勤務態度が悪く言動も乱暴な社員への適切な対処法とは?|マネジメントと法的対応を弁護士が解説

目次
- 1 動画解説
- 2 職場秩序を乱す社員がもたらす影響とは
- 3 経営者としての責任と初動対応の重要性
- 4 問題社員への注意指導の基本的な心構え
- 5 指導効果を高める面談の方法と注意点
- 6 抽象的な指摘では伝わらない:具体的な事実の提示を
- 7 「自分で考えさせる」は万能ではない
- 8 普段のマネジメントと整合性を取った指導を
- 9 言動を見極める力と情報把握の重要性
- 10 注意指導に必要な心構えと実践のための工夫
- 11 証拠の確保とその実務的な工夫
- 12 厳重注意書の意義と作成ポイント
- 13 配置転換・職務変更という選択肢
- 14 適切なタイミングでの懲戒処分がカギ
- 15 退職勧奨・解雇まで進む場合の注意点
- 16 マネジメントによる早期対応が企業を守る
動画解説
職場秩序を乱す社員がもたらす影響とは
言動が乱暴で勤務態度が悪い社員が職場にいると、組織全体の雰囲気が悪くなり、業務効率が大きく低下します。このような社員は、周囲の社員にも不快な言動や態度を取ることが多く、共に働く社員たちが「この職場は居心地が悪い」「もうこんなところで働きたくない」と感じるようになってしまいます。
ひどい場合には、「なぜ会社はこの社員を放置しているのか」「自分たちは守ってもらえていない」と不満を抱き、転職を検討する社員が出ることも珍しくありません。問題社員を放置することで、組織から人材が流出するという深刻な事態を招く可能性があるのです。
経営者としての責任と初動対応の重要性
問題社員への対応は、経営者としての重大な責任の一つです。「もう嫌だ」「この職場にいたくない」と社員たちが感じるような状況を作らないためにも、早期の対応が不可欠です。
特に重要なのは、勤務態度や乱暴な言動を「証拠の確保よりも先に」改めさせるという意識を持つことです。裁判や訴訟を意識すると、つい証拠集めを優先しがちですが、行動の是正こそが第一です。初期段階での放置や黙認は問題をエスカレートさせ、最終的には対応が難しくなる原因になります。
問題社員への注意指導の基本的な心構え
注意指導は、会社経営者および管理職の重要な業務の一部です。面倒だからと放置してしまうと、問題社員の言動がさらにエスカレートし、職場の秩序が崩れてしまいます。
中でも注意が必要なのは、管理職が対応を避けてしまうケースです。問題行動を指摘することが精神的な負担になるため、つい適当な対応で済ませてしまいがちですが、それでは問題が解決するどころか、さらに悪化してしまうこともあります。
問題のある社員に対して真摯に向き合ってくれる管理職を、経営者としてしっかりと認め、支える姿勢が重要です。
指導効果を高める面談の方法と注意点
注意指導を行う際には、相手としっかり向き合うための「面談」が非常に重要です。特に自席での軽い声かけでは、相手に真剣さが伝わらず、「そんなに重大な注意とは思わなかった」と受け流されてしまうこともあります。
最適な方法は、会議室に呼んで面と向かって話すことです。この場を設けることで、相手も「これは本気の注意だ」と感じ取り、行動の改善につながりやすくなります。また、相手の表情や声の調子などの非言語的情報も得られるため、指導効果が高まります。
遠隔地の社員であっても、ZoomやTeamsを活用してオンライン面談を行うことが可能です。面談を避けるのではなく、適切な手段を選びながら確実に実施していくことが重要です。
抽象的な指摘では伝わらない:具体的な事実の提示を
「勤務態度が悪い」「言動が乱暴だ」といった抽象的な表現だけでは、問題社員に本当に伝えたいことが伝わりません。特に、乱暴な言動が「無意識」である場合、本人には自覚がなく、「自分に対する嫌がらせではないか」と受け取られてしまうこともあります。
そのため、指導の際には「いつ、どこで、誰に、どのようなことを言った・やったのか」といった具体的な事実を伝える必要があります。いわゆる5W1Hを意識し、議論が空中戦にならないよう配慮しましょう。
抽象的な注意では効果が乏しいばかりか、指導者が怖がっている、逃げていると見なされ、問題社員から軽視されるおそれもあります。相手にとって耳の痛いことであっても、勇気をもって具体的に伝える努力が求められます。
「自分で考えさせる」は万能ではない
「本人の頭で考えさせている」「自分で気づいて変わってほしい」といった方針を取る経営者や管理職もいます。しかし、勤務態度が悪く、言動が乱暴な問題社員の場合、自発的に行動を変えられるだけの能力や意識が備わっていないことが多く、実際には効果が見込めないケースが少なくありません。
このようなタイプには、具体的な行動指示と、明確な指導が不可欠です。「何が問題だったのか」「どうすればよかったのか」を明確に伝えることが、行動を改めさせる第一歩になります。コーチングのようなアプローチは、あくまで一定レベル以上の社員に対して有効な手法であり、誰にでも通用するものではないことを理解すべきです。
普段のマネジメントと整合性を取った指導を
