2025.10.30
本当に体調不良?欠勤・遅刻・早退を繰り返す社員への正しい確認と対応方法
目次
動画解説
疑わしい“体調不良”をどう捉えるか
社員が体調不良を理由に欠勤・遅刻・早退を繰り返す場合、管理職や経営者としては「本当に体調が悪いのか?」「もしかして仮病ではないのか?」という疑念を抱くことがあるかもしれません。しかし、たとえ疑わしい状況であったとしても、「仮病だ」と早合点して決めつけてしまうのは非常に危険です。
体調不良というのは外からでは判断しづらい領域です。見た目には元気そうに見えても、実際には慢性的な不調を抱えていたり、精神的な負担で体調が優れないということも十分に考えられます。逆に、表面上は疲れて見えても、業務に支障がない場合もあります。
このような曖昧さがあるため、「疑わしい」と感じた段階での初期対応がとても重要になります。ポイントは、主観的な印象や周囲の噂に流されず、客観的な事実や本人の説明、必要であれば医師の診断など、根拠に基づいた情報収集と判断を丁寧に進めることです。
社員が本当に体調不良なのか、もしくは業務に支障が出るレベルなのかを見極めるには、ただの勘や直感ではなく、記録と確認、丁寧なコミュニケーションが欠かせません。対応を誤るとハラスメントなどの別の問題にも発展しかねないため、「仮病かもしれない」と思っても、冷静に、慎重に対処していく必要があります。
疑わしい事実関係の整理リスト
体調不良を理由とした欠勤や遅刻、早退が繰り返されているものの、どこか腑に落ちない。そんなときには、感情的な印象だけでなく、具体的な事実関係を冷静に整理してみることが必要です。頭の中で漠然と疑っているよりも、客観的な状況を一覧化することで、状況の正確な把握と次の行動への判断材料になります。
まず注目すべきは、欠勤・遅刻・早退の頻度やタイミングです。特定の曜日や業務内容に偏っているか、休みの前後に集中していないかなどを確認してみましょう。また、申告された体調不良の内容が毎回同じか、あるいは変化しているのかも判断材料となります。
さらに、出勤時の様子や勤務中の業務遂行状況も確認が必要です。もし業務中は問題なく働けている様子であるにもかかわらず、頻繁に体調不良を理由に勤務時間が不安定なのであれば、その言い分との整合性に疑問が生じることもあるでしょう。
こうした疑問点は、まずは“気になる事実”として記録しておくことが大切です。仮病かどうかを判断するためではなく、事実に基づいて適切に対応するための準備です。後の面談や対応を進めるうえで、感情ではなく事実に即して話を進めることが、本人との信頼関係を損なわずに解決を図る上でも重要となります。
面談で聴くべきポイントと配慮すべき義務
社員の体調不良が本当かどうか疑わしいと感じたとしても、そのまま放置することは適切ではありません。また、いきなり強く問い詰めたり、仮病であるかのように決めつけて話すのも避けるべきです。そうではなく、冷静に状況を確認するために、まずは面談の場を設けて本人から話を聞くことが大切です。
この際、確認すべきポイントは、欠勤・遅刻・早退の具体的な日数と理由、体調の状態、医師の診察を受けているかどうかなどです。例えば、「今月はすでに7日間欠勤し、遅刻が3回、早退が2回あります。体調不良と申告されていますが、現在の病状について教えていただけますか?」というように、具体的な事実をもとに丁寧に質問を重ねるとよいでしょう。
注意すべきなのは、あくまでも会社として体調を気遣っているという姿勢を忘れないことです。会社には労働者の健康に配慮する「安全配慮義務」があります。体調が悪い社員を無理に働かせて、症状を悪化させるようなことがあってはなりません。したがって、面談の趣旨は「仮病を暴く」ことではなく、「本当に体調が悪いのであれば、業務負荷や勤務形態の見直しも含めて配慮を検討したい」という前向きな対応であるべきです。
また、本人が正直に話してくれた場合には、適切な対処につなげることができますし、もし話に整合性がなく不自然であった場合でも、その内容が今後の判断材料になることがあります。いずれにしても、事実に基づいて公正かつ丁寧に話を聞き取ることが、問題解決の第一歩となります。
診断書・産業医面談の活用と注意点
体調不良による欠勤や遅刻・早退が続く場合、面談だけで判断が難しいこともあります。その際は、医師の診断書や産業医の面談を活用することが効果的です。会社としては、社員の健康状態を客観的に把握し、適切な労務管理を行うためにも、こうした医療専門家の意見に基づいた対応が求められます。
まず診断書についてですが、単に「診断書を出してください」と求めるのではなく、背景を丁寧に説明することが重要です。たとえば、「今月だけで欠勤が7日間、遅刻と早退が複数回あります。会社としても体調が心配ですので、医師の診断を確認させていただけませんか」と伝えることで、本人にも納得感を持ってもらいやすくなります。
また、就業規則で「3日以上の連続欠勤には診断書の提出を求める」などの規定がある場合には、その根拠を提示して正式に求めることも可能です。こうしたルールの存在は、対応の透明性を保つ上でも有効です。
