2025.06.16
信頼して仕事を任せたのに成果が出ない社員への正しい対処法とは? 任せ方の誤解とマネジメントの基本

目次
動画解説
信頼して任せたのに成果が出ない社員への対処に悩む経営者へ
社員を信頼して仕事を任せたのに、期待した成果が出なかった──このような経験を持つ経営者や管理職の方は少なくありません。特にポジティブな気質の経営者ほど、「まずは信頼から」と仕事を任せがちですが、残念ながらその思いが結果に結びつかないケースも多くあります。
相談を受ける中でも、「信頼して任せたのに裏切られた気分だ」「まさか成果がここまで上がらないとは」といった声が少なくありません。ときには不正行為が発覚するなど、任せたこと自体を悔やむような事案もあります。では、このようなとき、経営者としてどのように考え、どのように対応すべきなのでしょうか。
成果が出ない原因は「社員」ではなく「任せた側」にある
まず前提として理解しておきたいのは、結果責任は最終的には上司、そして経営者にあるということです。なぜなら、任せる相手を選び、その条件や支援体制を整えるのは、管理職や経営者の仕事だからです。
「部下がうまくやらなかった」という話は、厳密に言えば「うまくやれない相手に任せてしまった」というマネジメント上の誤りである可能性が高いのです。部下の力不足を嘆く前に、その人選や支援の仕方が適切だったかを振り返る必要があります。
信頼と成果は別物──「任せ方」こそが問われる
「信頼しているから任せた」という姿勢は、美徳のようにも見えますが、実務の世界では結果を伴ってこそ意味があります。信頼と成果は必ずしも一致しません。信頼とは感情であり、成果は事実です。
社員が任された業務で成果を出すためには、信頼だけでなく、能力・経験・支援体制など、様々な条件が整っている必要があります。単に信頼して任せるだけではなく、「どのように任せるか」「何を補完すべきか」といった設計が不可欠です。
部下の能力に応じた指示と支援の必要性
業務を任せる際には、相手のスキルや判断力に応じて、どれほどの裁量を与えるかを調整することが求められます。全体像を把握して臨機応変に判断できるタイプの社員であれば、ある程度の自由を持たせても問題は起きにくいでしょう。
しかし、業務遂行に不安がある社員であれば、細かな指示や段階的な説明が必要です。場合によっては、マイクロマネジメント気味に進めた方が円滑に業務が進むこともあります。これは「任せていない」のではなく、「成果を出すために適切に支援している」という考え方です。
「任せる=放任」ではない──丸投げと育成の違い
任せるという行為を、「完全に放任すること」だと誤解してしまうと、かえって逆効果になります。指示や支援がなければ不安を感じる社員も多く、結果的に「丸投げされた」と感じてしまうこともあります。
また、育成の一環として仕事を任せる場合と、成果を重視して任せる場合とでは、求められるアプローチが異なります。育成を目的とするならば、失敗や試行錯誤は想定内です。逆に、確実な成果を求めるのであれば、そのための環境整備や綿密なフォローが必要不可欠となります。
社員の自律性を期待する前に確認すべきこと
「自分の頭で考えて動ける人材が欲しい」「裁量を与えて成長してもらいたい」といった願望は、経営者や管理職に共通するものです。しかし、実際に任せる前に、その社員が本当に自律的に動ける能力を持っているかどうかを見極める必要があります。
「できます」「やります」と本人が口にしていたとしても、それが即ち実行力を伴うとは限りません。特に上司や経営者に言われたことであれば、断れずに「やる」と返答してしまう部下も多くいます。だからこそ、任せる前に過去の実績や論理的思考力、判断力などを具体的にチェックすることが大切です。
成果重視と育成重視──経営判断としての切り分け
仕事を任せる際には、その目的が「成果の獲得」なのか「人材の育成」なのかを明確に分けて考える必要があります。育成目的であれば、成果が一時的に伴わないことも想定内であり、むしろ失敗を通じて成長してもらうという発想になります。
一方で、会社の重要プロジェクトや期限のある業務など、確実に成果を求められる場面では、育成ではなく実行力を最優先すべきです。このように、目的に応じて判断基準を明確に持つことで、任せ方を誤らずに済みます。
任せた社員が能力不足だった場合の対応とは
任せた後に「この社員では荷が重すぎた」と判明した場合は、早急にフォロー体制を整える必要があります。具体的には、業務の進捗確認をこまめに行い、必要であれば段階的に指示を出す、あるいは業務範囲を一時的に縮小するなどの対応を取りましょう。
また、本人の能力に合わせて仕事の進め方を見直し、やり直すことも決して後退ではありません。失敗の責任を追及するよりも、「どうすればこの人が成果を出せるか」という視点に立つことが、組織全体のパフォーマンス向上にもつながります。
成果が出なかったときの「やり直し方」を仕組み化する
任せた業務がうまくいかなかった場合の「やり直し方」をあらかじめ社内で仕組み化しておくと、トラブル時の対応がスムーズになります。たとえば、「一定期間で進捗報告を義務づける」「中間レビューを実施する」「第三者のアドバイザーを配置する」といったルールを設けることで、軌道修正が容易になります。
こうした仕組みがあることで、任せる側も過度なストレスを感じることなく、結果に責任を持ちながらも柔軟なマネジメントが可能になります。
マネジメントの本質は「誰に、何を、どのように」任せるかの設計
マネジメントの本質は、「信頼して任せるか否か」ではなく、「誰に、何を、どのように任せるか」という設計力にあります。同じ業務でも、任せる相手や支援体制によって成果は大きく異なります。
経営者や管理職は、社員の能力・特性・業務内容を総合的に捉えながら、最も成果が出やすい任せ方を選択する必要があります。「成果を出すために何が必要か」「育成を重視するならどの範囲まで許容するか」などを戦略的に判断することが求められます。
信頼に頼りすぎない現実的な人材配置と経営の視点
信頼という言葉は時に都合よく使われがちですが、経営においては「信頼する」ことと「任せられるかどうか」は必ずしも一致しません。重要なのは、信頼を前提としつつも、成果につなげるための現実的な人材配置と役割設計です。
社員を信じること自体は悪いことではありません。しかし、「信頼したのに裏切られた」と感じる前に、「自分がこの社員を適切に評価し、任せる準備を整えていたか」を冷静に見つめることが、健全な経営には不可欠です。
四谷麹町法律事務所では、人事マネジメントに関する経営者からのご相談に応じ、社員の業務適性判断や任せ方の設計、トラブル対応に至るまで、企業側の立場から実践的なサポートを提供しています。
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