社員のパフォーマンスが上がらないときの対処法|育成・適正配置・退職勧奨の実務対応
目次
動画解説
期待に届かない社員がもたらす双方の不幸
企業が社員を採用する際には、「この人に活躍してほしい」「チームの戦力になってほしい」という期待を当然のように抱いています。そして、採用された側もまた、「この会社で自分の力を発揮したい」「成果を上げて評価されたい」「キャリアを積んでいきたい」と意気込んで入社してきたはずです。
ところが現実には、パフォーマンスが期待に届かない社員が一定数存在します。これは、企業にとっても本人にとっても非常に不幸なことです。会社としては業務の停滞やチーム全体のモチベーションの低下を招く可能性がありますし、本人にとっても「頑張っているのに成果が出ない」「自分はこの仕事に向いていないのではないか」といったストレスや不安を抱える原因になります。
仕事がうまくいかない状態が続くと、本人の自己肯定感は下がり、やりがいや喜びを感じられなくなってしまいます。一方で、企業側はその状況を見過ごすわけにもいかず、どう対応すべきか頭を悩ませることになるでしょう。
このような事態を放置すれば、本人のキャリア形成にも悪影響を及ぼし、最終的には職場全体の雰囲気や生産性にも影を落としかねません。だからこそ重要なのは、「パフォーマンスが期待に届かない」という現象を単なる本人の問題とせず、企業としてどのように向き合い、支援し、必要に応じて配置や関係の見直しを行っていくかを冷静に考えることです。
パフォーマンスが伸びない原因とマネジメントの工夫
パフォーマンスが期待に届かない社員がいる場合、その原因を正しく見極めることが、適切な対応の第一歩です。単に「本人の努力不足」と片づけてしまうのではなく、職場環境や育成体制に課題がないかを冷静に見直す必要があります。
たとえば、入社後の研修が不十分だった、業務の進め方が属人的で暗黙知に頼っている、フォロー体制が整っていない――こうした環境要因は、社員の力を引き出す上で大きな障害になります。誰がやっても成果が出にくい状況であれば、それは個人の問題というよりも組織の課題です。
一方で、同じ環境のもとで明確な個人差が見られる場合には、「適性」という要素に目を向けなければなりません。ある社員は着実に成果を出しているのに、別の社員は何度教えても同じミスを繰り返す。このような場合、努力や意欲の問題ではなく、そもそもその業務との相性が悪い可能性が高いのです。
適性が合わない仕事では、スタート地点が他の社員よりも低く、成長のスピードも緩やかになります。本人が努力してもなかなか報われないため、自己評価が下がり、職場での居場所を見失ってしまうことにもなりかねません。このような悪循環を防ぐには、マネジメントの視点からの支援が欠かせません。
企業としては、「頑張れ」だけでは通じない現実を理解し、適性に応じた育成方法を工夫する必要があります。そしてその際、現場の上司や先輩社員に過剰な負担をかけないための制度的な配慮も同時に考えていくことが求められます。
成長を促すための育成と現場での具体的指導法
パフォーマンスが期待に届かない社員に対しては、育成方法を見直すことが不可欠です。特に、一般的な社員と同じ手順で研修を受けさせたり、現場での経験を積ませても効果が出ない場合には、より丁寧で個別の対応が必要になります。
その際の基本は「具体的な指導から始める」ということです。抽象的な指示、たとえば「自分の頭で考えて動いてみて」といった丸投げは、そもそも適性が不足している社員には酷です。むしろ、「何を・いつ・どうすればいいか」を明確に伝え、具体的な行動に落とし込んであげる必要があります。
業務の内容も、初めは定型的で判断の少ないタスクから始めるのが有効です。その上で、徐々に応用力や判断が必要な業務にステップアップしていくようにしましょう。重要なのは、成長のペースが非常にゆっくりである可能性を前提とし、根気強くサポートすることです。
また、業務中はなるべく近くにいて、実際の行動を観察し、必要があれば即座に修正指導を加える体制も求められます。本人のつまずきを放置せず、どこに課題があるのかを見極めたうえで、失敗を最小限に抑えるサポートを心がけてください。
管理職や育成担当の先輩社員にとっては、大きな手間と時間を要する対応となります。しかし、「できる人なら一人でできる仕事」も、適性のない人には難しいものです。やる気や努力不足ではなく、能力の問題であることを理解し、非難ではなく支援の姿勢で接することが重要です。
育成体制そのものが現場任せにならないよう、企業全体としての支援体制や評価制度の見直しも必要になります。現場の負担を軽減しながら、着実に成長を支える仕組みづくりが、長期的な人材育成には欠かせません。
社員に合った仕事を任せる「適正配置」の重要性
どれだけ丁寧な育成を行っても、成果が現れにくい場合には、社員がその仕事自体に適性を持っていない可能性があります。こうしたケースでは、「育てる」だけでなく、「仕事を変える」こと、つまり適正配置が重要な選択肢となります。
向いていない仕事を続けることは、本人にとって大きな負担であり、周囲の指導者にとってもストレスの原因になります。誰よりも早く出社し、努力を重ねても成果が出ない――そうした状態は、自己肯定感を損ない、やがて職場における孤立やメンタル不調にもつながりかねません。
一方で、適性のある仕事に配置転換することで、その社員が驚くほど活躍を見せるケースも少なくありません。これまでの実績や、日々の業務に対する姿勢を注意深く観察することで、どのような業務に向いているかのヒントが見えてくる場合もあります。また、適性テストなどのツールを活用することで、より客観的な判断材料を得ることも可能です。
