにいきなり「今日から全員が平等に電話対応する」といった変更を加えれば、混乱が起きるのは当然です。

 また、制度変更には必ず“説明責任”が伴います。変更の目的や背景、それにより誰にどのような影響が及ぶのかを明確にし、社内に丁寧に説明して理解を得る努力をしなければ、現場の納得感は得られません。制度を変えること自体よりも、それに伴う「社内コミュニケーションの負荷」が非常に大きいという点も、経営判断時の重要なポイントとなります。

 経営者として、「うちの会社は全員で電話を取るという方針が社風に合っている」と判断するのであれば、それを貫く選択もあります。しかしその場合でも、総合職の社員をしっかり説得し、納得してもらうための準備と時間をかける必要があります。一方で、「やはり役割分担を明確にする方が合理的だ」と考えるのであれば、現状の制度を維持しつつ、業務量の偏りにだけ対応するという判断も有効です。

 つまり、こうした問題に対しては「何が正しいか」という答えは一つではなく、企業ごとの方針と事情に応じて最も適した判断を下すことが大切です。軽率な制度変更はかえって現場の混乱を招くおそれがあるため、変更を検討する際は必ず多角的な視点でリスクと効果を見極める必要があります。

社員の不満を制度変更以外で解消する工夫も

 制度そのものを見直すことが難しい場合でも、社員の不満を和らげる工夫は可能です。とりわけ、「一般職ばかりが電話を取っているのは不公平だ」という声の背景には、「自分たちにはチャンスが与えられていない」「扱いに差がある」という感情的な不満が含まれていることが多く、これは制度変更ではなく「公平感の醸成」によって解消を図ることができます。

 一つの有効な方法は、一般職から総合職への登用制度を整備することです。たとえば、総合職登用試験の受験資格を一般職社員にも開放するなど、「努力次第でキャリアの選択肢が広がる」という仕組みを設けることで、制度の硬直性に対する不満を緩和する効果が期待できます。受験の結果として不合格になることがあっても、「挑戦する機会がある」と感じられれば、不満の大部分は解消される可能性があります。

 また、こうした登用制度を設けることで、社員間のモチベーションの向上やキャリア意識の変化を促す効果も見込まれます。制度上の枠組みを維持したまま、「実力に応じた公平な機会がある」という姿勢を示すことは、組織全体の透明性と納得感を高めるうえで非常に有効です。

 さらに、定期的に業務の実態を確認し、不公平感が再燃しないように継続的なヒアリングや意見交換の場を設けることも重要です。業務分担の偏りを放置せず、現場の声をすくい上げる姿勢を見せること自体が、社員の信頼を得る一助になります。

 このように、制度を大きく変えることなくとも、運用の工夫や仕組みの改善によって「不公平感」を軽減する手段は存在します。むしろ、こうした柔軟な対応ができるかどうかが、今後の組織運営における健全性を左右する要素となるでしょう。

問題社員対応に関する法律相談

 今回取り上げた「一般職にばかり電話を取らせるのは不公平だ」という主張は、一見すると素朴な不満のようにも思えますが、その背景には業務負担や制度への不信感、さらには職場環境への不満が複雑に絡み合っていることがあります。このようなケースでは、社員とのコミュニケーションだけでは対応しきれない場面も多く、放置すれば他の社員への悪影響や職場全体の士気低下にもつながりかねません。

 ときに、このような発言を繰り返す社員が、いわゆる「問題社員(一般にモンスター社員とも言われている。)」である可能性もあります。本人の業務遂行能力に問題があったり、過度に権利を主張して職場の秩序を乱したりするような場合には、企業側としても適切な対応策を講じる必要があります。しかし、問題社員への対応は慎重さが求められ、法的な観点からの判断も欠かせません。

 四谷麹町法律事務所では、問題社員への対応に関して、個別の注意指導の仕方や、懲戒処分の進め方、社員への対応方法について具体的なサポートを行っています。さらに、状況によっては企業側代理人として、問題社員や、相手の代理人弁護士との交渉も行っています。

 訴訟や労働審判になる前の段階から適切な対応を行うことで、企業側の負担を軽減し、トラブルの早期解決が可能となります。問題社員の対応でお悩みの際は、会社側専門の経験豊富な四谷麹町法律事務所にぜひご相談ください。

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