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誹謗中傷メールを社内外に送信する社員への対処法|経営者が取るべき初動と法的対応

動画解説

社内外に誹謗中傷メールを送る社員への初動対応

 社員が社長に対して誹謗中傷のメールを社内外に送信しているという事案に直面した場合、まず最初に行うべき対応は「それ以上の誹謗中傷を止めること」です。過去に送られたメールへの対応ももちろん重要ですが、今まさに続いている誹謗中傷行為があるのであれば、その被害の拡大を防ぐことが最優先です。

 この初動対応として効果的なのが、当該社員との面談です。面談に入る前に、誹謗中傷メールのデータを保存し、必要に応じてプリントアウトするなど、証拠の確保をしておきましょう。その上で、本人と面談を行い、事実関係を確認しながら事情を聴取します。

 社長に対する誹謗中傷を、社内外に向けて発信するという行動には、それなりの動機があると考えられます。会社側としては到底納得できない理由であっても、本人の主観では正当だと思っている可能性があります。そういった背景を把握するためにも、落ち着いて話を聞くことが重要です。

 面談では、誹謗中傷メールの送信をやめるよう明確に指示し、会社に対する不満がある場合は、社内で正式に申し出るよう促します。メールでは感情的で長文を綴るような社員であっても、実際に面と向かって話をすれば、比較的素直に話を聞いてくれることも多く、誹謗中傷の抑止につながります。

 また、「会社に言っても聞いてくれない」「社長に言ってももみ消される」などといった不信感から社外に情報を発信するケースもあるため、会社としては社員の不満や訴えに対して誠実に向き合う姿勢が求められます。これは、すべての意見を受け入れるという意味ではなく、社員からの申し出を真摯に受け止め、必要に応じて対応策を検討する姿勢を示すことが大切です。

 こうした対応を積み重ねることで、外部から見ても「会社としてやるべき対応をしている」と評価される状態を作ることができます。結果的にすべての社員を満足させることは難しいかもしれませんが、客観的に見て妥当な対応を行うことが、企業の信頼性維持につながります。初動段階での冷静かつ的確な対応が、その後の対応の成否を大きく左右するのです。

面談による誹謗中傷の抑止と社員の主張への向き合い方

 誹謗中傷メールの送信を止めさせるためには、当該社員と直接面談を行うことが有効です。感情的なトラブルであっても、話し合いの場を設けることで、社員の考えや動機を把握し、落ち着いた対応につなげることができます。

 まず面談にあたっては、該当する誹謗中傷メールの内容をあらかじめ整理しておきましょう。記録として保存しておくことはもちろん、場合によっては印刷したものを提示しながら事実確認を行うと、より具体的な話ができるようになります。

 誹謗中傷メールの送信者は、会社に対して深い不満や不信感を持っている可能性があります。その背景には、「会社に言っても聞いてくれない」「問題を伝えても改善されない」などの思いがあることも少なくありません。そういった主張に対しては、まず冷静に耳を傾け、なぜそのような行動に至ったのかを丁寧に確認することが大切です。

 しかし、どんなに強い不満があったとしても、社外に向けて誹謗中傷を発信することが許されるわけではありません。したがって面談では、「不満があるなら社内で正式に申し出ること」「メールを送るという手段は適切ではないこと」を明確に伝え、今後同様の行為をしないよう指導します。

 中には「なぜメールを出してはいけないのか」と問い返してくる社員もいるかもしれません。そうした場合には、職務専念義務、業務で得た情報の私的利用の禁止、名誉毀損や信用毀損といった法的リスクを説明することが抑止力となります。

 重要なのは、この面談を単なる説教の場ではなく、建設的な話し合いの機会として活用することです。相手の言い分を受け止めた上で、会社としての立場やルールを明確に示すことで、今後の誹謗中傷行為を抑える第一歩となります。

社内対応の正当性と透明性を確保する重要性

 誹謗中傷メールの問題に対応するうえで、会社が取る行動の「正当性」と「透明性」は極めて重要です。仮に社員の言動に問題があったとしても、それに対する会社の対応が不透明であったり、一方的すぎたりすると、周囲の社員や関係者からの信頼を損ねかねません。

