問題社員

虚言癖がある社員への正しい対処法とは?企業リスクを回避する実践的対応策

動画解説

虚言癖のある社員が引き起こす職場のリスク

 職場において「虚言癖がある社員」がいる場合、見過ごせないリスクが生じます。最大の問題は、虚偽の情報が社内に流通することで、正確な情報をもとにした意思決定が困難になることです。経営判断や業務運営には、事実に基づいた情報が不可欠ですが、虚言癖のある社員が関与することで、この基盤が揺らぎ、組織全体に誤った方向性が示されてしまうおそれがあります。

 たとえば、報告内容に事実と異なる点があった場合、それを前提とした指示や方針がずれてしまい、現場での混乱やトラブルの原因になりかねません。また、顧客対応においても誤情報を発信してしまうと、企業の信用失墜につながるリスクもあります。とくに、社内で一定の立場にある社員が虚偽の情報を発する場合には、その影響範囲も大きくなります。

 さらに、チームワークの面でも問題が顕在化します。チームとして円滑に仕事を進めるためには、メンバー同士の信頼関係が不可欠です。しかし、ある社員が意図的に、あるいは無意識に虚偽の情報を流すような状況が続くと、周囲はその社員を信用できなくなり、チーム全体の協働意欲が低下してしまいます。結果として、職場の雰囲気が悪化し、社員の士気や生産性にも悪影響を及ぼすことになります。

 このように、虚言癖がある社員の存在は、単なる個人の問題にとどまらず、組織全体の判断・業務遂行・信頼関係にまで波及する重大なリスクをはらんでいます。したがって、その兆候が見られた段階で、早期に対応策を検討・実行することが重要です。

虚言癖の主な原因とは?モラルと能力の観点から分析

 虚言癖がある社員と一口にいっても、その背景には異なる原因が存在します。とくに重要なのは、「モラルの低さによるもの」と「能力不足によるもの」の2つのケースを明確に分けて考えることです。それぞれに適切な対応策は異なりますので、原因を正確に見極めることが問題解決の第一歩となります。

 まず、「モラルが低いことが原因」のケースでは、本人が明確な意図を持って嘘をついている状況が想定されます。「少しくらいなら嘘をついても構わない」といった価値観を持ち、虚偽の報告や発言を繰り返すのです。このタイプの社員は、自身の保身や責任回避、評価を高めたいという思惑から、意識的に事実を歪めて伝える傾向があります。このような行動は、企業の風土や規律を乱す重大な要素となりうるため、毅然とした姿勢で臨む必要があります。

 一方で、「能力不足が原因」の場合は、本人に悪意があるわけではなく、事実を正確に認識できない、あるいは正しく伝達できないという認知・伝達能力の問題が背景にあります。たとえば、視覚や聴覚から得た情報を正確に捉えられなかったり、適切な言葉を選べずに誤解を生んだりするケースがこれに該当します。本人としては真実を伝えているつもりでも、結果的に事実とは異なる情報が社内に広がってしまうのです。

 また、これらの個人要因以外に、企業文化や組織体制が原因となっている場合もあります。たとえば、上司に対する過度な忖度や、失敗を認めにくい風土が、社員に嘘をつかせる空気を生み出していることもあります。しかし、こうした組織的な問題は全社的な改革が必要となるため、この記事では主に「モラルの低さ」「能力不足」という個別要因に焦点を当てて解説していきます。

 虚言癖という現象の背景には、単なる人格の問題では片付けられない複雑な要因が絡んでいます。だからこそ、その原因を見誤ることなく、適切なアプローチを選択することが、職場の健全性を保つ上で極めて重要なのです。

モラルが低いことが原因のケースへの対応策

 虚言癖の背景にモラルの低さがある場合、企業としては毅然とした態度で対応する必要があります。このタイプの社員は、自分の立場を守るため、あるいは責任逃れのために意図的に嘘をついているため、放置すれば職場の秩序や信頼関係を大きく損なうおそれがあります。したがって、早期に問題行動を認識し、段階的に指導と処分を進めていくことが求められます。

 まず初期段階では、本人に対して明確な注意・指導を行うことが基本です。嘘の発言が事実と異なるものであること、その影響が業務にどのような支障をもたらしているかを具体的に伝え、行動の改善を求めます。この際、「たかが一度の虚偽報告」と見逃すのではなく、再発のリスクを踏まえ、問題の重大性をしっかり認識させることが重要です。