指導がうまく伝わらない背景には、普段のマネジメントとの整合性が取れていないという問題もあります。たとえば、問題社員の言動を見過ごしていた管理職が、ある日突然厳しい注意をすると、相手にとっては納得できないことが多いのです。「今まで黙認していたのに、なぜ急に」と反発され、トラブルに発展することもあります。
これは人事評価の場面でも同様で、実際の勤務態度と評価にギャップがあると、後から正当な指導がしづらくなります。管理職が適正な評価を避け、無難な点数をつけるケースもありますが、それでは企業としての正当な対応が困難になります。普段から問題行動を正しく見て、記録し、適切に対応することが重要です。
言動を見極める力と情報把握の重要性
注意指導を行うには、問題行動の事実を正確に把握しておく必要があります。「最近態度が悪いらしい」「何か評判が悪いようだ」といった曖昧な情報では、具体的な指導にはつながりません。
社員の行動を日々観察し、誰が、いつ、どこで、何をしたのかという情報を具体的に記録しておくことで、説得力のある注意が可能となります。また、社員は上司や経営者の視線を敏感に察知しています。「よく見てくれている」と感じられれば、言動も変わりやすくなります。マネジメントとは、単なる管理業務ではなく、正確な観察と分析に基づいた対応が求められる行為なのです。
注意指導に必要な心構えと実践のための工夫
問題社員に対する指導では、「逃げない」ことが大前提です。注意指導は管理職や経営者にとって重要な職務の一つであり、面倒だからと先送りにすることは職場全体に悪影響を及ぼします。
一方で、注意の際に過剰反応してしまうことも避けなければなりません。冷静に、正確な情報に基づいた注意を行うには、事前の準備と練習が大切です。必要であれば、社内でロールプレイを行ったり、専門家と模擬面談をしたりすることも有効です。
実際に注意を行う場では、感情的にならず、上司役を演じる俳優のように冷静に振る舞う意識を持つと、結果として説得力のある指導につながります。
証拠の確保とその実務的な工夫
注意指導は通常、口頭で行われますが、将来的なトラブルに備えて一定の証拠を残しておくことも重要です。指導内容をメモしておいたり、顧問弁護士への報告メールを送ったりするだけでも、記録として有効に働く場合があります。
また、重大な問題行動がある場合には、顛末書や事情説明書などを提出させることもあります。ただし、「始末書」という言葉には懲戒処分と結びつく印象が強いため、使用には注意が必要です。状況に応じて、適切な名称を用いて記録を残す工夫が求められます。
厳重注意書の意義と作成ポイント
口頭での注意だけでは効果がない場合、次の段階として「厳重注意書」を交付することがあります。文書にすることで、問題の重大性を本人に自覚させる効果があります。
厳重注意書の作成においては、いつ・どこで・誰が・何をしたのかを明記し、どのような点が問題だったか、そして今後どのような行動を求めるかまで記載することが理想です。こうした記載があることで、教育効果が高まり、指導の一貫性も保たれます。
配置転換・職務変更という選択肢
乱暴な言動や勤務態度の悪さが特定の業務や部署に起因する場合には、配置転換も選択肢の一つです。顧客対応やチームワークが求められる業務が向いていない可能性があるなら、より適した部署に移すことでトラブルを回避できることもあります。
ただし、配置先には高いマネジメント能力を持った上司が必要です。また、問題社員が管理職である場合には、その適性を見直し、管理職から外す決断も視野に入れるべきです。
適切なタイミングでの懲戒処分がカギ
厳重注意や配置転換でも改善が見られない場合には、懲戒処分を検討します。特に中小企業では対応が遅れがちですが、問題が深刻化する前に処分を行うことが重要です。
「懲戒処分のやり方がわからない」「処分して職場の雰囲気が悪くなるのでは」といった不安から対応が後手に回ることもありますが、問題社員が職場に居続ける方が、長期的には大きな悪影響を及ぼします。社内ルールとしての就業規則も整備し、処分に備えた基盤を持つことが重要です。
退職勧奨・解雇まで進む場合の注意点
最終的に、退職勧奨や解雇という判断を下す場合もありますが、その際には「指導に従わなかった」という点が非常に重要な論点になります。従って、指導内容は明確にし、その履歴も残しておくべきです。
退職勧奨では、退職届を取得し、承諾の意思表示を行う必要があります。さらに、退職合意書を取り交わすことで、双方の認識違いを防ぐことができます。解雇については、客観的に合理的な理由と社会的に相当とされるかどうかが問われますので、弁護士の助言を得て慎重に判断してください。
マネジメントによる早期対応が企業を守る
今回のテーマである「言動が乱暴で勤務態度が悪く、指導に従わない社員」への対応で最も重要なのは、マネジメントの視点です。問題が大きくなる前に、早期の注意指導や配置転換、必要に応じた懲戒処分を行うことで、職場秩序を守り、他の社員を守ることができます。
多少問題のある社員でも、有効活用の道を探り、マネジメントで立て直す努力をすることが、企業としての責任です。問題社員への対応においては、放置せず、早い段階からの的確な行動がカギを握ります。