 たとえば、「会社に訴えても無駄だ」「社長に言っても聞いてもらえない」というような不信感が社員の中に存在していれば、問題を社内で解決することが困難になります。結果として、社外に対する誹謗中傷という形で爆発してしまうケースも少なくありません。

 こうした背景を踏まえると、会社としては、社員からの指摘や不満に対して形式的ではなく、実質的にも「真摯に対応している」と見える行動が求められます。もちろん、すべての要求を受け入れる必要はありません。内容を冷静に検討し、必要があれば対応策を講じ、そうでない場合はその理由をきちんと説明する。この一連のプロセスこそが、会社の対応の正当性を裏付けるものとなります。

 また、こうした対応の過程は、当該社員だけでなく他の社員にも見られていることを意識する必要があります。まるで舞台の上に立ち、観客に見守られているようなものだと考えると良いでしょう。90%以上の社員から見て「会社は誠実に対応している」「社長は正しいことをしている」と思ってもらえるような姿勢を示すことが、組織としての信頼を守る鍵となります。

 不満を持つ社員に対して毅然と対応しつつも、公正なプロセスを踏んでいることを示すことで、会社の立場を正当化できるのです。問題社員(一般にモンスター社員とも言われている)への対応であっても、外部から見て「企業として当然の行動」と評価されることが、長期的に見て企業の信用を守ることにつながります。

誹謗中傷メール送信の違法性を説明するための論点

 面談などで社員に対して誹謗中傷メールの送信をやめるよう指導する際には、「なぜその行為が問題なのか」を法的観点から説明できることが重要です。社員の中には、「自分の意見を述べただけ」「真実を書いただけ」と考えている者もおり、悪意の認識がないケースもあります。そのため、会社側が具体的な根拠をもって説明することが、行為の抑止に直結します。

 まずひとつ目の論点は、職務専念義務です。業務時間中に誹謗中傷のメールを作成・送信していた場合、「業務時間中は業務に専念すべきであり、私的な目的でメールを送るのは許されない」という観点から指導が可能です。

 次に、業務上知り得た情報の私的利用という問題があります。送信先のアドレスや社外の連絡先を、業務中に知り得たものであれば、それを使って私的な誹謗中傷を行うことは、情報の不適切な利用であり、就業規則違反となり得ます。

 さらに重要なのが、名誉毀損や信用毀損の可能性です。社員が社長や会社の評判を貶めるような表現をメールで発信した場合、その内容や表現が社会的評価を下げるものであれば、名誉毀損(刑事・民事の両面)、または信用毀損に該当する可能性があります。

 こうした論点を整理したうえで、「今回のメール送信行為には、具体的にこのような問題がある」と本人に伝えることで、納得を得やすくなります。単に「メールはやめなさい」と命じるだけでは、本人が再発を防ぐ動機を持たず、同様の行動が繰り返されるおそれがあります。

 社員に対して法的なリスクと職場における行動のルールを明確に説明し、行動の是正を求めることが、会社としての信頼維持にもつながる重要な対応です。

過去の誹謗中傷メールに対する懲戒処分の検討

 誹謗中傷メールの送信が確認された場合、今後の防止策だけでなく、すでに行われた行為に対する対応も検討する必要があります。その代表的なものが懲戒処分です。社員が会社や社長を誹謗中傷する内容のメールを社内外に送った場合、それが就業規則違反に該当するか、懲戒事由として認められるかどうかの判断が求められます。

 処分を検討する際、まず確認すべきは「誹謗中傷メールの具体的な内容」です。「誹謗中傷」という言葉はあくまで評価的な表現であり、実際にどのような文言が使われていたのか、どのような主張がなされていたのかを、事実として正確に把握することが大前提です。

 内容の確認ができたら、次はそのメールが誰に送られたのか、どの範囲に影響を与えたのか、送信の動機や経緯にどのような事情があったのか、といった複数の要素を総合的に検討します。これにより、処分の重さ—たとえば厳重注意、減給、出勤停止、懲戒解雇など—を適切に判断していきます。

 軽度の内容であれば、注意や指導で済むケースもありますが、内容が悪質であったり、社外の関係者にまで影響を与えた場合などは、懲戒解雇も選択肢となり得ます。ただし、処分が重すぎると懲戒権の濫用とみなされ、無効と判断されるリスクもあるため、慎重な判断が不可欠です。