 それでも改善が見られない場合には、厳重注意書の交付や懲戒処分といった、より重い手段を検討する必要があります。懲戒処分を実施する際には、処分理由が明確で、法的に妥当とされる手続きが取られているかどうかが問われます。処分に不備があると、後に労働トラブルへと発展し、会社側が不利な立場に立たされることにもなりかねません。そのため、懲戒処分の内容や通知書の文言については、労働問題に精通した弁護士のコンサルティングを受けることをおすすめします。

 また、虚言による影響が特に重大であると判断される場合には、その社員を重要なポジションから外すことも検討すべきです。たとえば、管理職や多くの部下を統率する立場にある社員が虚偽の情報を発信すれば、組織全体に誤情報が拡散し、経営判断にも深刻な悪影響を及ぼします。こうした場合には、本人を管理職から外し、業務上の影響範囲を最小限に抑える必要があります。

 チームワークが重視される業務や、社員同士の信頼関係を基盤とするプロジェクトからも、虚言癖のある社員を外すことが望ましいです。虚偽の情報が共有されることでチームの信頼関係が損なわれ、業務効率や成果にも悪影響を及ぼすからです。

 さらに、社内で事実確認が困難な業務――たとえば外勤、出張、単独業務など――に関しては、虚言癖のある社員には適していません。第三者の目が届かない状況で嘘をつかれると、真偽の判断が困難となり、企業にとって大きなリスクになります。そのため、このような業務への配置は慎重に検討すべきです。

 最終的には、社内で任せられる仕事が見つからない場合、退職勧奨や懲戒解雇といった選択肢も考慮することになります。ただし、これらの対応は法的なハードルが高く、労働者側との紛争につながる可能性が高いため、事前に弁護士の助言を得ながら慎重に進めることが必要です。懲戒解雇を選択する際には、弁護士が作成した正式な通知書を用いるなど、適正な手続きを踏むことでトラブルを回避しやすくなります。

 虚言癖がモラルに起因している場合には、甘い対応をしてしまうと、他の社員にも悪影響を及ぼしかねません。企業全体の風紀を守るという視点からも、組織としての強い姿勢が求められます。

能力不足が原因のケースへの対応策

 虚言癖が本人のモラルではなく、認知や伝達の「能力不足」に起因している場合、その対応には注意が必要です。このケースでは、本人に悪意はなく、むしろ事実を正確に伝えようという意志があっても、結果として虚偽の情報になってしまうことがあります。そのため、「嘘をつくな」と叱責するだけでは改善につながらず、むしろ本人の自信を失わせ、問題を深刻化させてしまう可能性があります。

 このような社員に見られる特徴としては、情報の正確な認識が苦手であったり、記憶の定着が曖昧であったり、話の内容を構造的に整理して伝える力が不足していたりといった点が挙げられます。具体的には、視覚や聴覚による事実認識に誤りが生じやすく、それをそのまま他人に伝えることで、結果的に間違った情報が社内に広まってしまうのです。

 こうした能力的な問題に対しては、指導によって育成していくことが基本となります。「嘘をつくな」といった道徳的なアプローチではなく、「どうすれば正確な情報伝達ができるか」という視点で、研修や教育の場を設け、段階的にスキルを向上させていくことが大切です。

 たとえば、定期的な業務研修によって知識の正確性を高めたり、ワークショップ形式で情報の受け取り方・伝え方をトレーニングしたり、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を通じて実際の業務の中でフィードバックを与える方法などが有効です。小さな成功体験を積ませながら、徐々に情報処理能力を育てていく姿勢が求められます。

 ただし、どれだけ努力しても能力的に適性がない業務というものは存在します。改善に取り組んでも成長が非常に緩やかで、結果として重大なミスが繰り返されるようであれば、配置転換を含めた抜本的な見直しが必要になります。

 たとえば、管理職などの判断や情報伝達が重要視されるポジションには不向きといえるでしょう。とくに、離れた拠点で業務を任せるような立場では、上司の目が届きにくく、正確な報告が期待できない場合には、経営判断を誤るリスクが大きくなります。このような場合には、本人の適性に応じて、より直接的に監督が可能なポジションや、正確な情報伝達が必須ではない業務への配置を検討することが現実的です。

 また、チームワークが求められる業務も慎重に扱う必要があります。本人に悪気がないにもかかわらず、結果として周囲に間違った情報を伝えることが繰り返されると、チームメンバーからは信頼を失い、誤解や軋轢の原因となるからです。さらに、「この人はわざと嘘をついているのではないか」と誤認され、モラル面でも誤解を受ける可能性がある点も無視できません。

 能力不足による虚言癖は、「本人の悪意」がない分、対応が感情的になりにくい反面、「改善が見込めない」場合には業務に深刻な影響を与え続ける恐れがあります。業務の性質と本人の特性がどうしても合致しない場合には、本人の今後のキャリアも踏まえて、退職勧奨や配置転換を含む柔軟な対応を検討すべきです。

