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ミスの理由が分からない社員への正しい対応法|教育・配置転換・退職勧奨までの実践ガイド

動画解説

https://youtu.be/CJuhNKXwMiI

ミスの理由が分からない社員への適切な対応とは

 職場において「なぜミスをしたのか自分で分からない」という社員に直面した経験のある経営者の方も多いのではないでしょうか。ミスが起きた際、本人がその原因を把握できれば、反省や改善につながり、再発防止の一歩となります。しかし、そもそも原因に気づけない、気づこうとしてもうまく整理できない場合、成長の機会そのものが失われてしまいます。

 業務上のミスが続くと、企業側としては当然ながら業務効率や生産性への懸念が強まりますが、実は当の本人にとっても深刻な問題です。ミスをしても理由が分からない状態が続くと、本人の中には「なぜ自分ばかりうまくいかないのか」という不安や自信喪失が積み重なり、次第に仕事に対するモチベーションも低下していきます。

 また、周囲からの指導や叱責が続けば、「何を言われているかも分からない」「どう直せばいいのかも分からない」という状態に陥り、精神的に追い詰められてしまうこともあります。これは本人にとって非常に辛い状況でありながら、企業にとっても業務品質の低下やチーム内の不協和といったリスクを伴います。

 したがって、ミスの理由を本人が理解できないケースでは、本人任せにするのではなく、企業側が積極的に関与し、適切な支援やマネジメント体制を整えることが重要です。その第一歩は、「この状況は本人のやる気の問題ではなく、能力や理解力の課題である可能性が高い」と認識することです。

自力での改善が難しい社員に必要な視点

 社員が何度もミスを繰り返し、その理由を自分で説明できないような場合、「自分で反省して改善してくれればいいのに」と思いたくなるのが正直なところでしょう。しかし、実際にはこのような社員に「自力で改善してほしい」と期待すること自体が無理なケースも少なくありません。

 というのも、ミスの理由が分からないという状態は、本人の努力不足や怠慢によるものではなく、根本的に「能力の問題」であることが多いためです。理解力や判断力、あるいは状況を整理する力が不足している場合、本人がいくら頑張ってもミスの原因を的確に掴むことは難しいのです。

 このような社員は、自分自身でもなぜうまくいかないのかが分からず、改善の糸口を見いだせないまま、ただ叱られ続けるという悪循環に陥りがちです。結果として、「頑張ってもダメなんだ」と感じてしまい、意欲をなくしていくこともあります。外から見ると「やる気がない」と映ることもありますが、実際には「うまくいかないからやる気をなくしている」だけ、というケースも多く見られます。

 したがって、こうした社員には「自己解決を求める」のではなく、「そもそも一人で改善できる段階にはない」と捉える視点が必要です。そのうえで、何ができていないのか、どこでつまずいているのかを周囲が丁寧に見極め、本人に代わって原因を整理し、具体的な行動指針を示す支援が求められます。

 企業にとっては手間のかかる対応ではありますが、このような視点を持つことが、ミスを繰り返す社員との関係を前向きに築いていく第一歩となるのです。

やる気の問題ではなく能力不足が根底にある場合

 社員のミスが続くと、つい「やる気がないのではないか」と疑ってしまうことがあります。しかし実際には、多くのケースで問題の本質は「やる気」ではなく「能力不足」にあります。つまり、本人は頑張っているにもかかわらず、必要な知識やスキル、判断力が足りておらず、結果としてミスが発生しているのです。

 このような能力の不足は、経験や基礎知識の積み重ねによって徐々に解消される可能性もありますが、そこに至るまでには時間と手厚いサポートが必要です。最初からうまくできることを前提にして任せてしまうと、本人は適切なやり方が分からないまま戸惑い、ミスを繰り返して自信を失い、周囲の信頼も失っていくという悪循環に陥ってしまいます。

 また、能力不足による失敗が続くことで、結果的に本人のモチベーションも低下していきます。これは「やる気がない」ように見える状態ですが、根本的には「できないからやる気がなくなる」のであって、「やる気がないからできない」わけではありません。この順序を取り違えると、適切な対応ができず、状況を悪化させてしまう恐れがあります。

 したがって、表面的な態度や結果だけを見て「努力していない」と判断するのではなく、その背景にある能力的な課題を正確に把握する視点が必要です。そして、本人がどの段階でつまずいているのかを明確にし、必要に応じて業務を細分化したり、指示をより具体的にしたりといった対応が求められます。

