2026.01.27
勤務態度の悪い社員への正しい対応法|中小企業がすべきマネジメントと法的対処
目次
動画解説
職場における勤務態度の悪い社員が与える影響
勤務態度の悪い社員が一人いるだけで、職場全体の雰囲気は一気に悪化します。「あの人とは一緒に働きたくない」「毎日嫌な思いをしている」と感じる社員が出てくることで、職場はギスギスし、生産性が低下してしまうことも珍しくありません。働きやすい環境を求めて、転職を検討し始める社員が出てくる可能性もあるでしょう。こうしたケースでは、特にまじめで優秀な社員ほど先に辞めてしまうという現象も見られます。
また、勤務態度の悪さがエスカレートすると、周囲に対する嫌がらせやパワハラなど、ハラスメントの温床となるリスクもあります。これは企業にとって看過できない重大な問題です。さらに、勤務態度が悪い社員は、往々にして仕事への集中力や責任感も欠けていることが多く、業務のパフォーマンスにも悪影響を及ぼします。
そして最も見落としてはならないのが、問題が放置されることで当人が「自分の行動は許されている」と認識し、態度の悪化が加速してしまう点です。最初は小さな違和感にすぎなかったものが、やがて大きな職場トラブルへと発展してしまうことは少なくありません。企業として、早期の段階で適切な対処を行うことが極めて重要です。
勤務態度の問題は「マネジメントの課題」と捉える
勤務態度が悪い社員がいる場合、まず最初に考えてほしいのは、「これは社員本人の問題ではなく、マネジメントの課題である」という視点です。解雇や退職勧奨も選択肢の一つかもしれませんが、それは最終的な対応にすぎません。まずは、職場で適切に働いてもらうための環境づくりと働かせ方の見直しが重要です。
勤務態度に問題があるということは、本人だけの責任ではなく、管理職や会社の関与のあり方にも原因がある可能性があります。対応を先延ばしにして「本人が悪い」と捉えてしまうと、自分たちが被害者であるかのような発想に陥り、問題の本質を見失いがちです。大切なのは、「自分たちはどう対応したか」「どのように状況を改善しようとしたか」を問う姿勢です。
このような問題に対して、経営者や管理職がどう向き合うかによって、組織の健全性や社員のモチベーションは大きく変わります。適切なマネジメントを行うことで、職場の雰囲気を守るだけでなく、本人の改善の可能性を引き出すこともできるのです。
勤務態度が悪い社員への対応は、単なる処分や指導にとどまりません。会社全体としてどのような価値観を持ち、どう行動するかが問われる、極めて本質的なマネジメントの課題なのです。
問題社員への初期対応:都度の面談が重要
勤務態度に問題が見られる社員に対しては、早い段階で対応することが肝心です。最も重要なのは、問題行動が見られた「その都度」、速やかに面談を行うことです。問題行動が蓄積してからまとめて注意するのではなく、都度指摘することで、本人に対して具体的に「どの行動が問題だったのか」を明確に伝えることができます。
実際、面談を積み重ねることで、態度が改善されるケースは多く見られます。これは、面談そのものがマネジメントの一環として機能しているからです。逆に、問題社員の行動を放置し、後から一方的に評価を下げたり、退職を促すといった対応は、適切とは言えません。まずはしっかり働いてもらうことが第一であり、そのための働きかけを怠ってはいけません。
また、面談のタイミングが重要です。問題のある言動があった直後であれば、記憶も鮮明で説明もしやすく、本人にとっても納得感のある指摘が可能となります。小さな違和感であっても、早めに注意することによって、大きなトラブルに発展する前に食い止められるのです。
注意しても改善が見られない場合には、会議室に呼んでしっかりと面談を行い、本人の態度を改めさせていく必要があります。これを根気強く続けることで、多くの問題は通常のマネジメントの範囲内で収まるものです。適切な初期対応こそが、問題社員への最も有効な対策といえるでしょう。
曖昧な指摘ではなく事実を伝える
