極端に仕事が遅い社員への対処法|教育指導・配置転換・退職判断まで徹底解説

目次
動画解説
極端に仕事が遅い社員への対応が必要となる背景
手順どおりに進めれば特別なスキルを必要としない作業であるにもかかわらず、極端に仕事が遅い社員がいると、管理する側にとっては大きな悩みとなります。周囲の社員と比べても明らかに進捗が遅ければ、全体の業務計画に支障をきたし、結果的に他の社員の負担を増やしてしまうことにもつながります。
本来であれば、本人が努力を重ねることで徐々に仕事のスピードが向上し、一定の水準に追いついていくことが期待されます。しかし、注意をしても「自分は他の人のように早く仕事はできない」と言い切り、改善の姿勢を見せない社員が存在します。このように開き直った態度を取られると、周囲の不満も募り、職場全体の雰囲気にも悪影響を及ぼします。
経営者や管理職にとって、この問題は単に「効率が悪い」というだけの話ではありません。職場の公平感や士気の低下、さらには顧客への提供価値にも影響を与える可能性があります。そのため、極端に仕事が遅い社員に対しては、適切な対応を検討することが避けて通れない課題となるのです。
開き直る社員の心理と本当の姿
仕事が極端に遅い社員の中には、注意を受けても「自分は他の人のように早くはできません」と開き直る人がいます。このような言葉を聞くと、一見「やる気がないのではないか」「努力を放棄しているのではないか」と感じてしまいがちです。しかし、必ずしもそうとは限りません。
むしろ、この発言は「自分にはその能力が足りない」という率直な自己認識の表れである場合も多いのです。本当にサボっている人であれば「会社のやり方が悪い」とか「環境が良くない」などと他責にしたり、そもそも口をつぐんで理由を示さなかったりすることが少なくありません。それに対して「自分は早くできない」と自らの限界を正直に口にしている社員は、悪気なく一生懸命取り組んでいるにもかかわらず、能力的な問題でどうしても成果が出ないケースが多いのです。
したがって、このような社員を単純に怠慢や反抗と決めつけてしまうと、本質的な解決から遠ざかってしまいます。まずは本人の心理や背景を理解し、何が原因で遅くなっているのかを冷静に見極める姿勢が大切です。開き直りに見える言動の裏にあるのは、実は真剣さと不器用さの混在であることも少なくないのです。
教育指導で改善を試みる際の工夫
極端に仕事が遅い社員への対応として、最初に取り組むべきは教育指導の工夫です。多くの場合、本人は意図的に手を抜いているのではなく、どうすれば効率よく作業できるのかが分からず、結果として遅くなってしまっています。周囲から見れば「普通にやればできるのに、なぜここまで遅いのか理解できない」と思える作業であっても、本人にとっては本当に難しく、努力してもスピードが上がらないことがあるのです。
そのため、まずは指示をより具体的に出すことが欠かせません。「作業を進めておいてください」といった抽象的な言い方ではなく、「この資料を順番に確認し、Aの項目をチェックしたら次にBに進む」というように、段階ごとの具体的な手順を示す必要があります。さらに、一度指示したから終わりではなく、実際に作業をしている様子を確認しながら、どこでつまずいているのかを丁寧に見極めることが重要です。
また、「自分の頭で考えて工夫してみなさい」と突き放すことは逆効果です。そもそも自分で考えて改善できるのであれば、極端に遅れることはないからです。むしろ「どの部分を直せばスピードが上がるのか」を一緒に探り、具体的にフィードバックする姿勢を見せることが大切です。このような伴走型の指導を続けることで、平均的な水準にまでは到達しなくても、一定の改善が見られるケースは少なくありません。
教育指導の工夫は手間がかかりますが、まずは改善の可能性を試し、本人の成長のきっかけを与えるためにも欠かせないプロセスです。
仕事ぶりを観察し原因を探る重要性
極端に仕事が遅い社員への対応では、本人の仕事ぶりを丁寧に観察し、どこで時間を取られているのか、どんな場面でつまずいているのかを把握することが欠かせません。単に「遅い」と叱責するだけでは、本人も何を改善すればよいのか分からず、同じ状況が繰り返されてしまいます。
観察を通じて、原因が明らかになることも多くあります。例えば、一つひとつの動作に無駄が多い、判断のたびに迷ってしまう、確認に時間をかけすぎている、あるいは単純に手順を覚えきれていないなど、遅れの要因はさまざまです。具体的な原因が見えれば、それに応じた改善策を提案できるようになります。
観察によって「ここをこう変えれば効率が上がる」と気づいた点があれば、本人にフィードバックし、実際に試してもらうことが大切です。完全な原因の特定までは至らなくても、改善につながる可能性がある点を一つずつ修正していくことで、徐々に仕事のスピードが上がるケースも少なくありません。
このように、原因を探る姿勢を持つことは、単なる注意や叱責よりもはるかに効果的です。本人にとっても「上司が一緒に改善方法を考えてくれている」と感じられ、前向きに取り組むきっかけになります。
改善しない場合に起こり得るリスク
