問題社員

毎日遅刻し口論になる社員の対処法|定年待ちでは解決しないマネジメントの基本

動画解説

遅刻を繰り返す社員を放置する危険性

 毎日2時間近く遅刻して出社するにもかかわらず、会社から特に強い注意や懲戒も受けず、そのまま給与が満額支払われている——こうした状態が続くことには、大きなリスクがあります。

 まず、明らかに規律違反をしている社員を放置することは、他の社員に対して「この職場ではルールを守らなくても問題にならない」「やった者勝ちだ」という誤ったメッセージを送ることになります。その結果、企業秩序は徐々に崩れ、真面目に勤務している社員の士気が低下します。チーム全体の雰囲気が悪くなり、職場環境にも悪影響を及ぼします。

 また、当該社員本人にとっても、何の是正もされない状況が続けば、自分の行動を正当だと錯覚し、態度を硬化させるおそれがあります。注意しても聞き入れず、逆に口論になるというのは、すでにその兆候が表れているといえるでしょう。

 さらに、これが表面化し、たとえば労働基準監督署などの外部の目に触れた場合、法令違反を疑われるおそれも否定できません。賃金の支払い実態に問題があれば、未払い賃金請求のリスクや、労務管理の不備を指摘される可能性も出てきます。

 このように、「今は我慢して、定年まで放っておこう」といった対応は、会社にとって大きな損失やリスクを招く結果になりかねません。経営者としては、「問題がある社員には、早期に・的確に対応する」という基本姿勢を明確に示す必要があります。

注意しても口論になる場合の対応方法

 問題のある社員に対して注意をした際、素直に受け入れず口論に発展するというケースは、決して珍しくありません。特に日常的に規律違反を繰り返している社員は、自らの行動を正当化しようとする傾向が強く、注意に対して強く反発することもあります。しかし、だからといって対応をあきらめて放置すれば、さらに状況は悪化します。

 まず大前提として、社員指導において「注意しても意味がないから」と諦めるのは、組織運営の責任を放棄することにほかなりません。問題行動が改善しないというのは、その注意の仕方が適切でなかった、あるいは指導する側に対応力が不足していた可能性があります。口論になったという事実は、適切な方法での注意指導がなされなかった結果であるとも言えるのです。

 こうした場合、感情的なやり取りを避け、冷静かつ客観的な事実をもとに対応することが重要です。具体的には、遅刻の時刻や頻度を記録として残し、あくまでも事実に基づいて「出社時刻に明らかな問題がある」「会社として認められない行為である」と明確に伝えます。感情に引っ張られるのではなく、職務上の問題として粛々と指導することが求められます。

 また、指導の際には、複数人で対応することも一つの手段です。たとえば直属の上司に加えて、人事担当者や別の管理職が同席することで、対応が個人的な対立ではなく、組織としての正当な注意であることを明確にすることができます。これにより、当該社員に対しても一定の抑止力を持たせることが可能になります。

 注意しても口論になったという過去があるからといって、それを理由に指導を避けてはいけません。むしろ、適切な方法で粘り強く対応を重ねることで、少しずつでも改善に向けて動かすことが大切です。

管理職が動かないなら経営者が率先すべき

 社員の問題行動に対して、管理職が対応しない、あるいは対応できないという場合、経営者が自ら動かなければなりません。遅刻を繰り返す社員を放置している状態は、明らかにマネジメント機能が停滞している証拠であり、それを放置すること自体が、企業秩序の崩壊を招きかねない重大な問題です。

 「この件は管理職に任せている」としても、その管理職が適切な対応をしていないのであれば、それは実質的にマネジメントが機能していないということになります。注意しても改善しない、口論になるばかりという状態が続いているならば、それはもはや現場任せにしておけるレベルではありません。経営者として、また組織の最高責任者として、自ら介入し、問題を正面から捉えて解決の方向に動かす必要があります。

