問題社員

指示が通じない社員への正しい対応法|教育指導・配置転換・退職勧奨まで企業が取るべき実践策

動画解説

https://youtu.be/BfRioz3n7so

指示内容が理解できない社員への対応が必要な理由

 職場において「指示内容が理解できない」社員の存在は、企業の円滑な業務運営に大きな支障をきたします。上司や経営者が業務内容を伝えても、その意図がうまく伝わらず、指示通りに動けない場合、業務が滞ったり、品質に問題が生じたりすることが避けられません。また、こうした状況は企業側にとってだけでなく、本人にとっても非常に苦しいものです。

 上司が何を求めているのかがわからないまま業務に取り組まなければならない社員は、日々の仕事に対して大きな不安やストレスを抱えることになります。言い換えれば、指示の理解不足は「本人にとっても辛い状況」であり、労使双方にとって不幸な関係が生まれてしまうのです。

 このような問題を放置すれば、業務の質や生産性だけでなく、職場全体の雰囲気にも悪影響を及ぼします。加えて、問題が深刻化すれば、社員のメンタルヘルスの悪化やハラスメントといった新たなリスクにも発展しかねません。だからこそ、指示がうまく伝わらない、あるいは理解できない社員への対応は、早期かつ適切に行う必要があるのです。

理解力に応じた具体的な教育指導の重要性

 社員が業務指示を理解できない場合、その原因は一概には断定できません。理解力に課題があるケースもあれば、指示の出し方が抽象的すぎる場合もあります。いずれにせよ、現場でできる最も有効な対応の一つは、指示内容をより「具体的」に伝えることです。

 一般に、抽象度の高い指示は理解の難易度が高く、具体的になればなるほど理解しやすくなる傾向があります。したがって、指示しても繰り返し理解されない社員には、実際の行動レベルまで落とし込んだ説明が必要です。例えば、「丁寧に対応してください」という抽象的な表現ではなく、「お客様にはまず名乗ってから、要件を復唱してください」といった具合に、手順を明確に示すことが重要です。

 このような指導を行うには、前提として、本人の行動や状況をよく観察することが欠かせません。業務は常に同じ条件で行われるとは限らず、状況ごとの対応が求められる場面も多くあります。そのため、管理職や先輩社員は、現場で本人の行動を観察しながら、「この場合はこうすべき」と具体的な例を挙げて教えることが必要です。

 場合によっては、実際にやって見せる「モデリング指導」を取り入れるのも有効です。目で見て理解できるようにすることで、言葉だけでは伝わらないポイントを補うことができます。

 このような丁寧な教育指導は、一定の時間と労力を要しますが、理解力に課題のある社員に対しては、欠かせない取り組みです。負担の大きい方法ではありますが、労使双方にとって不幸な結果を回避するための第一歩でもあるのです。

教育担当者の負担とその配慮の必要性

 指示内容が理解できない社員に対して、具体的な教育指導を行うことは極めて重要ですが、それを担う先輩社員や管理職にとっては大きな負担となります。特に、自身の業務を抱えながら、つきっきりで指導を行わなければならない状況が続けば、精神的・肉体的な疲弊は避けられません。

 通常の指示で対応できる社員とは異なり、理解力に課題がある社員への指導では、一般的な指示方法が通用せず、時間も労力もかかります。そのため、担当者が「自分の業務が後回しになってしまう」「何度教えても理解されず、無力感を感じる」といったストレスを抱えることも少なくありません。

 こうした現場の負担を軽減するためには、まず教育担当者の努力や苦労をきちんと理解し、労いの言葉をかけるだけでなく、実際の業務量を調整するなど、物理的な配慮も行う必要があります。単なる励ましではなく、組織として「教育にかかる時間を見越した業務設計」が求められます。

 また、可能であれば育成専任の担当者や補助的なサポート要員を確保することも検討すべきです。教育負担が一部の社員に偏ってしまうことで、職場の不満やモチベーションの低下を招くリスクもあるため、企業全体としての体制整備が重要になります。

 このように、教育を任される側の人材にも無理のない範囲で業務が行えるように配慮することは、育成の成功のみならず、職場全体の健全な運営にも直結する課題なのです。

社員本人にも大きな精神的負担がかかる現実

 指示内容をうまく理解できない社員は、周囲に迷惑をかけているという自覚を持ちながらも、どうしてもうまくいかない現実に直面し、大きな精神的負担を抱えています。周囲からの指導が繰り返される中で、成果が出せず、自信を失っていく姿も少なくありません。

