問題社員

社員が言われたとおりに仕事をしない場合の対処|原因別にみる会社経営者の判断と対処

動画解説

言われたとおりに仕事をしない社員への対応方針

 会社経営者にとって、社員が「言われたとおりに仕事をしない」という状況は非常に頭の痛い問題です。指示やマニュアルに従わず、自己流で仕事を進めたり、業務の優先順位を無視して独自判断で動いたりすることで、業務効率が下がるだけでなく、時に顧客対応や安全面でも重大な支障をきたすことがあります。

 問題の本質を見誤ると、必要以上に強く叱責して関係が悪化したり、逆に放置して他の社員に悪影響が広がったりするリスクもあります。大切なのは、「なぜその社員が言われたとおりに仕事をしないのか」という原因を正しく見極め、それに応じた的確な対応をとることです。

 「言われたことができない」のか、「言われたことを理解していない」のか、それとも「言われたことをやる気がない」のか。原因によって対応方針はまったく異なります。会社経営者はこの原因を冷静に切り分け、適切な教育や指導、場合によっては懲戒や退職の選択肢まで視野に入れながら、戦略的に対処していく必要があります。

 問題社員への対応は、感情的な反応ではなく、経営判断として組織の秩序と業務の安全を守るという観点から進めることが求められます。そのためにも、まずは問題の構造を理解し、原因に応じたアプローチをとる姿勢が重要です。

まずは原因を切り分ける:主に3つのパターンに分類

 社員が言われたとおりに仕事をしない場合、会社経営者がまず取り組むべきは「原因の切り分け」です。指示に従わないという結果だけに注目しても、適切な対処にはつながりません。対応を誤れば、かえって混乱や摩擦を生む可能性があります。

 実務上、こうしたケースは主に次の3つのパターンに分類できます。

 1つ目は、「能力不足により、言われた内容を理解していない」ケースです。これは、指示の意味や業務の手順を把握できていないため、結果的に違う行動をとってしまうというものです。

 2つ目は、「指示の重要性を理解していない」ケースです。たとえば、「言われたけど、他に優先すべきことがあると思った」「指示されたやり方に納得できなかった」といったように、会社側の意図を十分に理解せず、自己判断で動いてしまうパターンです。

 そして3つ目は、「わかっていても意図的に従わない」ケースです。これは最も悪質なタイプで、本人なりの理由はあるにせよ、会社の秩序を軽視して行動しているといえます。

 この3つのうち、どれに該当するのかを見極めなければ、有効な対応はできません。重要なのは、本人の性格や態度だけを見て判断するのではなく、行動の背景や言動の一貫性、過去の対応履歴などを踏まえた冷静な分析です。

 問題行動の原因を正確に把握することは、会社経営者にとって「的確な判断のための前提」です。ここを曖昧にしたまま処分や異動に踏み切れば、社内外の信頼を損なうリスクにもつながります。まずは、目の前の事象に対し、冷静かつ論理的に原因を切り分けることから始めてください。

能力不足による「できない」ケースの特徴と対応

 言われたとおりに仕事をしない社員の中には、意図的ではなく「能力不足によってできない」というケースがあります。これは本人にやる気がないのではなく、単に業務を理解する力や遂行するスキルが不足しているために、指示通りに行動できないという問題です。

 このタイプの社員は、上司からすれば「何度教えても覚えない」「簡単なこともできない」と感じられるかもしれません。しかし、問題の根本は本人の理解力や習得スピードにあり、意識や姿勢の問題とは異なります。そのため、感情的に叱責しても改善は見込めず、むしろ委縮させてしまい、さらに状況を悪化させることにもなりかねません。

 このような場合、会社経営者としては、まずその社員にとって業務の内容が適切かどうかを見直す必要があります。業務内容が過剰に複雑だったり、情報量が多すぎる場合には、仕事の割り振りそのものを調整することも検討すべきです。

 また、指導方法にも工夫が必要です。一度伝えただけで理解できない社員に対しては、具体的に順を追って説明し、チェックリストやマニュアルなどを用いて視覚的にもサポートすることが有効です。口頭で伝えるだけでは不十分である可能性があるため、文書化された指示や手順を用意することで、理解を助けることができます。