 また、処分を行う際は、その行為が就業規則に定める懲戒事由のいずれに該当するのかを明確にしなければなりません。あいまいな理由での処分は、後々の労働審判や訴訟で争点となることがあるため、実際のメールの文面や経緯と就業規則の記載を照らし合わせて、適切な条項を適用する必要があります。

 このように、懲戒処分の判断には高度なバランス感覚が求められます。不慣れな対応によって不当解雇や処分無効とされないためにも、弁護士などの専門家に相談しながら進めることが望ましいでしょう。

懲戒処分・解雇を行う際の注意点と判断基準

 誹謗中傷メールを送信した社員に対し、懲戒処分や解雇を検討する際は、慎重かつ適切な判断が求められます。処分が重すぎれば「懲戒権の濫用」として無効になる恐れがあり、逆に甘すぎれば組織の規律や他の社員への影響に問題が生じかねません。そのため、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。

 まず検討すべきは、その行為が懲戒事由に該当するかどうかです。就業規則に記載された懲戒条項のうち、どれに該当するのかを明確にしなければなりません。漠然と「悪質だから」という理由で処分を決めると、後の争いで会社側の対応が不適切と判断されるリスクが高まります。

 また、処分の重さの妥当性も重要です。たとえば、送信されたメールの内容、使われた表現の強さ、送信先の範囲、メールの頻度、送信に至った背景や動機などを総合的に考慮し、行為と処分のバランスが取れているかを判断します。この判断基準が曖昧なまま処分を進めると、後に裁判で「社会通念上相当ではない」と評価され、処分が取り消される可能性があります。

 さらに、懲戒解雇ではなく普通解雇の可能性も検討されることがあります。たとえば、社員の行為が懲戒事由に該当しないものの、会社との信頼関係を大きく損なっている場合には、就業継続が困難と判断し、普通解雇を選択することもあり得ます。どちらの解雇であっても、解雇事由と解雇権濫用の有無を慎重に確認する必要があります。

 また、当該社員が自ら退職を申し出るケースもあります。たとえば、「最後に言いたいことを言ってから辞めるつもりだった」というケースでは、懲戒解雇にこだわらず、合意退職という柔軟な選択肢を検討することも実務上は有効です。むしろ、無理に懲戒解雇にこだわった結果、手続き不備で無効になるリスクのほうが高くなることもあるため、状況に応じて最善の解決策を探る姿勢が求められます。

 いずれにしても、懲戒処分や解雇の判断には法的知見と実務的判断の両面が必要となるため、迷う場合には弁護士に相談しながら進めることが、会社にとっても最もリスクを抑えた対応となります。

合意退職を選択肢とする柔軟な対応

 誹謗中傷メールの送信者に対して厳正な処分を検討することは当然の対応ですが、すべてのケースで懲戒解雇を目指すことが最善とは限りません。特に当該社員が自ら退職の意思を示しているような場合には、「合意退職」という柔軟な対応も一つの有効な選択肢となります。

 実際、誹謗中傷メールを送った社員の中には、「最後に言いたいことを言ってから辞めるつもりだった」といったケースも見受けられます。このような場合、会社側が懲戒解雇に強くこだわりすぎると、調査が不十分なまま処分に踏み切ってしまい、結果的にその懲戒解雇が無効とされるリスクもあります。そうなれば、かえって企業の信頼性や正当性に傷がつくおそれもあるため、無理に厳罰を科すよりも、速やかかつ円満に事案を収束させるための合意退職の方が実務上効果的なこともあります。

 もちろん、合意退職を選ぶかどうかは状況次第です。たとえば、誹謗中傷の内容が悪質で社外に重大な影響を及ぼしている場合には、あえて懲戒処分を行う意義もあるでしょう。一方で、証拠の確保や懲戒手続に時間がかかりそうな状況、あるいは本人が既に退職の意向を明確にしている状況では、事実関係の確認を行いつつ、穏便な方法で関係を終了させる選択も視野に入れるべきです。