 能力に応じた育成を行うことで、少しずつでも成長の兆しが見えてくれば、自然と本人のやる気も回復し、業務にも前向きに取り組めるようになる可能性があります。焦らず段階を踏みながら、本人の能力に寄り添ったサポートをしていくことが大切です。

丁寧な観察と具体的な指導で育成する

 ミスの原因が分からない社員に対しては、「しっかり教えること」が不可欠です。ただし、単に言葉で説明するだけでは伝わらないことも多く、丁寧な観察と、状況に応じた具体的な指導を積み重ねていく必要があります。

 まず重要なのは、本人の行動を観察することです。どの場面で、どのように作業し、どこで間違っているのかを把握しなければ、適切な指導はできません。誤りを見つけたときには、その場で「何がいけなかったのか」「どうすればよかったのか」を具体的に伝えることが求められます。抽象的なアドバイスではなく、本人がすぐに実践できるようなレベルで伝える必要があります。

 また、理解力に課題がある社員に対しては、「やって見せる」ことも非常に効果的です。口頭での説明だけでは理解が追いつかない場合でも、目の前で動作を見せることでイメージが掴め、ミスの原因や正しい手順が伝わりやすくなります。

 このような具体的な指導を続けることで、もし本人に改善の余地がある場合は、徐々にミスが減り、自分で原因を理解できるようになることもあります。そうなれば、指導者が常に付き添わなくても業務をこなせるようになり、本人に任せる範囲を広げていくことが可能になります。

 もちろん、これには相応の手間と時間がかかります。現場の上司や先輩社員にとっては、自分の業務を抱えながらの対応になるため、大きな負担となることも少なくありません。しかし、それでも丁寧な観察と具体的な指導を地道に重ねることが、本人の成長を促し、企業全体の安定した業務遂行につながるのです。

教育担当者への理解とサポートの重要性

 ミスが多く、かつその理由が分からない社員に対して丁寧な教育指導を行うことは、現場の管理職や先輩社員にとって非常に大きな負担となります。自分の仕事をこなしながら、つきっきりで指導やフォローを求められる状況が続けば、精神的にも肉体的にも疲弊し、職場全体の士気に悪影響を及ぼす恐れがあります。

 経営者の中には、「誰にでも苦手なことはある」「もう少し様子を見よう」と穏やかな対応を促す方もいますが、実際にその社員と日々一緒に働いている現場の声は、より切実で深刻なことが多いものです。「何度教えても覚えてくれない」「自分の業務が後回しになる」といった不満が積もれば、「あの人とはもう一緒に仕事したくない」「辞めさせてほしい」といった声が上がってくるのも無理のないことです。

 だからこそ、教育を担う現場の社員に対しては、その努力と苦労をしっかり理解し、企業として明確にサポートの姿勢を示すことが重要です。たとえば、業務量を一部調整したり、教育のための時間を確保する制度を設けたり、評価制度に教育担当としての貢献を反映させるなど、物理的・制度的な支援を行うことが望まれます。

 また、金銭的な報酬による対応が難しい場合でも、「現場の状況をきちんと把握している」「教育の労力を正当に評価している」というメッセージを、経営者自らが言葉にして伝えることには大きな意味があります。こうした配慮がなければ、せっかく育成に尽力している社員が先に疲弊し、離職につながるリスクすら生じかねません。

 人を育てるには時間も労力もかかります。それを現場に任せきりにせず、経営層がその現実に目を向け、支える姿勢を明確に示すことが、職場全体の信頼感と協力体制を築くうえで欠かせないのです。

マニュアルや研修だけでは解決しないこともある

 社員に対して業務マニュアルを整備したり、研修の機会を提供したりすることは、育成の基本として非常に有効です。しかし、ミスの理由が分からない社員や、理解力に課題のある社員に対しては、マニュアルや研修だけでは十分な対応にならない場合が多々あります。

 たとえば、「マニュアル通りにやっているつもりなのに、なぜかうまくいかない」「研修で学んだ知識を現場で活かせない」といったケースは珍しくありません。これは、本人にとってマニュアルの内容を読み取る力が不足していたり、学んだ情報を実務に結びつける能力が十分に育っていなかったりすることが原因です。