 なお、こうした判断も社内だけで進めると、評価にバイアスがかかりやすく、適切な結論に至らないこともあります。能力評価や配置転換、最終的な退職勧奨などを進める際には、労務に詳しい弁護士の意見を取り入れながら、冷静かつ客観的に対応を進めていくことがトラブル防止のためにも重要です。

業務からの切り離しと配置転換を検討すべき場面

 虚言癖のある社員が職場にいる場合、どのような業務を任せてよいのかという判断は、企業にとって極めて重要なポイントになります。改善指導や教育を経てもなお虚偽の情報発信が続く場合、業務上の支障を最小限にとどめるためには、対象社員を一部業務から外す、あるいは配置転換を行うという対応が現実的な選択肢となります。

 特に注意すべきは、正確な情報の把握と伝達が求められる業務です。管理職やプロジェクトの責任者など、複数の部下やチームを統括し、その進捗状況や問題点を上層部に報告する立場では、事実と異なる情報が一つ紛れ込むだけでも、組織全体の意思決定を誤らせる危険があります。虚言癖のある社員をこうした重要なポジションに就かせることは、企業のリスクを高めることにつながります。

 また、チームワークが重視される業務においても、虚言癖は深刻な障害となります。チーム内の信頼関係が崩れると、情報共有や協力体制に支障をきたし、業務効率や成果の低下を招きます。たとえ本人に悪意がなかったとしても、繰り返される誤情報により周囲からの信用が低下すれば、結果としてチーム全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼすことになります。

 さらに、上司や他の社員の目が届きにくい業務、たとえば外回りの営業や出張、リモートワーク中心の職務などでは、本人の報告が唯一の情報源になるケースもあります。そのため、事実と異なる報告がされていた場合でも即座に気づくことができず、問題が深刻化してから発覚するというリスクが高まります。こうした業務を任せることは、虚言癖のある社員にとっても過度なプレッシャーとなり、組織にとっても不安定要素となりかねません。

 このような業務特性を踏まえたうえで、「どの仕事であれば、虚言癖の影響が最小限に抑えられるか」という視点から再配置を検討することが大切です。たとえば、常に上司の目が届くオフィス内の作業や、報告内容がデータや記録によって客観的に検証できるような業務であれば、管理しやすく、リスクを抑えられる可能性があります。

 それでも「社内に任せられる仕事がない」「どの業務でも支障が生じる」と判断される場合には、退職勧奨などを通じて、本人が別の職場で自身の適性を活かして働けるよう促すことも選択肢となります。配置転換は、あくまで社員の育成や活躍を目的とするものですが、適性を大きく外れたまま業務を続けさせることは、本人にとっても企業にとっても不幸な結果となりかねません。

 このような判断は、企業の経営判断として繊細な要素を含みます。本人の将来性や他業務での可能性も含めて、感情論ではなく客観的に検討を進めるためにも、外部の弁護士や人事コンサルタントの視点を交えながら判断を行うことが望まれます。

虚言癖が改善されない場合の最終手段とは

 教育指導や配置転換といった対応を行っても、虚言癖が改善されず、業務に重大な支障が出続ける場合には、企業として最終的な対応を検討しなければなりません。それが、退職勧奨や解雇といった選択肢です。ただし、これらの措置は非常に慎重に進める必要があり、対応を誤れば重大な労使トラブルに発展するおそれもあります。

 まず検討すべきは、退職勧奨です。これは会社側が社員に対し、「現在の職務は本人の適性に合わないため、退職を検討してほしい」と申し出るもので、あくまで本人の合意を得て退職してもらう形式です。虚言癖により任せられる業務がなくなり、社内で活躍の場が見つけられない場合には、本人の今後のキャリアのためにも退職勧奨を通じて、新たな環境で活躍してもらうという判断が現実的です。

 ただし、退職を勧めた瞬間から、社員側の態度が一変することもあります。「辞めろと言うなら、自分も言いたいことを言わせてもらう」と、これまで抱えていた不満や反発が表面化し、会社側に対して強く反発することもあります。したがって、退職勧奨の際は事前に弁護士と相談し、対応の方針を明確にしておくことが極めて重要です。

 さらに、どうしても改善の見込みがなく、かつ業務への支障が顕著な場合には、懲戒解雇や普通解雇といった法的措置も視野に入ります。懲戒解雇とは、企業秩序を著しく乱す行為があった場合に認められる、最も重い処分です。虚偽の報告が企業に多大な損害を与えていると判断されるようなケースでは、選択肢となることもあります。