 さらに、できていない点を的確にフィードバックし、改善点を明示することも重要です。「なぜダメなのか」「どうすればいいのか」を具体的に伝えることで、少しずつ改善のきっかけを与えることができます。

 ただし、一定の教育やフォローを行っても成長が見込めない場合には、長期的に見て他部署への配置転換や退職勧奨といった選択肢を検討せざるを得ません。本人にとっても、自分に合わない仕事を無理に続けることは大きなストレスとなります。

 能力不足による問題は、時間と手間がかかる対応ですが、正しく見極めて丁寧に対応すれば、組織全体の安定と健全な職場づくりにつながります。放置せず、早期に対応を始めることが、経営者としての重要な役割です。

教育指導の基本と、効果的な伝え方の工夫

 能力不足や理解不足によって「言われたとおりに仕事ができない」社員に対しては、会社経営者として適切な教育と指導が欠かせません。その際に重要なのは、「伝えたつもり」ではなく、「相手に伝わっているかどうか」を基準に指導内容を見直す姿勢です。

 まず基本となるのは、曖昧な言葉を避け、誰が聞いても理解できるように具体的に伝えることです。たとえば、「きちんとやって」「臨機応変に対応して」といった抽象的な表現では、社員が何をすればよいのか分からず、自分なりの判断で行動してしまう原因になります。

 そのため、「どのタイミングで」「何を使って」「どのように作業を進めるのか」まで、段階的に説明することが必要です。できれば作業の手順をチェックリストや図解にして示し、業務の全体像が把握できるようにすると、理解度は格段に高まります。

 また、伝えた内容をその場で復唱させる、あるいは実際にやらせてみることで、理解度を確認するプロセスも有効です。一方的に指示を出すだけで終わらせず、「どの程度伝わっているか」を都度検証する習慣を持つことが、教育の質を左右します。

 さらに、社員が業務に取り組む中で迷わないよう、質問しやすい環境やフォロー体制も整えておく必要があります。特に業務に不慣れな社員は、「分からない」と言えないまま誤ったやり方を続けてしまうことが少なくありません。会社経営者としては、本人が安心して相談できるような雰囲気づくりも、教育の一部だと認識することが大切です。

 このように、教育指導は単に「やり方を教える」作業ではなく、相手に応じた伝え方と、継続的な確認・フォローを組み合わせたプロセスです。指導の工夫次第で、できなかった社員が戦力へと育つ可能性も十分にあります。教育の質を高めることは、企業全体の力を底上げする最も基本的なマネジメント施策の一つといえるでしょう。

成長が見込めない場合の配置転換・退職勧奨の判断基準

 丁寧な教育や具体的な指導を行ってもなお、社員に改善の兆しが見られない場合、会社経営者としてはその社員を今後どう扱うかの判断を迫られます。「いずれ慣れてくれるかもしれない」と期待し続けることは、組織全体の生産性や士気の低下につながるリスクをはらんでいます。一定期間指導しても成果が見られない場合には、「配置転換」や「退職勧奨」を検討すべきタイミングです。

 配置転換は、その社員に合った業務が他にある場合に有効です。たとえば、対人対応が苦手であれば内勤作業へ、複雑な判断が求められる業務が難しい場合は、ルーティン業務への移動など、本人の特性や能力に合わせた業務を与えることで、一定のパフォーマンスを発揮する可能性があります。

 一方で、どの業務にも適応できず、基本的な業務遂行すら困難な場合は、退職勧奨という選択も視野に入れざるを得ません。ただし、この判断は慎重に行う必要があります。まずは客観的な評価資料(指導記録、面談メモ、注意文書など)を残しておき、感情的ではなく合理的な理由に基づいて判断することが重要です。

 また、退職勧奨を行う際には、いきなり退職を迫るのではなく、経営者としての考えを丁寧に伝え、選択肢としての転職も提案しながら、本人と話し合う姿勢が求められます。一方的な押し付けになればトラブルの原因にもなるため、誠実な対応が不可欠です。

 組織にとって重要なのは、「できない社員」を無理に残すことではなく、その人材をどう扱うかによって、他の社員へのメッセージや職場の秩序が保たれるかどうかという点です。対応を先延ばしにすればするほど、周囲にも悪影響が広がります。会社経営者としては、状況を見極め、必要な決断をタイミングよく下す責任があります。