 このような「処分か合意退職か」の判断には、会社の内情や今後の影響、処分の実効性など、多くの要素を総合的に考慮する必要があります。特に社外からの見え方、社内の士気、再発防止の観点からも慎重な判断が求められます。したがって、こうした難しいさじ加減が必要な局面では、弁護士と相談しながら、最もリスクの少ないかたちでの解決策を検討していくのが安全です。

 柔軟かつ実務的な視点をもって、企業としての対応を選択していくことが、結果的により良い形で問題を収束させる鍵となります。

損害賠償請求の可能性とその検討プロセス

 誹謗中傷メールによって企業や社長の名誉や信用が著しく毀損された場合、損害賠償請求を検討することも可能です。ただし、労働者に対する損害賠償請求は慎重な判断が必要であり、法的・実務的な検討を丁寧に進めることが求められます。

 まず前提として、誤送信や軽微な表現での不満表明であれば、損害賠償の対象とはなりません。損害賠償請求が成立するには、「故意または重過失により」「企業の名誉や信用に具体的な損害を与えた」ことが必要です。今回のように、意図的に社外へ向けて誹謗中傷メールを送信した場合は、故意による不法行為とされる可能性があるため、検討に値します。

 検討の際には、メールの内容が社会的評価を下げるものであるか、送信先が誰か(取引先、顧客、関係機関など)、実際にどのような損害が生じたか(取引停止、信用失墜、業績悪化など)などの要素を整理する必要があります。これらを明確にし、損害の発生とその因果関係を立証できるかどうかが請求の可否を分けます。加えて、誹謗中傷の中身が真実かどうかも重要な論点です。仮に事実であれば、名誉毀損の違法性が否定され、損害賠償請求が認められない場合もあります。また、たとえ事実でなかったとしても、社員が「真実と信じるに足る相当な理由があった」と認められる場合には、やはり違法性が否定されることがあります。

 そのため、「誹謗中傷されたから損害賠償請求をする」という単純な判断ではなく、事実関係と法的評価を丁寧に整理することが必要です。むしろ、拙速に訴訟を提起した結果、誹謗中傷の内容が訴訟を通じて広まり、かえって企業や社長の名誉が損なわれるリスクもあるため、戦略的な判断が不可欠です。

 損害賠償請求は、有効な選択肢となり得る一方で、非常にデリケートな対応を要する局面でもあります。実際に請求に踏み切るかどうかは、弁護士と綿密に相談したうえで判断するのが適切です。

名誉毀損と違法性の有無をめぐる法的判断のポイント

 誹謗中傷メールへの対応を検討するうえで重要となるのが、その内容が「名誉毀損」に該当するかどうか、そしてそれが違法と評価されるかという点です。企業や経営者が「名誉を毀損された」と感じても、法的に名誉毀損が成立するかどうかは別問題であり、慎重な検討が求められます。

 名誉毀損が成立するには、メールの内容が特定の個人または法人の社会的評価を低下させる事実を示していることが必要です。たとえば、「社長は会社の金を横領している」「社員を不当解雇している」などといった具体的な事実の摘示があり、それが真実でない場合には名誉毀損が成立する可能性が高まります。

 一方で、名誉毀損に該当するような内容であっても、常に違法とされるわけではありません。違法性が阻却される、つまり違法とは評価されないケースもあります。代表的なものとして、指摘された事実が真実である、あるいは真実であると信じるに足る相当な理由がある、社会的関心事に関する公益性のある意見・論評である、内容が事実の指摘ではなく、主観的な意見や感想の範囲にとどまっている場合が挙げられます。

 このような事情が認められれば、たとえ社会的評価を下げるような内容であっても、違法とはされず、損害賠償請求や懲戒処分が認められない可能性があります。特に社員が「正当な問題提起のつもりだった」「改善を求めるためだった」と主張する場合、会社側がその背景や目的を無視して一方的に違法と断定することは危険です。

 さらに、「意見・論評」に該当する発言であっても、その前提となる事実が虚偽であったり、内容に著しく攻撃的な表現が含まれていた場合には、違法性が認められることもあります。このように、名誉毀損の判断は非常に複雑であり、単に「悪口を書かれた」というだけで直ちに違法とは言い切れません。