社員に合った仕事を任せることは、本人のためであると同時に、会社全体の生産性向上にもつながります。適性に合った配置によって仕事の効率が上がり、無用な摩擦や指導の手間も減少します。結果として、現場の負担が軽くなり、マネジメント層の余裕も生まれるのです。
適正配置は、問題社員(一般にモンスター社員とも言われている。)の対策としても有効ですが、そもそも社員一人ひとりが自分の力を発揮できる環境を整えるという意味で、すべての社員にとってプラスになる施策です。経営者や人事担当者として、社員の能力を見極め、それを活かす配置を検討する視点が不可欠です。
配置転換か、転職支援か:会社としての判断ポイント
適正配置を検討しても、社内に本人の適性に合った業務が存在しない場合もあります。そのようなとき、無理に職場にとどめることは、本人にとっても、職場にとっても不幸な結果を招く可能性があります。このような状況では、配置転換だけでなく、転職の支援も含めた対応を検討することが必要です。
社員が適性に合わない仕事を続けると、成果が出ないだけでなく、自尊心を損ない、仕事への意欲も次第に失われていきます。やがては「生活費のためだけに働く」という状態に陥り、会社にとっても本人にとっても、建設的な関係とは言えなくなります。そうなる前に、本人が本来の才能を発揮できる環境を見つけることを支援するのが、企業の責任ある対応です。
もちろん、「辞めさせればいい」という短絡的な発想ではなく、まずは社内で可能な限り配置転換や支援策を講じたうえで、それでも難しいと判断した場合に限り、退職勧奨や転職支援といった選択肢が現実的になります。
その際は、できるだけ早期、できれば試用期間中に見極めることが理想です。試用期間であれば、本人にとっても納得感が得やすく、企業としても法的リスクを抑えながら柔軟に対応することが可能です。
企業として大切なのは、社員を単なる労働力と見るのではなく、その人の将来やキャリア形成にも目を向けた対応を取ることです。場合によっては、本人にとってプラスになる転職という選択肢を提示することが、長い目で見て最良のサポートとなる場合もあるのです。
試用期間中の見極めと法的留意点
社員の適性を見極め、適切な配置や判断を行ううえで、試用期間は非常に重要なタイミングです。入社直後の段階で業務への適応力や学習速度、職場環境へのなじみ方などを観察し、期待に届かない場合には早期に対策を講じることが、双方にとって傷を浅くすることにつながります。
試用期間中であれば、本人としても「まだ本採用前だから仕方ない」と一定の納得感を得やすく、配置転換や退職勧奨といった対応も比較的スムーズに進めることが可能です。また、会社にとっても、法的なリスクを抑えた形で判断ができるという利点があります。
とはいえ、試用期間中の本採用拒否や解雇であっても、法的には「解雇」であることに変わりはありません。客観的に合理的な理由が必要であり、社会通念上相当であることも求められます。そのため、「なんとなく合わないから」といった曖昧な理由では不十分であり、あらかじめ業務指導や評価記録を丁寧に残しておくことが重要です。
法律的なイメージとしては、通常の解雇に必要なハードルの高さが「80センチ」だとすると、試用期間中は「60センチ」程度に下がる、という感覚です。決してハードルがなくなるわけではありませんが、的確な対応を行っていれば、より柔軟に判断できる余地があるということです。
加えて、仮に退職を勧奨する場合でも、強引な手法や一方的な通告は避けるべきです。本人の理解と合意を得ながら、丁寧な対話を重ねることが求められます。こうした対応には、企業側の立場に精通した弁護士に事前相談しておくことが、トラブルの予防につながります。
適性が合わない社員を早期に見極め、適切に対応することは、企業の持続的成長にとっても、本人の将来にとっても大きな意義があります。だからこそ、試用期間という貴重な時間を最大限に活用する姿勢が、経営者や人事担当者には求められるのです。
おわりに:社員の才能を活かすことは企業の責任
社員のパフォーマンスが期待に届かないという状況は、会社にとって頭の痛い問題である一方、本人にとっても深刻なストレスとなることが多く、双方にとって不幸な状態です。毎日、自分に合わない仕事に苦しみながらも、ただ生活のためだけに働き続ける——そのような働き方では、キャリア形成はおろか、自己肯定感も育まれません。
また、育成や指導にあたる管理職や先輩社員にとっても大きな負担となり、やりがいを見失ったり、ストレスから職場全体の雰囲気が悪化することもあります。そうした悪循環を防ぐには、社員の能力と向き合い、その力を最大限に発揮できる環境を整える姿勢が不可欠です。
そのためには、まず育成やマネジメントの工夫を行い、必要に応じて適正な配置転換を検討し、それでも難しい場合は転職支援という選択肢も含めて、社員のキャリアに寄り添った対応を行うべきです。こうした取り組みは、「問題社員(一般にモンスター社員とも言われている。)」の扱いとしてではなく、人材を適切に活かす企業努力の一環としてとらえるべきでしょう。
四谷麹町法律事務所では、問題社員への対応に関して、個別の注意指導の仕方や、懲戒処分の進め方、社員への対応方法について具体的なサポートを行っています。さらに、状況によっては企業側代理人として、問題社員や、相手の代理人弁護士との交渉も行っています。
訴訟や労働審判になる前の段階から適切な対応を行うことで、企業側の負担を軽減し、トラブルの早期解決が可能となります。問題社員の対応でお悩みの際は、会社側専門の経験豊富な四谷麹町法律事務所にぜひご相談ください。