 指導を受ける立場の社員にとって、どれだけ努力しても改善が見られない状況が続けば、「自分はこの仕事に向いていないのではないか」「なぜ自分だけできないのか」といった自己否定の感情が強まり、やがては精神的に追い詰められてしまうこともあります。特に、指導する側の上司や先輩社員がイライラを募らせ、きつい言葉を発してしまった場合には、パワハラと捉えられかねない事態に発展する可能性もあります。

 その結果として、「適応障害」の診断書が提出されるケースや、「会社からのパワハラだ」と訴えられるようなトラブルに発展することもあります。これは、企業にとって大きな法的・ reputationalなリスクとなり得ます。

 また、指導がうまくいかずに日々の業務が苦痛に感じられるようになると、本人のモチベーションも低下し、結果的に業務パフォーマンスもさらに悪化するという悪循環に陥る可能性もあります。そのような状況が続けば、社員本人にとってもキャリア形成上、大きなマイナスになります。

 企業が指導や教育を行う際には、本人の努力不足だけに原因を求めるのではなく、「この仕事は本当に本人に適しているのか」という視点も併せ持つことが重要です。そうすることで、社員が持つ本来の能力や才能を引き出す可能性を見いだし、結果として企業と社員双方にとって良い方向へ進めることができるのです。

配置転換による適正な業務への見直し

 指示内容が理解できないという課題を抱える社員に対しては、教育指導の工夫だけでなく、「そもそも今の仕事が本人に適しているのか」を見直すことも重要です。つまり、現在の業務自体に向いていない可能性がある場合には、別の仕事への配置転換を検討することが有効な対応となります。

 人には向き不向きがあります。ある業務で結果が出せないからといって、すべての仕事においてパフォーマンスが低いとは限りません。たとえば、口頭での指示を理解するのが苦手でも、文字情報であれば正確に処理できる社員もいます。また、言語的な理解が難しくても、ルーチンワークや体感的な作業には適性がある場合もあるのです。

 こうした特性を踏まえ、社内においてより適性のある部署や業務を探し、配置転換を行うことで、本人の能力を活かせる可能性があります。実際、業務内容を変更するだけで、指示理解の問題が解消され、スムーズに働けるようになったケースも少なくありません。

 ただし、こうした配置転換を実施するには、企業側の柔軟な判断と受け入れ態勢が求められます。「他の部署に空きがない」「人員はすでに足りている」といった事情がある場合には簡単ではありませんが、それでも可能性を探ることには大きな意味があります。

 配置転換は、単に問題のある社員を別の場所に移すという発想ではなく、本人が本来の能力を発揮できる環境を整えるという前向きな対応です。結果として、本人の成長と職場全体の生産性向上につながる可能性もあります。指示の理解に苦労しているからといって一律に排除するのではなく、まずは適正な業務への見直しを図ることが、企業として取るべき誠実なアプローチだといえるでしょう。

社内に適職がない場合の選択肢と対応策

 配置転換を検討しても、社内に適した業務が存在しない場合もあります。部署の構成上、新たに任せられる仕事がない、あるいは空きがあっても既に人員が充足しているといったケースです。そのようなとき、社員本人の将来や能力発揮の機会を考えるならば、社外でのキャリアを見据えた選択肢を検討することも必要になります。

 例えば、適職が社内に見つからない場合、転職を提案することは合理的な判断です。これは「辞めさせる」といったネガティブな発想ではなく、「本人がより能力を発揮できる場所に移ることで、本人の人生にとってプラスになる可能性がある」という前向きな視点からの提案です。現職にとどまっていても、能力を活かせず精神的にも疲弊し続けるような状態では、本人にとっても不幸でしかありません。

 このような場合に企業が取り得る手段として、「退職勧奨」があります。強制的に辞めさせるのではなく、社員と丁寧に話し合い、合意の上で退職を進める方法です。特に、試用期間中であれば、本人の納得も得やすく、企業にとっても後のトラブルを防ぎやすくなります。

 また、試用期間中においては「本採用拒否」という手段も理論上は可能です。ただし、これも一種の解雇にあたるため、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められ、証拠も必要になります。ただし、試用期間内であれば通常の解雇よりはハードルが低いというのが実務上の位置づけです。