 もし経営者自身が直接対応するのが適切でない場合でも、問題にきちんと向き合える管理職に交代させる、あるいは責任ある立場にいる者に対して明確な指示と責任を与えるといった判断が必要です。何より、「会社としてこのような行為は許容しない」というメッセージを、組織全体に示すことが大切です。

 経営の現場では、厳しい判断を迫られる場面も多々ありますが、ルール違反を許してしまう職場は、長期的には優秀な人材が離れ、職場の信頼感も損なわれていきます。問題社員の放置を見て、他の社員が「この会社は真面目にやっても報われない」と感じてしまえば、企業の力そのものが削がれていくのです。

 だからこそ、管理職が機能していない場面では、経営者こそが先頭に立って問題を認識し、実行力をもってマネジメントの立て直しに取り組むべきです。マネジメントの停滞は、経営の責任であり、組織としての姿勢を問われている問題でもあるのです。

定年前に適切なマネジメントを行う意義

 問題社員への対応を「定年まで我慢する」「定年で退職させて解決しよう」と考える経営者も少なくありません。しかし、そのような「時間が解決するだろう」という発想は、マネジメントの観点からは極めて危険です。問題を先送りにすることで、企業秩序の乱れや他の社員への悪影響が蓄積され、職場環境そのものが崩れてしまうからです。

 今回のように、遅刻を繰り返すうえに注意に対して反抗的な態度を取る社員が存在している場合、それはもはや個人の問題ではなく、組織全体に関わる深刻な課題です。こうした社員を放置してしまえば、他の社員も「この職場では何をしても許される」と誤解し、モラルの低下を招きます。その結果、職場全体の生産性が落ち、離職リスクすら高まります。

 また、定年で解決しようと考えていたとしても、実際にはその社員が再雇用を希望する可能性もあるため、「定年で自然に退職」というシナリオは必ずしも現実的ではありません。その際に「再雇用はしたくない」と思っても、過去のマネジメントが不十分であれば、企業側の一方的な再雇用拒否は難しいという現実に直面します。

 だからこそ、定年前の段階で、適切な注意、指導、必要に応じた懲戒などを通じて、社員に対する方針を明確にし、「企業として問題行動は許容しない」という姿勢を示すことが重要です。これにより、社員本人に対しても、会社としての本気度が伝わり、態度が改まる可能性も高まります。

 マネジメントは、ただ指示を出すことではなく、組織の秩序と成果を守るために、日々の行動に対して責任を持ち、必要な時に必要な手を打つことです。定年を待つという消極的な姿勢ではなく、今この瞬間から適切なマネジメントを実行することが、会社全体にとって最も健全な対応といえるでしょう。

段階的な注意・懲戒処分の進め方

 問題行動がある社員に対して、いきなり重い懲戒処分を科すのではなく、段階を踏んで対応していくことが重要です。特に長期間放置されていた問題については、すぐに厳しい処分を行ってしまうと、「これまで許されていたのに、なぜ急に」と反発や労務トラブルに発展するリスクがあります。したがって、まずはルールの明示と注意から始め、段階的に対応のレベルを上げていく必要があります。

 第一段階は、面談などを通じて本人に直接事実を伝え、「今後は許容しない」という会社の方針を明確にすることです。この時点では口頭の注意でも構いませんが、面談の記録や注意内容は必ず文書に残しておくことが重要です。次に、改善が見られなければ、書面での注意や警告書を交付し、会社の対応が本格的なものに変わりつつあることを本人に理解させます。

 その後も改善がなければ、懲戒処分を検討する段階に入ります。処分には段階がありますが、まずはけん責(始末書の提出など)から始め、繰り返されるようであれば減給や出勤停止、最終的には懲戒解雇という選択肢も見えてきます。ただし、それぞれの段階において、本人に対する指導履歴や注意の記録、具体的な問題行動の内容を明確に文書化しておくことが、後の法的対応にも役立ちます。