 こうした社員に対しては、「マニュアルを渡したからもう教えた」「研修を受けたんだからできるはず」といったスタンスでは通用しません。むしろ、マニュアルや研修の内容を、実際の業務にどう当てはめるのかを、具体的に付き添って一緒に確認していくような支援が求められます。

 また、ミスの理由が自分で分からないという社員は、「なぜマニュアル通りにやってもうまくいかないのか」という点すら理解できず、余計に混乱してしまうこともあります。そのような状況では、育成担当者が一つひとつ行動を確認し、どこでズレが生じているのかを見つけ出して指摘し、繰り返し教えていく作業が必要になります。

 もちろんこれは手間も時間もかかるため、現場にとっては大きな負担となるでしょう。しかし、それを省略して本人任せにしてしまうと、結局はミスが改善されず、職場全体の業務効率や信頼関係にも悪影響を及ぼすことになります。

 マニュアルや研修は、あくまで土台にすぎません。社員の理解度に応じて、そこからどう支援を広げるかが、育成の成否を左右する大きなポイントとなるのです。

本人の適性を見極めた業務の見直し

 どれだけ丁寧な教育指導やサポートを行っても、業務の性質と本人の適性が著しくかけ離れている場合、根本的な改善が難しいことがあります。このようなケースでは、教育での改善を続けるだけでなく、そもそも「その業務が本人に向いているのか」を見直す視点が必要になります。

 適性とは、単にスキルや知識の有無ではなく、「その仕事に対する自然な理解力や習熟のしやすさ」といった本質的な資質を指します。業務にどうしても馴染めない社員に対して、無理に同じ仕事を続けさせることは、本人にも周囲にも大きな負担を強いる結果になります。本人が頑張っても成果が出ず、周囲もその対応に疲弊し、職場全体にストレスが蓄積していくのです。

 このような状況を放置してしまうと、社員が精神的に追い詰められ、適応障害などの健康被害につながるリスクも生じます。結果的に長期の休職や退職、さらには職場でのトラブルや訴訟リスクに発展するおそれもあります。

 そうした事態を未然に防ぐためには、早い段階で「他により適した業務はないか」を検討することが大切です。たとえば、現在の業務ではミスが頻発していても、別の作業や職種であれば、本人の持つ別の能力が発揮できることもあります。特に中小企業では業務の幅が狭くなりがちですが、社内の業務を柔軟に再構成することで、新たな適性を見出す余地がある場合も少なくありません。

 仕事の適性を見極めるという視点は、単に「この社員をどうにか戦力にしたい」という思いを超えて、「本人のキャリア形成」や「長期的な組織の健全性」を守るためにも重要な判断です。教育だけでは解決が難しいと感じたときには、業務自体の見直しを視野に入れるべきタイミングかもしれません。

適性がない場合の配置転換や転職の検討

 業務に対する適性が明らかに低く、教育や業務の見直しを行っても根本的な改善が見込めない場合、次に検討すべきは「配置転換」や「転職」の選択肢です。これは、単に戦力外として処遇するということではなく、本人の可能性を最大限に引き出すための前向きな判断であるべきです。

 職場にはさまざまな業務があります。現在担当している仕事ではミスが多く成果が出せない社員でも、他の業務であればスムーズに対応できる可能性があります。たとえば、対人業務でミスが多い社員が、データ入力や単純作業では安定して成果を上げるといったケースもあります。こうした「別の角度から見た能力」に注目することが、配置転換の第一歩です。

 ただし、企業の規模や業務の種類によっては、社内に適切な配置先が見つからない場合もあります。その場合、無理に同じ職務を続けさせることは、本人の成長を妨げるだけでなく、精神的にも大きな負担を強いることになりかねません。

 そうした状況においては、本人の意思も尊重しつつ、「転職」という選択肢を検討することが必要です。これは、本人の尊厳を損なうことではなく、「他の環境で能力を発揮してもらう」ための建設的な提案です。現職に固執させることで、本人の将来を狭めてしまうことの方が、かえって非情な対応になってしまうこともあるのです。

 また、転職を促すにあたっては、「辞めさせる」方向性で進めるのではなく、あくまで本人と十分に話し合い、納得の上で円満な合意退職を目指すことが重要です。その際、退職勧奨の進め方や説明の仕方には慎重を要し、誤解やトラブルが生じないよう、誠実かつ丁寧な対応が求められます。