勤務態度に問題がある社員に対して面談を行う際には、抽象的な表現ではなく、具体的な事実をもとに指摘することが不可欠です。「勤務態度が悪いから直してほしい」といった漠然とした言い方では、本人には伝わりません。むしろ、「自分は普通に振る舞っているのに、なぜそんなことを言われるのか」と反発されてしまうことすらあります。
本人が自覚していないケースは多く見られます。「これぐらい普通だろう」「自分の価値観では問題ない」といった意識のまま行動しているため、単に「改善しろ」「考え方を変えろ」と言われても、理解も納得も得られません。そのため、何が問題だったのか、いつ・どこで・どのような行動をとったのかを、具体的に指摘しなければならないのです。
この点でも、問題が起きた「直後」に面談を行うことが効果的です。問題行動をその場で指摘すれば、双方の記憶も新しく、事実の説明も容易になります。記録を取って後日まとめて話すよりも、当日のうちに会議室に呼び、タイムリーに話す方が、相手へのインパクトも大きく、改善にもつながりやすくなります。
仮に、口頭での注意だけでは改善が見られない場合でも、具体的な事実をもとに何度か面談を重ねることで、状況が落ち着いてくることも多いものです。曖昧な表現に頼らず、事実に基づいた説明と、根気強い対話を繰り返すことが、問題社員への対応の要となります。
改善が見られない場合の対応:懲戒処分と退職勧奨
面談を重ねても勤務態度が改善されない場合、企業としては次の段階として懲戒処分を検討せざるを得ません。勤務態度が明らかに問題であり、それが組織全体に悪影響を及ぼしている場合、注意指導を繰り返しただけでは不十分です。しっかりとしたけん責や減給などの懲戒処分を行うことで、会社としての姿勢を示す必要があります。
実際には、懲戒処分を飛ばしていきなり解雇や退職勧奨に進もうとする企業もありますが、これはリスクの高い対応です。「問題があるのなら、なぜ懲戒処分をしてこなかったのか」と問われれば、企業側の対応が不適切と見なされる可能性があります。仮に解雇が無効となれば、法的トラブルに発展しかねません。
また、懲戒処分の通知や書面の作成に不安がある場合には、労務に詳しい弁護士に相談することが重要です。処分の根拠や事実関係を明確に整理し、適正な手続きを踏むことで、企業側のリスクを最小限に抑えることができます。処分内容によっては、弁護士が会社の名前で正式な通知書を作成することも可能です。
それでも改善が見られず、軽度の懲戒では不十分と判断される場合には、退職勧奨を視野に入れることになります。退職勧奨とは、企業と社員との合意に基づいて退職を促すものであり、強制力を伴う解雇とは異なります。重要なのは、本人に対して「なぜ退職を求めるのか」を具体的に説明することです。ただ感情的に「辞めてほしい」と伝えるだけでは、本人に納得してもらうことはできません。
「本人も自覚しているはずだ」と思い込まず、丁寧に事実を整理し、説明を行うことが退職勧奨の成否を分けます。場合によっては情報の整理や伝え方についても、弁護士に相談することでスムーズに進めることが可能です。勤務態度に問題があり、改善が見込めないと判断した場合には、慎重かつ段階的な対応を進めることが求められます。
解雇に至る前に押さえるべき法的ポイント
勤務態度が改善されず、懲戒処分や退職勧奨でも効果がなかった場合、最終的な選択肢として「解雇」を検討することになります。ただし、解雇は社員にとって重大な不利益をもたらす処分であり、労働法上も非常に厳しい条件が求められます。慎重な対応が求められる局面です。
解雇には「普通解雇」と「懲戒解雇」の2種類がありますが、いずれにしても「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」がなければ無効と判断される可能性が高くなります。たとえ社内で勤務態度に問題があると判断していたとしても、第三者が見ても明らかに解雇に相当する事情である必要があるのです。
また、解雇に至るまでに会社がどのような対応をしてきたかも重要です。注意指導を繰り返し、面談を行い、懲戒処分などの段階を経ていることが証拠として求められる場面もあります。「これまで何もしていなかったが、もう我慢できないから辞めてもらう」といった対応は、法的には通用しないケースが大半です。
