問題社員

通常のコミュニケーションなのに“ハラスメント”と騒ぐ社員への適切な対処法とは? パワハラ・セクハラと誤解されない伝え方と実践的対応

動画解説

通常のコミュニケーションが「ハラスメント」とされる現代の職場環境

 職場での通常のやりとりが、「ハラスメントだ」と主張される場面が増えています。特に上司から部下への指導やフィードバックが対象となりやすく、他の社員には問題のない会話であっても、ある社員から「パワハラだ」と受け取られてしまうケースもあります。こうした状況に直面すると、「一体どこまで気を遣わなければいけないのか」と悩む経営者や人事担当者も多いでしょう。

 「自分がハラスメントだと思ったら、それはハラスメントだ」といった主観的な主張は、客観的な判断と乖離していることもあります。たとえ厚生労働省の定義に照らして問題がないと説明しても、相手の納得を得られないことも珍しくありません。現代の職場では、「常識」や「普通の感覚」が通用しない場面もあるのです。

「問題社員(一般にモンスター社員とも言われている。)」への向き合い方とは

 こうした主張をする社員に対しては、「面倒だから」と距離を取ってしまいたくなるかもしれません。しかし、それでは問題は解決しません。むしろ業務指示が出しにくくなり、注意や指導もしづらくなってしまうため、職場全体の機能が損なわれる危険性があります。

 まず大切なのは、対話を放棄せず、しっかりと向き合うことです。状況によっては、「これは本当にパワハラやセクハラなのか」と自問することも必要ですが、「該当しないから問題ない」と片付けてしまっては、本質的な改善にはつながりません。受け取り方は人によって異なる以上、その社員がより良く働ける環境づくりを意識することが、マネジメントの本来の役割です。

指導を避けると起きる業務への悪影響

 問題社員に対して、指導や会話を避けるようになると、業務に直接的な支障が出始めます。指示を出すのが億劫になったり、注意を躊躇したりすることで、本来なら防げたミスが発生し、チーム全体の士気や効率にも影響を及ぼすことになります。

 また、育成や教育の観点からも放置は大きな損失です。若手社員や新入社員にとって、上司からのフィードバックは成長の機会となるはずです。それを避けるようになってしまっては、組織としての機能が停滞し、人材が育たない職場になってしまいます。

「パワハラ・セクハラでなければ問題ない」は正しいのか

 「これはハラスメントには該当しないから問題ない」と考えるのは、一見正論のように思えます。しかし、それだけで職場の問題が解決するわけではありません。法律上の「セーフ・アウト」を基準にしても、社員との信頼関係や職場の空気は改善しないからです。

 むしろ、「どうすればより良い伝え方ができるのか」「相手に誤解なく伝わる表現とは何か」といった前向きな発想が、職場環境の改善には不可欠です。パワハラやセクハラに該当するかどうかは最低限の基準に過ぎず、それ以上に「より良く働いてもらうためにはどう接するべきか」を考える姿勢が求められます。

受け止め方の違いに対応するマネジメント思考

 社員一人ひとりの価値観や受け止め方が異なる今、マネジメントには柔軟性と戦略性が求められます。「この人にはどう対応すれば、力を発揮してもらえるのか」という視点が、組織運営の鍵となるのです。

 人手不足が深刻化するなか、「厄介だから辞めてもらって構わない」と考えるのは短絡的です。難しい相手であっても、適切な対応によって成果を出せる可能性があります。もし社内に適任者がいない、対応の方法が分からないと感じた場合は、専門家である弁護士に相談することを検討しましょう。法律論にとどまらず、具体的な伝え方や会話の順序など、実践的な指導を受けることが可能です。

「評価」ではなく「事実」をもとに話す重要性

 「通常のコミュニケーション」「ハラスメント」といった言葉は、いずれも評価にすぎません。評価は主観を含み、人によって捉え方が異なるため、話が噛み合わなくなる原因になります。対して、「いつ・どこで・誰が・誰に・何を・どのように言ったのか」といった5W1Hに基づく内容は客観的な「事実」として共有可能です。