 一方、虚言が悪意ではなく能力の問題であったり、業務適性の問題が中心である場合は、懲戒解雇ではなく**普通解雇(能力不足による解雇)**の方が適切です。能力や適性の欠如が改善されず、配置転換などの手段を尽くしても状況が変わらない場合には、労働契約を継続する合理性がないとして、普通解雇が可能となる場合があります。

 ただし、いずれの解雇であっても手続きや理由に不備があると、無効とされるリスクが高いため、必ず弁護士の助言を受けながら慎重に進める必要があります。解雇通知書の内容や交付のタイミング、本人への説明方法など、実務上の細かなポイントも法的に重要な意味を持ちます。

 また、どんなに準備を整えても、労働者側が不服を申し立ててくる可能性は常に残ります。解雇無効を訴える訴訟や労働審判に発展するケースも少なくありません。したがって、100%安全な解雇というものは存在しないという前提のもと、企業としてリスクを適切に見極めたうえで判断することが必要です。

 もっとも、企業経営においては、不確実な要素を前提に判断を下すことは日常的です。虚言癖のある社員への対応もまた、明確な正解があるものではなく、経営判断として最も妥当な手段を選び取ることが求められます。その際には、労働問題に強い弁護士と連携し、法的リスクを最小限に抑えながら進めていくことが、企業にとって最も現実的な対応策といえるでしょう。

トラブルを避けるための弁護士への相談のすすめ

 虚言癖がある社員への対応は、注意指導や配置転換、退職勧奨、さらには解雇といった多岐にわたる選択肢を伴いますが、そのいずれもが労務トラブルに発展するリスクを含んでいます。とくに、社員のモラルや能力といった「評価」が絡む問題は、企業側と社員側で認識のずれが起こりやすく、対応を誤ると法的な紛争へとつながりかねません。

 こうした複雑な問題を、経営者や人事担当者だけで判断しようとすると、社内の空気や感情に流され、客観的な判断ができなくなることもあります。ときには「これくらい大丈夫だろう」という軽い判断が、後に大きなトラブルを招くこともあります。だからこそ、利害関係のない第三者である弁護士に相談し、客観的な視点から助言を受けることが重要です。

 弁護士は、社員対応に関する法的リスクを見極めたうえで、企業にとって最も安全で実効性のある対応策を提案することができます。たとえば、注意書や懲戒通知の文面をどのように作成すべきか、退職勧奨を行う際の進め方や言葉の選び方、解雇を行う場合の要件や証拠の整備など、実務上の具体的な支援を受けることができます。

 また、企業としてどの程度の対応が妥当で、どこからが法的リスクの高い行動となるのかを明確に把握することで、「何となく不安」「対応していいのかわからない」といった迷いから解放され、スムーズで一貫性のある社内対応が可能になります

 とくに、虚言癖のある社員への対応は、感情的な対立が表面化しやすいテーマでもあります。企業側としては冷静に、法的な根拠をもとに対応しているつもりでも、相手が感情的になってしまえば、問題は複雑化します。だからこそ、第三者としての弁護士の存在が、クッションとしての役割を果たし、紛争の激化を防ぐ効果も期待できます

 四谷麹町法律事務所では、問題社員への対応に関して、個別の注意指導の仕方や、懲戒処分の進め方、社員への対応方法について具体的なサポートを行っています。さらに、状況によっては企業側代理人として、問題社員や、相手の代理人弁護士との交渉も行っています。

 訴訟や労働審判になる前の段階から適切な対応を行うことで、企業側の負担を軽減し、トラブルの早期解決が可能となります。問題社員の対応でお悩みの際は、会社側専門の経験豊富な四谷麹町法律事務所にぜひご相談ください。

新着記事

  • 勤務態度が悪く指導に従わない社員への正しい対処法|問題社員(モンスター社員)対応の実務ポイント

  • 職場の無断録音を未然に防ぐために―企業が整備すべき制度とルールとは

  • 問題社員の無断録音にどう対処する?裁判での証拠採用との誤解を正し、企業秩序を守る方法とは

  • 横領が発覚した経理担当者が「年休消化で即退職」と言い出したら?企業側が取るべき実務対応と法的ポイント

  • 誹謗中傷メールを社内外に送信する社員への対処法|経営者が取るべき初動と法的対応

過去記事

オンライン経営労働相談

会社経営者を悩ます労働問題は、四谷麹町法律事務所にご相談ください。
労働問題の豊富な経験と専門知識で、会社経営者の悩み解決をサポートします。

経営労働相談のご予約はこちら