そのため、解雇を検討する場合には、できるだけ早い段階から記録を残し、社内での注意・指導・処分などの経過を丁寧に積み重ねておくことが不可欠です。さらに、解雇の正当性を保つためには、文書による通知や説明の準備も必要となります。
法的な手続きを踏まずに解雇を強行すれば、労働審判や訴訟に発展し、結果的に企業側が大きな負担を背負うことになりかねません。特に勤務態度に関する問題は評価や価値観に左右されやすく、曖昧な基準で進めると紛争の火種となります。
だからこそ、解雇に踏み切る前に、必ず専門家である弁護士に相談することをおすすめします。適切な手順を踏むことで、企業側のリスクを最小限に抑え、職場の秩序を保つことが可能になります。
管理職が対応できない場合の会社経営者の役割
勤務態度に問題のある社員に対し、「管理職に対応を任せているのに、うまくいかない」と感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。実際、現場の管理職に指導を任せたものの、放置されてしまったり、適切な対応がなされなかったりするケースは少なくありません。
そのようなとき、まず見直すべきなのは「管理職がマネジメント能力を持っているか」という点です。プレイヤーとして優秀であったことを理由に管理職に登用された人材であっても、人を動かす・注意する・育てるというマネジメントのスキルを自然に備えているとは限りません。むしろ、実務能力と管理能力は別物であり、両方を高い水準で兼ね備えている人は決して多くありません。
管理職が問題社員に対応できない場合、会社経営者自身が一時的に前に出て、状況の把握や初動対応に乗り出す必要があります。特に中小企業の場合、現場との距離が近いため、経営者が直接関与することで状況が大きく好転することも少なくありません。もちろん、これは恒常的に行うべきではありませんが、適任者が育つまでの「応急措置」としては現実的な選択肢です。
あわせて、今後同様の問題に対応できるよう、管理職の教育も進めていく必要があります。単に「注意しておいて」と伝えるだけではなく、マネジメントの基本的な知識や判断基準、対応の手順などを、具体的に学ばせることが重要です。知識と経験がなければ、自信を持って対応することもできません。
対応力のある管理職が育っていない状況では、会社全体がトラブルに対して脆弱になります。現場任せにするのではなく、会社経営者が主体的に関与しながら、段階的に組織としての対応力を高めていくことが求められます。問題社員への対応は、個人の資質だけではなく、組織全体の体制が問われる場面なのです。
管理職に必要な「マネジメント能力」の見極めと育成
社員のマネジメントを任せる立場である管理職には、プレイヤーとしての能力とは異なるスキルが求められます。実務能力が高く、現場で信頼されている人材であっても、それがそのまま「人を管理する能力」につながるとは限りません。むしろ、優秀なプレイヤーであったがゆえに、他人の行動に口を出すことに抵抗があったり、相手の立場に立って対応することが苦手だったりするケースもあります。
「できる人だから上に立たせればうまくいくだろう」という発想だけで管理職を任せると、かえって問題が表面化したときに適切な対処ができず、トラブルを放置する結果になりかねません。そのため、管理職に必要なのは、業務遂行能力とは別の「マネジメント力」、つまり、人を動かす力、状況を正しく把握し判断する力、必要な対応を冷静に実行する力なのです。
育成にあたっては、まずその人のスタート地点を見極めることが重要です。すでに一定の素質を備えている人であれば、研修や実践を通じて比較的短期間で対応力が身につくこともあります。しかし、そもそもマネジメントに向いていない人をいくら育てようとしても、成果が出るまでには長い時間がかかることもあります。
例えば、最初の時点で20点の評価に相当する人と、60点相当の人とでは、同じトレーニングを受けても成長速度が大きく異なります。成長のスピードも人によってさまざまであり、1点ずつしか伸びない人もいれば、一気に10点分成長する人もいます。こうした違いを前提に、誰に何をどの程度任せるか、見極めたうえで配置し、教育を進める必要があります。