 本人にとっても、向いていない仕事で苦しみ続けるよりも、自分に合った職場を見つけて能力を発揮できる道を探ることが、長いキャリアの中で大きなプラスとなるはずです。企業側も、そうした視点に立った判断が、結果として組織の健全性と社員の幸福につながることを理解しておくべきでしょう。

退職勧奨を行う際に必要な誠実な対応

 社員が業務に適応できず、配置転換も困難な場合、最終的に「退職勧奨」を検討することがあります。これは、解雇とは異なり、あくまで本人との話し合いを通じて合意のうえで退職してもらう方法ですが、進め方を誤れば重大なトラブルに発展しかねません。だからこそ、退職勧奨を行う際には、何よりも「誠実さ」と「説明責任」が求められます。

 経営者の中には、「本人を傷つけないように」との配慮から、退職の理由をぼかしたり、事実と異なる説明をしたりするケースもあります。例えば、「事業縮小のため」「組織再編の都合」など、実際とは異なる理由で退職を促す場面です。しかし、このような対応はかえって不信感を招き、「騙された」「本当は能力の問題だったのに理由を隠された」と、後に紛争の火種になる恐れがあります。

 現代においては、「本音を隠して相手のプライドを守る」という発想は、かえって逆効果になりがちです。むしろ、事実に即した説明を丁寧な言葉で伝え、相手を尊重する姿勢を明確に示すことが、最も信頼を得やすい対応と言えるでしょう。

 具体的には、「業務上の指導を継続してきたが、改善が見られず、これ以上の対応が難しい」「別の業務への配置も試みたが適応が見られなかった」といった、これまでの経緯を事実ベースで説明し、退職を提案する理由に納得してもらう努力が不可欠です。そして、その場限りで終わらせるのではなく、本人の疑問にも丁寧に答えることで、誠意が伝わります。

 また、本人の同意を得る過程では、今後の生活設計や転職支援など、一定の配慮を示すことも有効です。退職条件についても十分に話し合い、できるだけ納得感のある形で退職が成立するよう心がけましょう。

 退職勧奨は、極めて慎重な対応が必要な領域です。可能であれば、こうした対応を進めるにあたっては、労務に詳しい弁護士のサポートを受けながら進行することをおすすめします。事前にリスクを把握し、冷静かつ誠実な対応をとることが、企業と本人双方にとって納得のいく結果を導くカギとなります。

試用期間中の見極めと本採用拒否の判断

 社員の業務適性や理解力に問題がある場合、なるべく早い段階で見極めを行うことが、企業にとっても本人にとっても重要です。特に「試用期間」は、その適性を確認する貴重な期間であり、本採用を前提とするか否かを判断する最後のチャンスでもあります。

 試用期間中に問題が見つかった場合、まずはその社員に対して適切な教育や指導を実施し、その上で改善が見られないようであれば、本採用を見送る「本採用拒否」を検討することが現実的な対応となります。これは形式上「解雇」にあたるものの、一般的な解雇よりは法的ハードルが若干低く、適切な理由と手続きをもって実施すれば、企業側にとってもリスクを最小限に抑えることが可能です。

 本採用拒否を正当化するためには、あらかじめ試用期間の趣旨や基準を明確に伝えておくことが重要です。また、指導内容や本人の対応、ミスの状況などを記録として残し、「客観的かつ合理的な理由」があったことを説明できるようにしておく必要があります。

 よくある誤解として、「まだ試用期間中だから、問題があれば簡単に辞めさせられる」という認識がありますが、実際には試用期間中であっても解雇には正当な理由が求められます。ただし、いわば「80cmのハードルが必要な本採用後の解雇」に比べ、「60cmのハードル」で済むのが試用期間中の対応です。決してハードルがゼロではないということを、経営者として認識しておく必要があります。

 また、試用期間中に「本人に向いていない仕事」であることが明らかになった場合、退職勧奨を行って円満な合意退職に導くという選択肢も検討できます。試用期間であれば、本人の納得も得やすく、長期的なトラブルに発展しにくいという利点もあります。

 重要なのは、問題が表面化してから慌てて対応するのではなく、「試用期間の間に適切な評価と判断を行う」という意識を企業として持つことです。判断を先延ばしにすることで、企業側がより大きなリスクを抱える結果にもなりかねません。

 試用期間中の対応に迷いがある場合は、トラブルに発展する前に、労務に精通した弁護士に相談しながら進めることを強くお勧めします。

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