教育指導や観察を通じて改善を試みても、極端に仕事が遅い状態が続くことがあります。このような場合、会社としては放置すべきではありません。改善が見られないまま業務を続けると、さまざまなリスクが発生します。
まず直接的なリスクは、生産性の低下です。一人の社員の仕事の遅さを補うために、他の社員が負担を背負うことになり、全体の業務効率が下がります。その結果、納期遅延や顧客満足度の低下につながり、企業の信用を損なうおそれがあります。
次に、職場の士気への影響です。周囲の社員が一生懸命努力している中で、極端に遅いまま改善しようとしない社員がいると、不公平感が募り「自分ばかり損をしている」という不満が広がります。この不満が放置されれば、優秀な社員の離職を招く危険性すらあります。
さらに、本人にとってもリスクは小さくありません。向いていない仕事を無理に続けることで、強いストレスを感じたり、適応障害などの健康問題につながったりすることもあります。本人の自己評価が低下し、働く意欲を完全に失ってしまう可能性も否定できません。
このように、改善が見られない場合に発生するリスクは、会社にとっても本人にとっても大きなものです。だからこそ、一定の段階で「改善を続けるのか、それとも別の手段を考えるのか」という判断を下すことが必要になります。
配置転換による適材適所の可能性
極端に仕事が遅い社員に対して、教育指導を重ねても改善が見られない場合には、配置転換を検討することも有効な手段となります。人にはそれぞれ得意不得意があり、ある業務では成果を出せなくても、別の業務に移ることで驚くほど能力を発揮するケースは少なくありません。
特に、日本型の正社員雇用では、特定の職務だけに縛られず、さまざまな部署や業務への配置転換を行うことが可能です。そのため、現状の業務に明らかに適性がないと判断される場合には、他の仕事を試してみることが合理的な選択肢となります。例えば、緻密な作業には向かなくても、人とのコミュニケーションを伴う業務であればスムーズにこなせることもあります。
また、本人にとっても配置転換は大きな救いとなる場合があります。不得意な業務を続けることでストレスを溜め、心身に不調を抱えるよりも、比較的適性のある業務で努力できる環境を与える方が、結果的に本人の成長にもつながります。会社としても、社員が持つ潜在的な力を活かすことができれば、組織全体にとってプラスになります。
もちろん、配置転換は万能の解決策ではなく、会社の規模や業務内容によっては現実的に可能でない場合もあります。しかし、選択肢の一つとして検討することで、本人と会社の双方にとって前向きな解決の道が開けることがあります。
受け入れるか、退職を検討するかの判断
配置転換を試みても成果が得られず、どの仕事に就いても極端な遅さが改善されない場合、会社としては次の判断を迫られます。それは「現状を受け入れるか、退職を検討するか」という選択です。
まず、受け入れるという判断は、社員の能力をある程度割り切って考えるということです。「この人はこういうスピードでしか仕事ができないのだ」と理解し、その前提で人事評価や給与体系に反映させることで、組織全体の公平性を保ちつつ雇用を継続するという方法です。業務量の調整や、補助的な役割を中心に任せることで、ある程度は会社にとってもプラスに活用できる場合があります。
一方で、会社の規模や業務内容によっては、このような社員を受け入れることが難しいこともあります。その場合は、話し合いを重ねたうえで退職を検討する必要があります。もちろん、安易に解雇を選ぶのは法的リスクを伴うため避けるべきですが、本人にとっても「できない仕事を無理に続ける」よりは、他の環境で活躍できる場を探す方が幸せな場合もあります。
この判断は経営者にとって非常に難しい決断ですが、改善の余地があるのか、配置転換の可能性は残されているのか、本人の健康状態はどうかといった複数の視点を踏まえて検討することが重要です。単に「遅いからダメだ」と切り捨てるのではなく、本人と会社双方にとって最善の選択肢を模索する姿勢が求められます。
まとめ:経営者に求められる冷静な判断
極端に仕事が遅い社員への対応は、単なる業務効率の問題にとどまりません。職場全体の士気や公平感、さらには本人の健康状態にまで影響を及ぼす可能性があります。そのため、経営者には感情的に判断するのではなく、冷静かつ多角的に対応を検討する姿勢が求められます。
まずは教育指導や具体的なフィードバックを通じて改善を試みることが大切です。それでも成果が出なければ、原因を見極め、配置転換によって適性を活かせる場を探ることが有効です。もし改善が見込めず配置転換も難しい場合には、現状を受け入れて雇用を続けるのか、それとも本人にとって新しい環境での挑戦を勧めるのか、最終的な判断を下すことになります。
いずれの選択肢を取るにしても、重要なのは会社にとっての合理性と本人にとっての納得感の両立です。そのバランスを保ちながら、必要に応じて弁護士や専門家の助言を得ることで、法的リスクを回避しつつ適切な判断を下すことができます。
経営者にとっては悩ましい課題ですが、冷静な視点を持って最善の選択を重ねることこそが、組織を健全に保ち、社員一人ひとりの力を最大限に活かす経営につながるのです。