適任者が社内に見当たらない場合には、外部からの採用を検討することも選択肢ですし、社内の複数人で補完し合う「協業体制」を整えることも有効です。「一人の完璧な管理職」を求めるのではなく、「組織として管理体制を築く」という視点が求められます。問題社員への対応を通じて、管理職の見極めと育成がいかに企業全体の力を左右するかを、あらためて意識することが重要です。
中小企業における現実的な対応策と組織づくり
中小企業では、大企業のように専任の人事部や労務管理の専門部署が整っていないことも多く、問題社員への対応が経営者や現場の管理職の肩に直接のしかかる傾向があります。管理体制や人材の数が限られている中で、実務と人のマネジメントを両立させるのは、現実的に難しい場面もあるでしょう。
そのような状況でも、まず取り組むべきは「誰が対応するのか」を明確にすることです。適任者がいない場合には、経営者自身が一次対応に関与するという選択肢もあります。特に企業規模がそれほど大きくないうちは、トップが現場に関わることで社員の緊張感が高まり、改善につながるケースも少なくありません。
また、管理職に対応させたいが、能力や経験が足りないと感じた場合には、知識と実践の両方を通じて育成を進める必要があります。ただし、すぐに成果が出るとは限らず、成長のスピードも人によって差があります。そのため、適性を見極めながら育成に時間をかける覚悟も必要です。
理想的には、管理職一人に全てを任せるのではなく、複数人で対応を分担したり、特定の社員に相談役としての役割を持たせたりするなど、柔軟な組織体制を構築することが望まれます。たとえば、直接の上司は人の対応が苦手でも、その上の部長が得意であれば、その人に実際の注意指導を担ってもらうなど、補完的な体制を整えることも可能です。
こうした工夫によって、社内の誰か一人に負担を集中させず、組織として問題に対応できる基盤が整います。限られた人員とリソースの中でも、現実的で持続可能な対応策を講じることが、中小企業にとっての安定経営への鍵となるのです。問題社員への対応を通して、組織全体のマネジメント力を高めていく視点が求められます。
早期対応で職場環境を守るために今できること
勤務態度に問題がある社員の存在は、放置するほど組織全体に深刻な影響を及ぼします。周囲の社員の士気が下がり、ハラスメントの原因となることもありますし、何よりも「なぜ会社は何もしないのか」という不信感が広がってしまう恐れがあります。このような悪循環を避けるためには、問題が小さいうちに対応を開始することが何より重要です。
多くのケースでは、初期対応を怠ったことが問題の長期化・複雑化を招いています。ほんの些細な態度の乱れであっても、違和感を覚えた時点でその都度注意し、必要に応じて会議室での面談を行うという基本動作を徹底するだけで、状況は大きく変わります。口頭での指摘で十分な場合もありますが、改善が見られない場合には、速やかに書面での注意や懲戒手続きに移行することも必要です。
重要なのは、「いま行動する」ことです。完璧な体制が整うまで待つのではなく、現時点でできる範囲で構わないので、対話を始め、記録を残し、組織として対応の意思を示すべきです。それがたとえ小さな一歩でも、職場の健全性を維持するうえで非常に大きな意味を持ちます。
また、対応に迷った場合や、注意の仕方・書面作成に不安がある場合には、専門家の力を借りるのも効果的です。特に問題社員の対応は、感情が絡みやすく判断を誤りがちな場面です。適切な第三者の助言があることで、冷静かつ法的に正しい対応が可能となります。
四谷麹町法律事務所では、問題社員への対応に関して、個別の注意指導の仕方や、懲戒処分の進め方、社員への対応方法について具体的なサポートを行っています。さらに、状況によっては企業側代理人として、問題社員や、相手の代理人弁護士との交渉も行っています。
訴訟や労働審判になる前の段階から適切な対応を行うことで、企業側の負担を軽減し、トラブルの早期解決が可能となります。問題社員の対応でお悩みの際は、会社側専門の経験豊富な四谷麹町法律事務所にぜひご相談ください。