指導に従う意識が低い社員への対処法

 社員が業務内容を理解しているにもかかわらず、あえて指示に従わない、あるいは自己流で仕事を進めてしまうような場合は、「能力の問題」ではなく「意識の問題」として捉える必要があります。このような社員には、会社の方針やルールを軽視する傾向があり、放置すれば組織全体の秩序を崩しかねません。

 このタイプの社員は、「自分なりにやっている」「そのやり方の方が効率的だと思った」などと言い訳をしますが、実際には組織の指揮命令系統を軽視した行動であり、経営者の意図や組織方針を無視する行動といえます。こうした社員への対応は、明確な姿勢で臨むことが求められます。

 まずは、都度しっかりと面談を行い、「何が問題だったのか」「なぜ会社としてそのやり方を求めているのか」を丁寧かつ具体的に伝える必要があります。「やり方の自由」を与えるのではなく、「組織の一員としての行動」を明確に求めるのが基本です。

 指導に従わないという態度は、周囲にも影響を及ぼします。「あの人がやっているのに、なぜ自分だけが指導されるのか」という不満を生み出し、職場の規律を乱す原因となります。したがって、会社経営者としては、こうした社員の行動を早期に把握し、組織としてのルールを再確認させるとともに、必要であれば文書による注意や記録も残しておくべきです。

 それでもなお改善が見られない場合は、段階的に懲戒処分や退職勧奨などの手続きを検討する必要があります。行動の自由を認めているわけではなく、組織に従うことが前提であるという立場を明確にしなければ、組織全体のモラルが崩れかねません。

 意識の問題に対しては、厳しさと誠実さの両面を持ち合わせた対応が必要です。社員個人に配慮しつつも、会社全体の秩序と安定を守るという経営者の視点で対応を進めることが、結果として職場全体の健全な運営につながります。

指導の効果が見られない場合の段階的対応(厳重注意・懲戒処分)

 何度も注意や面談を行い、丁寧に指導してもなお、社員が会社の指示に従わない、または同様の問題行動を繰り返す場合には、段階的な対応が必要になります。会社経営者としては、個別の注意を超えた正式な処分の検討に入る局面です。

 まず行うべきは、「厳重注意書」の交付です。これは、口頭の注意とは異なり、書面で明確に問題点を指摘し、改善を促す正式な記録となります。本人に直接交付し、内容を説明したうえで署名を求めるなど、手続きを踏んで行うことが重要です。ここでのポイントは、「いつ・どのような行動が問題だったか」「それに対して会社がどのような指導を行ったか」を具体的に記載することです。

 それでも改善が見られない場合には、「懲戒処分」の段階に進みます。軽微な懲戒としては始末書の提出や譴責、より重い処分としては減給、出勤停止、最終的には懲戒解雇に至る可能性もあります。懲戒処分を行うには、就業規則に基づいた手続きを適正に踏むことが求められます。不備があれば、処分自体が無効とされるリスクがあるため、事前に弁護士の確認を受けることが望ましい対応です。

 また、これらの対応には一貫性と記録の蓄積が欠かせません。どの段階で何を指導し、どのような反応があったかを文書で残すことで、後の法的トラブルや社員からの反発への備えになります。曖昧な記憶や口頭のやりとりだけでは、会社の対応の正当性を証明することが困難です。

 段階的な処分は、あくまでも社員に改善の機会を与えつつ、会社としての秩序を保つための手段です。感情的に処分を下すのではなく、冷静かつ客観的に対応し、社員に対しても「改善の余地があったが応じなかった」という構造を明確に示すことが、会社経営者に求められる姿勢です。

指示内容が不適切な可能性もある:会社側の確認ポイント

 社員が言われたとおりに仕事をしない場合、すべてを社員の責任と決めつけるのではなく、「会社側の指示内容に問題がなかったか」を確認する視点も、会社経営者としては欠かせません。なぜなら、社員が従わない理由の中には、指示そのものが不適切、非現実的、あるいは曖昧だったことに原因があるケースもあるからです。

 例えば、業務量が過大で時間的に明らかに実行不可能な内容であったり、法令や安全基準に抵触するリスクがある内容であったりすれば、社員がそれに従わなかったとしても、かえってその判断が正しい場合すらあります。また、「やっておいて」とだけ伝えて、納期や品質基準などの具体的な条件を示していない場合には、社員にとっては「何をどうすればいいのか」が不明確であり、判断に迷うのも当然です。