 そのため、誹謗中傷メールに含まれる表現が名誉毀損に該当するか、違法性が阻却されるかどうかについては、表現内容、送信先、意図、真実性などを総合的に検討する必要があります。こうした法的評価を適切に行うためにも、経験豊富な弁護士の助言を得ながら対応を進めることが重要です。

法的対応において慎重な判断が求められる理由

 誹謗中傷メールに対して会社として何らかの法的対応を検討する際には、その一つひとつの判断において非常に慎重さが求められます。なぜなら、対応の仕方によっては、かえって会社の信頼や名誉を損なってしまう可能性があるからです。特に損害賠償請求や懲戒処分といった手段は、対応を誤れば逆効果となることもあり得ます。

 たとえば、社員による誹謗中傷メールに腹を立てて、内容を十分に検討しないまま重い処分に踏み切った場合、それが後に「懲戒権の濫用」と評価されれば、処分自体が無効となり、労働者側に逆に損害賠償請求をされるリスクさえ出てきます。また、損害賠償請求についても、内容や事実関係の精査が不十分なまま訴訟に持ち込めば、裁判を通じて誹謗中傷の内容が広く知れ渡ることになり、企業や経営者の評判をかえって傷つけてしまう恐れもあります。

 さらに、誹謗中傷と感じられる表現であっても、それが事実に基づいていたり、一定の公益性を有していたり、または意見・論評の範囲内である場合には、違法性が否定されることもあります。このような判断は非常に複雑であり、感情的な判断ではなく、法的な観点から冷静に分析することが必要です。

 特に誹謗中傷の事案では、企業や社長に対する感情的な攻撃が行われることも多いため、つい感情に引きずられてしまいがちですが、だからこそ第三者的立場から冷静な意見を述べられる弁護士などの専門家に相談することが不可欠です。そうすることで、法的リスクを正確に把握し、企業として最も望ましい対応を選ぶことが可能になります。

 間違った対応は企業イメージや社内秩序に長期的な影響を与えるため、初動の段階から冷静かつ慎重に進めることが、問題解決の鍵となります。法的対応には時間と労力がかかりますが、その分、適切に行えば企業の信頼と統制を守る強力な手段となり得るのです。

弁護士との連携で適切かつ効果的な対応を

 誹謗中傷メールのような問題社員への対応では、法的なリスクと企業運営上の判断が密接に関わってくるため、弁護士との連携が極めて重要です。社内だけで対応を進めると、感情的な判断に流されたり、法的な手続きの不備が生じたりして、結果として会社に不利益をもたらす可能性があります。特に、懲戒処分や解雇、損害賠償請求といった対応を検討する場合には、法的根拠が明確でなければ、後に無効とされるリスクがあります。

 弁護士は、感情的な対立に陥りがちな状況の中でも、第三者として冷静に状況を分析し、企業側にとって適切かつ実効性のある選択肢を提示してくれます。また、社内の事情に配慮しながらも、労働法や民事責任に関する専門的知見をもとに、客観的なアドバイスを提供することができます。

 特に重要なのは、懲戒処分や解雇が法的に有効となるために必要な手続きを、適切な手順で進めることです。就業規則に基づいた処分理由の明示、証拠の収集・整理、本人への説明や意見聴取といった手続きの一つひとつが、後の法的紛争を回避するうえで不可欠となります。これらを自己判断で進めてしまうと、形式的なミスや説明不足が争点となり、企業にとって大きな損失を招くおそれがあります。

 また、損害賠償請求を行う場合にも、請求の可否や損害額の算出、証拠の評価など、専門的な視点が不可欠です。場合によっては、損害賠償よりも別の解決方法のほうが企業にとって合理的であることもあります。こうした判断は、法律の専門家である弁護士と協議しながら進めることで、無駄なリスクを回避し、より良い結果につながります。

 企業が不適切な対応を取ってしまえば、それが社内外からの信頼失墜につながることもあります。だからこそ、問題社員(一般にモンスター社員とも言われている)への対応には、初期段階から弁護士と連携し、計画的かつ慎重に進めることが何より重要です。適切な法的支援を得ることで、企業の立場を守りつつ、トラブルの早期収束を実現することが可能となるのです。

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