 重要なのは、これらのプロセスを通じて、「会社は本気で対応している」「ルール違反は容認されない」という姿勢を明確に伝えることです。これによって、当該社員の態度が変わる可能性もありますし、他の社員に対する組織の一貫性を示す意味でも大きな効果があります。

 段階的な対応を丁寧に積み重ねることは、会社を守るだけでなく、社員本人にとっても改善の機会を提供するという意味で、非常に意義のあるマネジメント手法と言えるでしょう。

自己申告で給与満額支給される問題への対応

 遅刻しているにもかかわらず、タイムカードがないことを理由に自己申告で出勤時間を報告し、給与が満額支払われているという状況は、企業として極めて深刻な問題です。これは単なる個人の不正というだけでなく、労務管理の体制そのものに欠陥があることを意味しています。

 まず確認すべきは、会社として労働時間の把握をどのように行っているかという点です。労働基準法では、使用者は従業員の労働時間を適切に把握する義務があり、タイムカード、ICカード、システムログなど、客観的な方法での管理が原則とされています。自己申告による勤怠管理は、あくまで補完的な手段であり、実態とかけ離れた申告を放置することは違法な状態を招くおそれがあります。

 したがって、現状で「遅刻があると知りつつも、自己申告に基づいて給与を満額支給している」というのであれば、まずは会社側の運用ルールを見直す必要があります。たとえば、今後は上司や管理職による出勤時刻の記録、日報での報告義務化、簡易的なタイムレコーダーの導入など、できる範囲からでも客観的な勤怠管理を始めることが求められます。

 さらに、自己申告と実際の出勤時刻に明らかな差がある場合には、その齟齬を記録し、該当社員に「労働時間の虚偽申告は不正行為である」という認識を明確に伝えることが重要です。繰り返されるようであれば、これも懲戒事由に該当する可能性があり、実際の処分に繋がる場合もあります。

 仮に過去に黙認していた経緯があるとしても、「今後は運用を改め、実態に即した勤怠管理を行う」と方針を転換し、社員全体に周知した上で実行に移すことが可能です。あいまいな運用を続けることは、職場全体の信頼を損ない、他の社員からの不満や不公平感を生み出します。

 この問題を放置すれば、会社は不正な給与支払いや労働時間管理義務違反という形で、法的責任を問われるリスクを負うことになります。制度面の見直しと、現場のマネジメント強化の両面から、速やかに対応を進めるべきでしょう。

定年後再雇用を拒否するための条件と限界

 多くの企業では、60歳定年後に再雇用制度を設けており、希望する社員に対して一定の条件のもと雇用を継続する運用が一般的になっています。今回のケースのように、問題のある社員について「再雇用したくない」という経営者の意向があったとしても、再雇用の可否は、法律上も慎重な判断が求められる点に注意が必要です。

 まず前提として、再雇用は「原則として希望者全員を対象とする制度」として運用されることが多いため、個別の社員について「業績が悪いから」「勤務態度に問題があるから」といった理由だけで一方的に拒否するのは困難です。実際、再雇用を拒否したことが不当とされ、トラブルや訴訟に発展する例も存在します。

 ただし、例外的に再雇用の拒否が正当と認められる可能性もあります。それは、本人の勤務態度や就業規則違反が重大かつ継続的であり、なおかつ会社として適切な注意・指導・懲戒処分などを行ったにもかかわらず改善が見られないといった、明確な記録と経過がある場合です。つまり、会社側がこれまでに十分な対応を講じてきたことが前提条件となります。

 しかし、今回のケースでは、当該社員の問題行動が長期間にわたり放置され、管理職による注意すら形だけにとどまり、明確な処分も行われていないという背景があります。このようなマネジメントの不備がある場合、再雇用を拒否したとしても「これまでは問題なく雇用していたのに、なぜ今になって拒否するのか」と反論される可能性が高く、企業側にとって不利な状況となりかねません。