 問題がこじれている場合ほど、会話のテーマを評価ではなく事実にシフトする必要があります。「この発言が通常のコミュニケーションに該当するか否か」という議論ではなく、「実際にどんな発言がなされたのか」をまず特定することが重要です。弁護士に相談する際も、事実が明確でなければ適切なアドバイスを受けにくくなってしまいます。

会話の場を整えることが問題解決の第一歩

 問題社員との対応が必要な場合、立ち話や何気ないやりとりの中で解決しようとしてもうまくいかないことが多いです。特に問題がこじれているときには、会議室など正式な場を設定し、時間を取ってしっかりと面談を行うことが必要です。

 「そんな大げさな」と思う方もいるかもしれませんが、非日常的な場を作ることで、お互いの意識を引き締める効果があります。また、今までのやり方で成果が出なかったからこそ、新しい対応が求められるのです。正式な場を整えたうえで、落ち着いて事実に基づいた話し合いを進めましょう。

適任者が対応することで生まれる効果

 コミュニケーションに課題のある社員に対応するには、適性のある担当者を選ぶことが重要です。人事や上司の中には対話が苦手だったり、経験や知識が不足していたりする方もいます。そうした場合、「上司なんだから対応して当然」と任せるのではなく、より適した人材に交代する判断も必要です。

 特に対応経験の少ない管理職が相手に圧倒されてしまうと、対応を避けるようになり、マネジメントの機能が失われてしまいます。場合によっては社長が自ら対応にあたることも検討すべきです。規模の小さい企業では、最終的にはトップが動くことで問題の改善が図られることも多くあります。

弁護士への相談は「判例」だけでなく「日本語の使い方」まで

 弁護士に相談するというと、法律や判例の話だけを想定しがちですが、実際には「どんな日本語で、どのように伝えるべきか」といった具体的なコミュニケーション技法のアドバイスも受けることが可能です。

 重要なのは、「これはパワハラですか?」といった評価を問うのではなく、「この社員に対して、どのような言葉で、どの順序で説明するのが良いでしょうか?」という前向きな相談を行うことです。弁護士は実際の会話の流れや、想定される相手の反応まで考慮したアドバイスを提供できます。こうした視点があれば、場当たり的ではない戦略的な対応が可能になります。

オンラインでの継続的な法律相談の活用法

 対面での法律相談は時間や距離の制約があるため、近年ではZoomやTeamsなどを使ったオンライン相談の活用が広がっています。例えば、30分程度の短い打ち合わせを頻繁に設定することで、都度問題に対応しやすくなり、トラブルが大きくなる前に対処できるようになります。

 北海道から沖縄まで、場所に関係なく専門家とつながることができるため、相談のハードルも大きく下がります。日常業務の中でちょっとした相談をしたい時にも、メールや電話では伝えづらい微妙なニュアンスを伝えることができるのが、オンライン面談の強みです。継続的な連携を取りながら、柔軟に対応していく体制を整えましょう。

職場のコミュニケーション問題を改善するために必要な視点とは

 他の社員とは問題なく進んでいる会話でも、特定の社員から「ハラスメントだ」と指摘されるような場合、その都度「問題か否か」で判断するのではなく、「どうすればこの人と円滑に仕事を進められるか」という観点が必要です。

 職場の改善はマネジメントの本質であり、究極的には経営者の責任です。表面的な法律論に終始するのではなく、実際にどんな言葉で、どういう順番で伝えれば効果的かを考え、具体的な行動につなげていくことが求められます。

 もしその手法がわからない、適切に対応する自信がない場合は、ぜひ弁護士への相談を検討してください。

 四谷麹町法律事務所では、問題社員への対応に関して、個別の注意指導の仕方や、懲戒処分の進め方、社員への対応方法について具体的なサポートを行っています。訴訟や労働審判になる前の段階から適切な対応を行うことで、企業側の負担を軽減し、トラブルの早期解決が可能となります。問題社員の対応でお悩みの際は、会社側専門の経験豊富な四谷麹町法律事務所にぜひご相談ください。

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