一方、産業医面談は、より実務的・現場に即した判断を得る手段として有用です。業務内容を把握している産業医であれば、体調と業務負荷のバランスを適切に評価し、復職や勤務継続の可否について具体的な意見を示してくれます。特に、出社はしているものの業務に支障が出ているケースや、診断書の内容に疑問を持った場合などに活用すると効果的です。
注意点として、診断書が提出された場合は、原則としてその内容を尊重し、体調不良を前提とした対応を取る必要があります。疑わしいと感じたとしても、他の医師や産業医の意見がない限り、その診断内容を否定することは原則として避けるべきです。万が一、産業医の判断や追加の医師意見が診断書と矛盾する場合には、双方の根拠を慎重に比較検討し、信頼性の高い意見に基づいて対応方針を決定する必要があります。
実務対応:体調不良と判断した場合の進め方
面談や診断書、産業医の意見を踏まえ、社員が実際に体調不良であると判断できた場合、会社としてはその健康状態に配慮した対応が求められます。これは労働契約や安全配慮義務の観点からも当然のことです。
まず考えるべきは、勤務の継続が可能かどうかという点です。たとえ断続的にでも出社しているとしても、業務に大きな支障がある場合には、休職を検討する必要が出てきます。就業規則に則り、一定の欠勤が続いた場合に休職を開始する運用が定められていれば、それに従って対応します。
また、休職には期限が設けられていることが多く、その間に回復が見込めなければ復職は難しくなることもあります。復職にあたっては再度の診断書や、場合によっては産業医の判断を求めることも想定されます。業務遂行能力の確認や業務内容の調整などを含め、慎重に進めていくことが必要です。
一方で、体調不良が一時的であり、復調の見込みがある場合には、業務負担の軽減や時短勤務、在宅勤務の導入など柔軟な働き方を検討する余地もあります。こうした対応は、業務を完全に停止することなく、本人の体調と職場の両立を図る手段として有効です。
いずれにしても重要なのは、会社として「体調不良である」と判断した以上は、それを前提とした誠実な対応を取ることです。本人の就労意欲や生活状況にも配慮しつつ、会社として無理のない形での継続的な就労をサポートする姿勢が、信頼関係を維持し、長期的には職場全体の安定にもつながっていきます。
仮病が発覚した場合の現実的な対応
面談や診断書の確認、産業医の意見聴取などを経て、最終的に「これは仮病である」と明確に判断できた場合、会社としては毅然とした対応が求められます。ただし、この段階に至るケースはそれほど多くありません。多くの場合、本人が嘘を突き通せずに出社しなくなったり、自主的に退職したりすることが多いためです。
それでもなお、明確な仮病が確認された場合には、厳重注意や懲戒処分といった措置が考えられます。特に、会社を欺く行為が明らかであり、給与の不正受給や職場秩序の混乱を招いている場合には、処分の正当性がより強く認められることになります。ただし、その前提としては、事実関係の裏付けが明確であることが不可欠です。
具体的な対応としては、まずは本人に対して事実確認の面談を実施します。この際も、感情的にならず、あくまで事実を淡々と確認する姿勢が重要です。仮病であることを本人が認めた場合は、その内容を文書に残し、後の対応の根拠とするようにします。逆に否定された場合でも、確認された事実や経緯については社内で適切に記録しておきましょう。
懲戒処分を検討する際は、就業規則における規定に照らして処分内容を決定します。無断欠勤や虚偽報告、不正受給などの項目が該当する可能性が高く、事案の重大性によっては減給や出勤停止、さらには懲戒解雇にまで至るケースもあります。ただし、懲戒解雇は最も重い処分であるため、慎重な手続きと証拠の確保が不可欠です。
仮病という行為は、会社との信頼関係を大きく損なうものです。だからこそ、十分な事実確認と公正な手続きを経たうえで、適切な対応を行うことが求められます。また、他の社員への影響も考慮し、職場全体の秩序を守るという観点からも、曖昧な対応を避けるよう心がけましょう。
まとめ:決めつけず、丁寧に事実を積み上げる姿勢を
本当に体調不良なのか、それとも仮病なのか。そうした疑問が生じた場合でも、企業側がまず心がけるべきは、決めつけるのではなく事実を丁寧に確認していく姿勢です。社員の申告に対して疑いの目を向けることは、職場の信頼関係を損ねかねませんが、何の検証もなく鵜呑みにすることも、適切な労務管理とは言えません。
日々の勤務状況や勤務態度を観察し、欠勤や遅刻・早退の理由や頻度を記録する。必要に応じて面談を行い、診断書の提出や産業医の関与を求める。そうした一つひとつの積み重ねが、最終的に判断の精度を高め、正当な対応につながっていきます。
体調不良が事実であれば、安全配慮義務を果たす観点からも、適切に休養を取らせる必要がありますし、場合によっては休職措置を検討すべきです。一方、仮病が明確になった場合は、信頼関係を損なう行為として、社内規定に則った対応を取ることが求められます。
いずれのケースでも、感情的な対応を避け、あくまで事実に基づいた判断と行動を心がけることが、企業としての信頼性と職場秩序の維持に不可欠です。企業側が冷静かつ丁寧に向き合うことで、社員本人にも納得感のある対応ができ、結果として職場全体の健全な運営にもつながっていきます。