 したがって、再雇用を拒否したいと考えるのであれば、まずは現時点からでも適切な注意・指導・処分の記録を積み重ね、「この社員は再雇用にふさわしくない」と客観的に判断できる状況を整えていく必要があります。過去の甘い対応を放置したままでは、企業側の正当性を主張することは難しいのです。

 加えて、再雇用は企業から一方的にオファーする義務がある一方で、本人がそれを辞退する自由もあります。つまり、会社がきちんとしたマネジメントを実行し、ルールを守らない社員には厳正に対処するという姿勢を示せば、本人が「この職場では自由にできない」と判断して再雇用を希望しない可能性もあるのです。

 再雇用を避けたいのであれば、まずは現在のマネジメントを立て直し、問題行動に対して毅然とした対応を重ねること。これが、法的にも実務的にも現実的な対処法となります。

今のマネジメントが会社全体に与える影響

 1人の問題社員への対応を後回しにしてしまうと、その影響は当人だけにとどまらず、職場全体のモラルや雰囲気に深刻な悪影響を及ぼします。社員全員が日々の業務を共にする職場において、明らかに規律を守らない社員が何の指導も処分も受けずに放置されている状況を目の当たりにすれば、真面目に働いている社員のやる気は確実に損なわれていきます。

 「どうせ何をしても許される」「サボった者勝ちなんだ」といった空気が蔓延すれば、他の社員も徐々に仕事への責任感を失い、生産性の低下、ミスの増加、離職率の上昇といった事態を招く可能性があります。つまり、1人の規律違反を放置することで、会社全体の健全な組織運営が損なわれてしまうのです。

 さらに問題なのは、そのような職場環境が「企業風土」として定着してしまうことです。一度ルーズな雰囲気が根付いてしまえば、それを改善するには相当な時間と労力を要します。採用の段階でも、「規律が緩い会社」という評判が広まれば、優秀な人材の獲得にも影響が出てくるでしょう。

 一方で、問題社員に対してしっかりとした注意や処分を行い、マネジメントの在り方を見直していけば、それは他の社員にとって「ルールが公平に適用される会社だ」という安心感に繋がります。公正な人事管理は、組織への信頼を築き、社員一人ひとりの意識向上やエンゲージメントの強化にも寄与するのです。

 今のマネジメントが会社全体に与える影響を軽視せず、経営者自らが「どのような会社にしていきたいか」を明確に意識して、必要な対応を迅速に実行すること。それが企業の健全な成長のために欠かせない姿勢と言えるでしょう。

まとめ:問題社員への対応は「今すぐ」が基本

 毎日2時間も遅刻を繰り返し、注意をしても改善せず、挙句に口論になるような社員をそのまま放置している状況は、明らかに組織としてのマネジメントが機能していないと言わざるを得ません。「定年まで我慢する」「再雇用は断りたい」といった消極的な対処では、根本的な問題の解決には至りません。

 会社における秩序を維持し、働く社員全体が安心して仕事に集中できる環境をつくるためには、問題行動があればその時点で、適切に対応することが重要です。まずは事実を把握し、注意・指導を重ね、必要に応じて段階的に懲戒処分を実施する。マネジメントの基本を丁寧に積み上げることが、長期的に見ても職場全体に良い影響をもたらします。

 また、こうした問題に対して管理職が動けていないのであれば、その管理職のマネジメント能力を見直すことも必要です。経営者が率先して対応する姿勢を見せることで、職場全体に「問題を放置しない」というメッセージが伝わり、社員の信頼感にもつながります。

 再雇用を拒否したいと考えるのであれば、なおさら、定年前からしっかりとしたマネジメントを実行しておくことが必要です。曖昧な対応を続けてきたままでは、法的にも実務的にも会社側の立場が弱くなる可能性があります。今ある問題に正面から向き合い、適切な対処を積み重ねていくことが、会社を守り、職場を守る第一歩です。

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