 このような事態を防ぐには、まず、指示の内容が業務の実態に即しているか、過度な負担を強いていないかを見直す必要があります。さらに、伝える際には、目的、手順、納期、優先順位などを具体的に示し、「誰が聞いても分かる内容」で伝えることが求められます。

 加えて、社員側が「その指示には問題がある」と考えていた場合、それを伝えるためのルートや雰囲気が社内にあるかどうかも重要です。指示に疑問があっても意見できない雰囲気であれば、結果的に従わないという行動でしか表現できなくなり、関係性の悪化や業務トラブルにつながります。

 会社経営者としては、常に「自社の指示は適切か」「社員が理解・実行できる内容か」という視点を持ち、現場の声にも耳を傾ける姿勢が不可欠です。指示が適切であることを前提としたうえで、それに従わない社員に対して正当な対応を行うことが、組織全体の健全性と統率力を支える土台となります。

安全や損害に関わる業務におけるリスクと対応の必要性

 社員が言われたとおりに仕事をしない行為が、直接的に「安全」や「損害」に関わる業務で発生した場合、その影響は深刻です。会社の信用失墜や法的責任に発展する恐れもあり、経営者にとっては見過ごせないリスクです。このような場面では、通常よりも迅速かつ厳格な対応が求められます。

 たとえば、製造現場で安全手順を無視して作業を行えば、労災や重大事故につながる危険があります。営業や経理の現場であれば、顧客との契約ミスや金銭管理の不備によって、損害賠償が発生する可能性もあります。こうした業務においては、「指示に従わない」という行為が、単なる就業態度の問題ではなく、組織全体に危機をもたらす要因となるのです。

 このため、会社経営者としては、問題のあった社員に対して明確な指導を行うだけでなく、再発防止策の実施や、必要に応じた業務からの排除、配置転換といった措置を早期に講じることが重要です。特に、同様の行動を繰り返している社員に対しては、書面での注意や懲戒処分も含めた段階的対応が不可欠です。

 また、こうした対応は内部だけで完結させず、必要であれば社労士や弁護士など外部専門家の助言を得ることも有効です。法的なトラブルや損害賠償請求への備えとして、記録や証拠を整えておくことも忘れてはなりません。

 安全や損害に関わる業務では、社員一人の行動ミスが全体の信用と利益を脅かす可能性があります。経営者はその重みを自覚し、「従わないことへの許容範囲」を明確に設定したうえで、断固とした対応を行う必要があります。それが、企業の持続可能性と法的安定性を守るための基本姿勢となります。

原因に応じた対応で、組織の秩序と安全を守るために

 社員が「言われたとおりに仕事をしない」という問題に直面した際、会社経営者としてまず求められるのは、表面的な行動だけに着目せず、その背景にある原因を冷静に分析することです。そして、その原因に応じた適切な対応を取ることで、はじめて組織の秩序と安全を守ることができます。

 単に「言うことを聞かないから処分する」といった短絡的な判断では、状況を悪化させるリスクがあります。理解力や能力の不足が原因であれば、教育と環境整備による改善が必要ですし、意図的な無視や反抗であれば、段階的な指導や処分をもって秩序を回復しなければなりません。いずれの場合でも、経営者の対応が組織全体に対するメッセージとなるため、その影響力は極めて大きいのです。

 また、問題社員への対応は、ほかの社員への影響も見逃せません。不公平感を与えれば、職場の士気や規律が損なわれますし、逆に適切な対応を積み重ねることで、社員全体に「会社は正しく運営されている」という安心感と信頼を生むことができます。

 大切なのは、行動だけでなく「その行動の背景」を丁寧に見極めたうえで、言動に一貫性を持った対応を行うことです。教育・指導・配置転換・懲戒・退職勧奨など、あらゆる手段を段階的に組み合わせ、必要に応じて弁護士などの専門家の助言も得ながら、適切な判断を下す責任があります。

 社員一人の問題に見えて、実は組織全体の信頼性と秩序にかかわる問題でもある――そうした視点で一つ一つの対応にあたることが、会社経営者に求められる本質的なマネジメントの力といえるでしょう。

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