 いずれにせよ、本人の適性や会社の状況を総合的に見たうえで、最終的には転職や退職を視野に入れることが、企業・社員双方にとって最善の結果につながるケースもあります。そのような判断を下す際には、労務トラブルを未然に防ぐためにも、弁護士などの専門家に相談しながら進めることが重要です。

試用期間中の判断と対応のすすめ

 指示内容を理解できない社員への対応において、特に重要なのが「試用期間中の判断と対応」です。実際に業務を任せてみたものの、指示の意図が伝わらず、業務が成り立たないようであれば、本採用を見送るという選択肢も現実的に検討しなければなりません。

 試用期間は、単に雇用の前段階ではなく、社員の適性や業務遂行能力を見極めるための大切な期間です。この段階で適性が著しく低いと判断された場合、本採用を拒否することも法的には可能です。ただし、それは「解雇」と同様に扱われるため、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められ、対応には慎重さが必要となります。

 とはいえ、試用期間中であれば、本人も「見極めの期間」であることを認識しており、本採用後に比べれば納得感を得やすいという利点があります。「本採用されたのに、なぜ辞めなければならないのか」といった反発を防ぐ意味でも、問題が明らかになった段階で早期に動くことが望ましいといえるでしょう。

 また、やむを得ず本採用を拒否する場合でも、後のトラブルを避けるためには、日々の指導記録や指示内容の記録、本人の理解状況などをきちんと証拠として残しておくことが重要です。適切な記録がなければ、仮に本採用拒否をしたとしても、後に「不当解雇」と争われるリスクが高まります。

 こうした対応は、特に中小企業においては難易度が高く、手続きや判断に不安があることも多いでしょう。だからこそ、判断に迷う場合は早い段階で弁護士に相談し、適切な対応をとることが、企業を守る最善の手段となります。

適切な対応が企業と社員の未来を守る

 指示内容を理解できない社員への対応は、企業にとっても本人にとっても非常にデリケートで、かつ重要な課題です。まずは教育指導によって改善を図るべきですが、それでも状況が好転しない場合には、配置転換や転職の提案など、より本質的な対応を検討する必要があります。

 特に、本人の適性が著しく低い場合、無理に同じ仕事を続けさせようとすると、教育担当者にも本人にも大きなストレスがかかり、パワハラや適応障害といった二次的な問題に発展するおそれもあります。これは単なる業務上の問題にとどまらず、企業の労務リスクや職場環境全体の悪化につながりかねません。

 一方で、仕事を変えることで本人が持つ別の能力が発揮され、活躍の場を見いだせる可能性も十分にあります。向いていない業務に固執せず、本人の長期的なキャリア形成を見据えた柔軟な対応こそが、社員の人生に寄り添う姿勢であり、企業の社会的責任でもあると言えるでしょう。

 もちろん、本人が他の業務を拒否したり、退職に対して抵抗を示したりすることもあるかもしれません。こうした場合には、トラブルに発展しやすいため、法的な視点を踏まえた慎重な対応が求められます。

 四谷麹町法律事務所では、問題社員への対応に関して、個別の注意指導の仕方や、懲戒処分の進め方、社員への対応方法について具体的なサポートを行っています。さらに、状況によっては企業側代理人として、問題社員(一般にモンスター社員とも言われている。)や、相手の代理人弁護士との交渉も行っています。
 訴訟や労働審判になる前の段階から適切な対応を行うことで、企業側の負担を軽減し、トラブルの早期解決が可能となります。問題社員の対応でお悩みの際は、会社側専門の経験豊富な四谷麹町法律事務所にぜひご相談ください。

新着記事

  • 社員のパフォーマンスが上がらないときの対処法|育成・適正配置・退職勧奨の実務対応

  • 言われたとおりに仕事をしない社員への対応法|指導・適性判断・懲戒対応までを弁護士が解説

  • ミスの理由が分からない社員への正しい対応法|教育・配置転換・退職勧奨までの実践ガイド

  • 指示が通じない社員への正しい対応法|教育指導・配置転換・退職勧奨まで企業が取るべき実践策

  • 勤務態度が悪く指導に従わない社員への正しい対処法|問題社員(モンスター社員)対応の実務ポイント

過去記事

オンライン経営労働相談

会社経営者を悩ます労働問題は、四谷麹町法律事務所にご相談ください。
労働問題の豊富な経験と専門知識で、会社経営者の悩み解決をサポートします。

経営労働相談のご予約はこちら